見どころいっぱい、美食いっぱい、そして多くの文学者・匠を輩出した街…統営

2016年12月20日

統営ケーブルカー

 

見どころいっぱい、美食いっぱい、
そして多くの文学者・匠を輩出した街

慶尚南道・統営

 

統営(トンヨン)を皆さんはご存じでしょうか? 慶尚南道にあって、「東洋のナポリ」とも称される港町です。釜山からバスで約1時間半あまりで、閑麗(ハルリョ)海上国立公園の中心部に位置しています。統営の由来は、李氏朝鮮時代の李舜臣(イ・スンシン)将軍が水軍の統制営を設置したことからこの名が付いたそうです。巨済島(コジェド)をはじめ、点在する約150あまりの島々との交通の要所でもあり、海と山を望む絶景が楽しめる街です。

今回、ファムツアーで統営を訪問しました。その時に訪れたおすすめの観光の要所を3つ紹介しましょう。まずは韓国内最長の約2㎞の長さを誇る「閑麗水道眺望ケーブルカー」。韓国百名山のうちのひとつである弥勒山に設置されている観光用ケーブルカーです。ケーブルカー上部駐機場から登ること約15分ほどで弥勒山の山頂を訪れることができ、山頂から臨む閑麗水道の美しさには息をのむほどです。

そしてもう一つ、国宝第305号である「洗兵館(セビョンカン)」もぜひとも訪れて欲しい場所です。ここは李舜臣が閑山島に1605年に建てられた軍営、統制営の客舎であったところ。景福宮の慶会楼(キョンフェル)や麗水の鎮南館(チンナムグァン)とともに、現存する最も広い面積をもつ朝鮮時代の建物です。一階の入母屋造りからなる美しく雄壮な建物で、長台石に基壇に50の柱があり、柱と柱の間は全て開放されています。柱の間を吹き抜ける風を受けながら、文化解説士による説明を聞くと、400年の歴史を身体全体で感じることができるはずです。

洗兵館

 

残る一つは釜山の甘川文化村と並ぶ壁画村「トンピラン」です。市の中心部の丘陵に位置し、住宅街の壁に統営を象徴する壁画が描かれています。壁画は2年に一度の公募によって選ばれた作品に塗り替えられるので、何度訪れても楽しめるということですね。海までの距離が近く、トンピランの頂上からの眺めもまたすばらしいものです。

トンピランと朴景利記念館

トンピラン(左)と朴景利記念館(右)

 

 

もう一つの旅の楽しみ、食に関しては、港町ならではの海産物が豊富です。伝統市場の「西湖市場(ソホシジャン)」は特に水産市場として今なお活気を見せており、市場内にはいくつもの「ふぐのスープ」や「シレギスープ」の人気店も揃います。冬場の牡蠣やホヤ(モンゲ)ビビンパに舌鼓を打ち、同じく伝統市場である「中央伝統市場」近くでは「クルッパン(はちみつパン)」をほおばってみましょう。

統営の海産物

 

こうした風光明媚な土地であると同時に、ここ統営は多くの文化人、芸術家らを輩出し、縁を結んだ街としても有名です。文学界では韓国最大の大河小説と呼ばれる「土地」の著者・朴景利(パク・キョンニ)の生まれ故郷であり、日本統治時代の民衆の哀歓を描いたことでも知られる韓国の詩人・白石(ペクソク)が、恋した女性を思って何度も訪問した地であり、その詩碑が建てられています。また螺鈿工芸などの職人たちも多く生み、音楽界では世界的音楽家ユン・イサンを生んでいます。

こうした文化・芸術が発展した風土は、朝鮮時代の「統制営」に韓国全土から赴く士官たちが、長らくこの地で暮らしやすくするために地元の文化・芸術を持ちこんだことからだといわれています。

最近では「文学の道」、「匠の道」と名付けられた散策路案内もでき、地図を片手に多くの作家や作品の一端に触れることができ、韓国内でも貴重な楽しみ方ができることでしょう。
統営での新しい韓国の一面にぜひ触れてみてください。

文/佐々木静代(通信記者)

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