歴史的なソウル駅が文化空間として誕生…文化駅ソウル284

2019年03月27日

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昔からソウルだけでなく韓国観光の要となってきたソウル駅。空港鉄道も利用できるだけでなく、ソウル駅前のロッテマートは外国人観光客に定番のスポットとなって久しい。でも、その前にある昔のソウル駅の建物を改装した文化空間「文化駅ソウル284」は思ったより見落としがちな名所かもしれない。しかし、素通りしてしまうにはもったいないお勧めスポットだ。

簡単に歴史から説明しておくと、最初にここに鉄道駅がつくられたのは1900年のこと。当時は南大門駅と呼ばれた。1923年に「京城駅」と名称が変わり、1925年に新しい京城駅舎、今の文化駅ソウル284の建物が竣工した。設計は塚本靖が担当した。解放後に「ソウル駅」と駅名を変更し、2004年に新駅舎にその役割を譲るまで駅舎として活躍した。

役目を終えた後、昔は日本統治時代の建物は解体されてしまうことが多かったが、多くの人たちの思い出の詰まった場所となっていたため、残されることとなり、展示をはじめとする文化空間として生まれ変わったのだ。名称としてつけられた「284」という数字は、国の史跡第284号として登録された番号にちなんでいる。

改めてその前に立ってみると、その威容に圧倒される。赤レンガと花崗岩の外観だけでも美しく、残されてよかったと思わされる。特に中央に取り付けられた時計は1925年の竣工当時のもので、朝鮮戦争のときに3ヵ月間停止したのを除けば一度も止まったことがないという。

大きな扉を開けて中に入ると、天井まで吹き抜けの中央ホールが観覧客を迎える。脇の窓からは日の光が差し込み、天井の中央にはステンドグラスが見える。これはもともと使われていたものではないが、歴史を感じさせるデザインなのが興味深い。中央ホールは切符を買って列車を待つ空間だった。切符売り場もそのまま残されており、展示の受付の空間として使われている。

たいていの場合、この中央ホールから展示が始まる。天井が高いため、背の高い大型の作品も展示できるのが特徴だ。今までの展示においても見上げるような作品が展示されることが多かった。その作品と天井のステンドグラスを一緒にカメラに収めてもいいだろう。

 

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中央ホールの両サイドには1等、2等、3等待合室だった部屋がある。向かって右側の3等待合室はやや広めの展示室となっている。向かって左側の2等、1等待合室は、こじんまりとしている代わりに高級感漂う部屋となっている。壁にはタイルの装飾が施され、柱にも木彫が施されている。部屋自体がこのように装飾されているため、作品の見え方も変わってくる。部屋全体が一つのインスタレーション作品のようにも見えてくる。随行員室や貴婦人用の待合室なども気品の漂う部屋としてつくられている。

 

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さらに奥にある貴賓室は、窓には豪華なカーテンがかかり、入り口の正面には暖炉がしつらえられている。この部屋は李承晩大統領や朴正熙大統領が使用したという。それぞれの部屋からは、昔のプラットフォームへに出られるようになっており、プラットフォームだった空間は、現在では長いすとテーブル、本棚が設置された休息の空間となっている。

 

レストランだった痕跡を残す展示室

2階へ昇る階段も趣があるが、中二階の天井にはちょっと変わった照明がかかっている。チェ・ウラムという作家の、電動で動く作品なのだが、近未来的な作品でありながら、昔からこの場所にあったように、不思議とこの空間に溶け込んでいるのが興味深い。美術館というと真っ白な壁に四面を囲まれた展示室を想像するだろう。それは作品をより際立たせて見せるために無機質な壁に作品をかけているのだが、文化駅ソウル284では展示室の装飾自体が強い自己主張をしている。それでも部屋の雰囲気と作品がお互いに自己主張をしながら新しい空間を作り出しているのが面白い。

2階への階段を昇ると、二つの小さな展示空間がある。右が理容室、正面がトイレとして使われていた空間だが、ここではこの建物に使われていた部材などを展示しており、壁の一部がむき出しになっていて、建築的な構造がどのようになっているのかを知ることができる。ここ以外の展示は企画展示だが、この展示は常設となっている。

2階の中心は、かつて「ソウル駅グリル」というレストランがあった広い部屋だ。大統領をはじめ、高位官僚や有名な俳優などが利用した高級なレストランだったという。天井には豪華なシャンデリアが下がり、大理石の暖炉が大きな存在感を示す。配膳室も残っており、韓国で初めて導入された料理を運ぶエレベーターも設置されている。

レストランの奥は渡り廊下となっているが、ここが中央ホールのちょうど上にある空間で、アーチ型の窓に当たる部分。ここも昔は小食堂として使われ、中央ホールを上から見下ろしながら食事ができる空間だった。このようにさまざまな角度から作品や空間を眺めることができるのも興味深い。そして渡り廊下の向こうにも小さな展示室があり、多彩な作品が展示されることが多い。

 

堅苦しくない展示がSNSで話題を呼ぶ

展示の内容も、「芸術」という言葉から来る堅苦しさはまったく感じられないテーマが多いのが人気の秘密だ。作品の前で腕組みしてうならないといけないような作品よりは、作品の前に立って自撮りした写真をSNSに上げたくなるような作品ばかり。美術館自体の広報よりはSNSを見て来たという人の方が多いのではと思うほどだ。

今までの印象的な展示を紹介すると、日用品を重ねたりすることでキッチュな魅力を放つオブジェをつくるチェ・ジョンファ作家の展示「総天然色」展は、思わず作品を見てクスッと笑ってしまうようなユニークな作品群だった。また、ゴッホの絵画作品をCGで幻想的に再現した「ゴッホ・インサイド」展も多くの観客が訪れた。

今年2月まで開催された展示「コーヒー社会」も人気だった。韓国にコーヒーが入ってきてから約100年、今や韓国人の生活と切っても切れない関係になっているコーヒーが、韓国社会でどのような文化を生み出してきたのかを作品を通して感じる展示だ。美術作品だけでなく、音楽のライブが行なわれたり、コーヒーに関するグッズが販売されたりと切り口も多彩だった。中でも話題になったのは、1階の随行員室。部屋には1・6トンものローストされたコーヒー豆が敷き詰められ、インスタ映えする場所として人気となった。

次回は3月21日から5月6日まで、「DMZ」展が開催される。最近注目が集まる非武装地帯をどのような角度で表現したのか話題になっている。

ソウル駅を利用したついでに寄るには最適な美術館、いやついでではもったいないほどの興味深いプログラムがあるため、たっぷり時間をとって訪ねてみてほしい。

 

文化駅ソウル284
地下鉄1、4号線ソウル駅1、2番出口から出てすぐ。
観覧料金:企画展示による
観覧時間:10:00~19:00
(毎月最終週の水曜日は21時まで運営。月曜休館)
https://www.seoul284.org/

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