ミメシス・アートミュージアム

2014年09月22日

作品と建築が調和する「光による美術館」

ミメシス・アートミュージアム

 秋がやってきた。秋といえば「読書の秋」という人は、坡州市の出版団地を一度訪問することをお勧めする。韓国の出版社の洗練された社屋が並び、書店やブックカフェも兼ねているため、建築と良書が同時に楽しめる地域だ。また今年6月には20万冊の蔵書を持つ24時間営業の図書館「知恵の森」がオープンし、「本の虫」だけでなく多く市民からの注目を集めている。坡州出版団地にはギャラリーなどの文化スペースも多いが、その中でも人気が高いのが、「ミメシス・アートミュージアム」だ。
文・町野山宏記者
 
mimesis
 
 韓国を代表する建築家の承孝相(スン・ヒョサン)氏がコーディネートした坡州出版団地は、各出版社が有名な建築家たちに設計を依頼した社屋が立ち並び、それらを見て回るだけでも楽しいが、そんな出版団地の一角にあるミメシス・アートミュージアムは、さらにユニークな建築が印象的だ。アート関連の書籍を扱う出版社である「ミメシス」社が経営する美術館で、2009年にオープンした。
 出版団地に向かうバスを降りて、角を曲がるとすぐに見えるのが、芝生が植えられた庭に面した美術館だ。道路と敷地を隔てる門はあるものの、柵が低いために開放感がある。オブジェが置かれた庭にも家族連れがくつろいでいた。芝生に面した打ちっぱなしコンクリートの白い建物は、くの字を寝かせたような形になっており、有機的なラインが美しい。この美術館を設計したのは、ポルトガルの建築家のアルバロ・シザ。「建築の詩人」といわれるシザは、安養芸術公園にもパビリオンなど韓国でも建物の設計を手がけている。
 庭の奥まで入り、ゆっくりと開く巨大な自動ドアを開けて中に入ると、2階まで吹き抜けになった白い空間が広がる。手前には明るい日差しが差し込むカフェのスペースがある。大きな窓があるため、気持ちのよい庭を眺めながらコーヒーでくつろぐのもよい。観覧料金が5千ウォンだが、アメリカンコーヒー一杯も料金に含まれているため、展示を見た後にはぜひカフェで時間を過ごしたい。
 カフェの向こうはミメシス社が出版した本が陳列されており、気軽に立ち読みしながら購入もできる。本の割引イベントも行っており、デザイン文具なども扱っているため、これだけでもけっこう楽しめる。
 ここでチケットを購入して、くの字型の折れ曲がった部分にある窓からもう一度庭を眺めて、いよいよ美術館のスペースへ。まず2階の展示スペースへ続く階段を登る。階段の上からカフェと書籍コーナーを眺めると、曲線に囲まれたスペースに、本を置く台が点々として、島が浮かぶ海を眺めているようだ。
 展示スペースもユニークだ。外から見たあの緩やかな曲線を中から見たその姿なのだが、他の美術館の見慣れたホワイトキューブとはまったく違った感覚だ。空間自体が強い個性を持っているが、展示されているオブジェや絵画と妙に調和している。展示されている作品は、よく名前の知られたアーティストのものではない。約2ヵ月ごとに企画展が行われているが、過去の企画展を見ても誰もがよく知っているようなアーティストは皆無だ。また作品の点数も多くない。それでもこの空間と作品とが調和した姿は、他のどの美術館でも体験できないもので、わざわざこの美術館を訪ねた甲斐があったと感じることだろう。
 展示室の照明も独特だ。展示室の形を一回り小さくした形の天井と壁との間から、柔らかい自然光が差し込んでいる。この光が空間全体に満ちており、美しい空間をさらに美しく演出している。この美術館のコンセプトの一つが「光による美術館」であり、時々刻々と変わる光の表情を楽しむことができるわけだ。季節によって観覧時間が変わり、特に冬季は午後4時までというのもそのためだ。隣の展示室との間にはデザインチェアも置かれており、この空間をくつろぎながら楽しめるのもうれしい。また、ところどころにオブジェが置かれたルーフバルコニーがあり、多様な空間活用も見所の一つだ。
 1階の展示室も違った雰囲気を演出している。独特な形の空間に大きな窓が空いており、明るく差し込む光が空間と作品に新しい表情を与える。意図的なものか、自然が作り出した偶然の産物なのか分からないが、そこにつくられる空間は言葉を失うほどの美しいものだ。話題性のあるアーティストの展示で人を集めるのではない、作品と建築の饗宴による楽しさによって人を集める美術館にしようという美術館のコンセプトがそのまま現れている。
 一度訪ねたら、また訪れたくなる美術館。気持ちのよい空間でゆっくりと時間を過ごしたくなる美術館。そんな美術館を探しているのなら、坡州出版団地までぜひ足を伸ばしてみよう。
 坡州出版団地に隣接してロッテプレミアムアウトレットもあり、ヘイリ芸術村も比較的近いため、一緒に訪ねるのもよい選択だ。
 
ミメシス・アートミュージアム
地下鉄2号線合井駅から2200番バスに乗り、「シムハッキョ」下車。バスの逆方向に歩いて最初のT字路で右折し、すぐ右。約70分所要。
観覧料金: 5000ウォン
観覧時間: 冬季 – 火~日 10:00~16:00 /夏季 – 火~日 10:00~19:00
TEL:031-955-4100    http://mimesisart.co.kr/
Pocket

関連する記事はこちら

001

アジア最大の規模を誇る 国立中央博物館

韓流スターペ・ヨンジュンの著書である「韓国の美をたどる旅」(ハングゲ アルムダウムル チャジャ トナン ヨヘン)の中に出てくるペ・ヨンジュンが選んだ13の韓国の美の中のひとつとしてあげられた国立中央博物館。駅から博物館の入り口に差し掛かると美しい博物館の景色が広がります。アジアで…続きを読む

煥基美術館1

韓国ART散歩 | 煥基美術館

韓国最高の抽象画に最高の空間で出会う 煥基美術館   2017年11月27日、青い色調の一枚の絵が香港でのオークションで2800万ドル(約39億ウォン)で落札された。この「モーニングスター」という題の半抽象画は、韓国の美術品では最高額で落札される、樹話(スファ)・金煥基…続きを読む

박물관1

仁川の子供と一緒に楽しむ 博物館ツアー

子供と一緒に楽しむ 博物館ツアー 週末に、「子供たちとどこへ行こうか?」 と悩んでいる人なら、博物館巡り出かけてはどうだろうか。 子供と一緒に楽しめる5つの博物館を紹介しようと思う。 仁川児童科学館 仁川児童科学館では遊びや体験を通して、科学原理を分かりやすく学ぶことができるとこ…続きを読む

응답하라

仁川の韓国ドラマ『応答せよ1988』ロケ地

思い出に応答せよ! 韓国ドラマ『応答せよ1988』ロケ地 人気俳優たちが出演して「韓流」を巻き起こし、韓国の観光文化産業の発達に大きく貢献した映画やドラマはたくさんある。ドラマ『応答せよ1988』は、最近のドラマによく登場する不治の病、不倫などの素材を一切使わない最高のドラマとし…続きを読む

100

元韓国語学留学生が ソウルを歩く

中川さんの久しぶりソウル 1日密着レポート 日本に空前のブームを巻き起こした韓流。韓流ドラマやK-POPの影響で韓国語を習い始めた日本人はたくさんいるようです。中川さんが韓国に留学に来たのは2005年の4月。当時は韓流の波がうねりだそうとする少し前でしたが、それでもいち早く韓国の…続きを読む

K-Style Hub

新しい韓国の情報発信所が誕生!「K-Style Hub」

  韓国観光公社が原州に移転してからしばらく改装工事を行っていた建物が、韓国の観光情報や文化を発信するスペースとしてリニューアルオープンした。移転前にも地下にパンフレットの配布などの案内は行っていたが、リニューアル後は2階から5階までをフルで活用し、さらに多様で深い情報…続きを読む

nothumbnail

<釜山>特派員レポート|釜山流行発信地「釜山大」

<釜山>特派員レポート|釜山流行発信地「釜山大」 平年より寒かった冬が終わり、やっと訪れた新しい季節の到来に、ショッピングに出かけてみたくなる。「洋服はどんなところで買うの?」と大学生たちに聞くと、南浦洞(ナンポドン)、西面(ソミョン)と並びここ「釜山大(プサンデ)」の名前が必ず…続きを読む

경기도1

京畿道が選定した‘2017年京畿道の10大祭り’

12月になり今年も残りわずかとなりました。桜祭りが真っ盛りだった春がつい一昨日のことのように思えるのに、今や年末の冬祭りが大盛況です。 京畿道では、四季折々の個性満点の31ヶ所の市・郡のすべてが祭りを多く開催するということで噂されています。来るべき2017年を迎え、京畿道が201…続きを読む

東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02