〈公演レビュー〉 ペインターズ:ヒーロー

2015年02月26日

美術が華やかな舞台パフォーマンスに変身!

ペインターズ:ヒーロー

review

ペインターズ:ヒーロー

 

舞台の上を絵が命を持ったように踊る。絵を描くアーティストも同様だ。ステージを左へ右へと走り回って、絵の具をつけた筆を振り回し、塗料いっぱいの絵の具の缶は、キャンパスに豪快に飛び散る。俳優たちの指先を追っていくと、いつのまにか一つの作品が完成するので、観客はいつのまにか舞台の筆を持った四人の男の身振りに目を奪われてしまう。美術を題材にしたユニークなノンバーバル・パフォーマンス、「ペインターズ:ヒーロー」がその主人公だ。
「ペインターズ:ヒーロー」を一言でいうと、絵を描く一連の過程を舞台の上に移した美術パフォーマンスだ。ただ絵を描くことにとどまらない。目の前で繰り広げられる幻想的なライブドローイングに、最先端のメディアアートを組み合わせた新しいコンセプトのアートパフォーマンスで、2010年10月、ソウル忠武路明宝アートホールで初披露された。反応は爆発的だった。静的な芸術の概念を180度反転させたダイナミックなライブドローイングのテクニックと楽しい舞台パフォーマンスは、パーカッション・ノンバーバル・パフォーマンスを見飽きた観客に新鮮な衝撃となった。その人気はすでに韓国を飛び出して久しい。日本や米国、中国、香港など、世界各国から公演のラブコールが殺到するほど独創的な発想の公演で、観客と評壇の好評を初演から4年近くの間で着実に継続している。
ストーリーは単純明快、いや、むしろないといってしまってもよいだろう。舞台の上の4人のパフォーマーが愉快なダンスとパントマイムを披露し、途中で世紀の英雄たちの姿をキャンバスに描き出すのだが、芸術作品が作られていく過程自体が「ペインターズ:ヒーロー」のストーリーであり、見どころだ。
ノンバーバル・パフォーマンスといえば俳優のパフォーマンスが最初に思い浮かぶかもしれないが、最大の見どころは、ライトスクラッチ、アクションペインティング、スピードドローイング、夜光ドローイングなど、今まで見たことも聞いたこともない10の絵画技法である。光も水も美術の材料となり、最先端のグラフィックス技術で観客の視線をつかまえるが、俳優の指先について目を凝らしていくと、今まで何であるかもまったく分からなかった映像が一つの完璧な作品として誕生し、歓声を上げずにいられない。
劇の導入は黒のキャンバスを削って肖像画を完成させる「ライトスクラッチ」技法で始まる。強烈なビートとパフォーマーの高速スクラッチテクニックが完了すると、キャンバスの後ろから明るい光が差し、その瞬間パフォーマーが観客に見せる最初の英雄である革命家チェ・ゲバラの肖像画が浮かび上がる。舞台と客席を埋めるための光の筋が、今も輝く価値を伝えるチェ・ゲバラの人生を光と影のコントラストによって完成された作品として見せてくれるため、観客の歓声も一気に爆発する。
飛び、振り、撤きながら4つの画版に完成する「アクションペインティング」も強烈だ。4つの黒いキャンバスに4人のパフォーマーが楽しい音楽に合わせて飛んで振って塗料をかけると、いつの間にか一つの大きな絵が完成されるが、パフォーマーたちのウィットのあるダンスで楽しく、完成した作品の結果に驚いて二倍楽しめる。
「ダストドローイング」と「スピードドローイング」は、どんでん返しを繰り返す楽しみでいっぱいだ。俳優がパフォーマンスに集中して観客の視線を奪っているうちに、いつの間にか思いもよらなかった絵が完成し、一瞬でディテールの陰影に人物の肖像画が完成されるので、反転という言葉以外にはダスト描画手法を説明する方法がない。スピードドローイングは、一瞬も見逃すことができないスピード感のある描画が白眉だ。パフォーマーが超大型のキャンバスに超スピードで描画を始めるが、わずか十秒の間に吼える虎の姿をキャンバスに再現する。しかし、絵を描く手が見えないほどの信じられない速度は、ただのプロセスに過ぎない。驚くべき逆転は、繊細に描かれた虎だ。ここでは特殊技術により、トラが生きて動くため、何度も繰り替えす驚きと反転に言葉を失う。
ユニークな手法は、これだけではない。子供の頃に遊んだルービックキューブ200個を5分で解いて、キューブの色だけで、新しいピクセル・モザイク技法の作品を完成させる「キューブアート」、ロマンチックな音楽と共に暗闇の中で幻想的な夜空の星と月を描き出す「夜光ドローイング」に、水と油を素材にして幾何学的な形やパターンを作り出して不可能だと思っていた水上のドローイングを表現した「マーブリングアート」など、驚きが連続し、芸術は退屈なものという先入観も「ペインターズ:ヒーロー」の舞台の前にはあえなく崩れ去る。
様々な技法が観客の感嘆の声を引き出すが、劇の終盤を飾る「バトルドローイング」が断然クライマックスだ。絵のテーマは、中国の名作「三国志」。3人のパフォーマーが舞台の上の超大型キャンバスのスピードとカリスマあふれるタッチでお互いにバトルを繰り広げながら三国志の三人の主人公の人物画を描いていく。壮大な音楽と舞台全体をスクリーンにした派手な映像効果がパフォーマーのパワフルなライブドローイングに加わって、観客の反応を最高潮に引き上げる。
観客と一緒に呼吸する韓流ノンバーバル・パフォーマンスならではの楽しみも「ペインターズ:ヒーロー」にはある。パフォーマーが客席に降りてきたり、観客をステージに上げて一緒に絵を完成させたりするが、自分の画力に関係なく、楽しい舞台に参加できるので、パフォーマーに呼ばれた場合は迷わず舞台に上がってみよう。

Information

ペインターズ:ヒーローは、ソウル専用劇場(ソウル劇場5階)と済州専用館(漢羅アートホール)でオープンランで上映中だ。ソウル専用劇場、済州専用館共に毎日(月〜日)17時と20時の1日2回公演。観覧時間は約85分で、入場料はA席4万ウォンから。
www.actiondrawing.co.kr

Pocket

関連する記事はこちら

月精寺

山寺で私をみつける江原道観音聖地癒しの旅

心身が癒されるとっておきの冬の韓国旅行 山寺で私をみつける江原道観音聖地癒しの旅    日常の悩みから離れて地上と断絶した山の中の寺院に向かう。都市の喧騒は消え、神秘的で霊験あらたかな空気に体と心が自然と癒されていく。伝統的な仏の教えはこれまで気づかなかった人生の意味ま…続きを読む

메인(가로)

<公演レビュー> B-BOYに恋したバレリーナ

<公演レビュー> B-BOYに恋したバレリーナ バレリーナ、路上のダンサーを愛す   「24時間が過ぎたのに胸の震えが止まらない」公式サイトにある、一人の観覧客の観覧レビューが公演「B-BOYに恋したバレリーナ」の印象深い余韻をそのまま表現する。 「B-BO…続きを読む

100

元韓国語学留学生が ソウルを歩く

中川さんの久しぶりソウル 1日密着レポート 日本に空前のブームを巻き起こした韓流。韓流ドラマやK-POPの影響で韓国語を習い始めた日本人はたくさんいるようです。中川さんが韓国に留学に来たのは2005年の4月。当時は韓流の波がうねりだそうとする少し前でしたが、それでもいち早く韓国の…続きを読む

국립중앙박물관_꽃전시

国立中央博物館、書画観絵画室に新しい作品を公開

国立中央博物館、書画観絵画室に新しい作品を公開 -新年遺物を交替「朝鮮時代の花の絵」展開く 国立中央博物館が春を迎え、博物館内美術史展示館である書画観絵画室の遺物を新しく交替し観覧客を迎える。 新しく展示される作品らは近づく春とよく似合う「朝鮮時代の花の絵」達で、国立中央博物館の…続きを読む

鎮海・軍港祭

春満開!! 全国の桜祭り 2019年版

長い韓国の冬も終わりを告げ、花の便りがあちこちで聞こえてようくるになった。春になったら花見に行きたくなるのは日本でも韓国でも同じだ。韓国にも桜の名所は各所にあり、桜祭りが行われる。日本の桜とは楽しみ方がちょっと違う韓国の桜祭り、地方ごとの特色が見られるさまざまな桜祭りを楽しんでみ…続きを読む

オデホアートファクトリー

韓国で初のジャンクアートミュージアム「オデホ・アートファクトリー」

   忠清北道忠州市の郊外、廃校の校庭にロボットが現れた。映画「トランスフォーマー」で見たようなロボットが何体も並んでいる。その脇では近未来SFに出てきそうなバイクが走っている。子供たち、いや大人までわくわくするような作品が並ぶここは、今年5月にオープンした「オデホ・ア…続きを読む

ソウル城郭ツアー1

漢陽を守った4つの山を歩く「漢陽城郭ツアー」

漢陽を守った4つの山を歩く 「漢陽城郭ツアー」    朝鮮王朝の首都だった漢陽(ハニャン)は四大門と、その周辺を囲む4つの山に積み上げられた城郭により守られていた。今でも夜になると漢陽と呼ばれたソウルの中心部の城郭がライトアップされ、美しい夜景を見ることができるが、ただ遠くから見…続きを読む

IMG_5871

ファッションタウン東大門を支える町の素顔に触れる | 縫製歴史館「イウムピウム」

ファッションタウン 東大門を支える町の素顔に触れる 縫製歴史館「イウムピウム」 ソウルは物語の宝庫だ。景福宮など有名な観光地に行かなくても、実はソウルの街々に興味深い物語がたくさん隠されている。最近、それらを発掘して紹介する二つの展示館がオープンした。西大門と東大門に面した二つの…続きを読む

東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02