韓国初の建築博物館「金重業博物館」

2015年04月21日

金重業博物館

気持ちのよい公園に面した韓国で最初の建築博物館

金重業博物館

 

建築物を見に海外旅行をするといえば、ヨーロッパに行く人が多いだろうが、韓国にも意外と見るべき建築が多い。3人の世界的建築家の作品が見られるサムスン美術館リウムをはじめ、日本の新国立競技場のコンペにも勝ち残ったザハ・ハディッドが設計したDDP(東大門デザインプラザ)など、建築に関心がある人ならば見に行きたくなるような名前はいくらでも挙げられる。しかし、韓国人の建築家はそれほど知られてはいないかもしれない。韓国の現代建築において最も有名な建築家を挙げるとすれば、金壽根(キム・スグン)氏、その次に金重業(キム・ジュンオプ)氏だろう。この二人のうちの一人、金重業氏の博物館が昨年オープンし、一周年を迎えた。ソウル郊外の安養芸術公園に接する金重業博物館を訪ねてみた。

文・町野山宏記者

 

ソウルから地下鉄1号線に乗って冠岳駅で降り、歩いて20分。安養芸術公園に登っていく川沿いの道は、家族連れで賑わっていた。夏ならば水遊びをする子供たちの歓声が聞こえる憩いの場所だ。その道を登っていくと、左手に円形の屋根を掲げた建物が見える。金重業博物館の門にある守衛所だが、幾何学的なモダニズム建築で、これも金重業氏が設計したものだ。シンプルでありながらバランスの整った建築に、博物館自体に対する期待がさらに高まる。

この博物館は、金重業氏の遺作である製薬会社の建物を改装したものだ。製薬会社当時の建物4棟と新しく建てられてた1棟で構成されており、ギャラリーとして使われている「文化ヌリ館」、金重業氏に関する展示をする「金重業館」、多目的空間としての「オウルマダン」がリニューアルした建物で、博物館としてリニューアルする過程で発見された安養寺址に関する展示を行う「安養寺址館」が新築の建物だ。このほかに安養寺の礎石と製薬会社の煙突が残されている。

敷地内に入ると芝生の敷かれた庭が広がり、緩やかな斜面にレンガの赤と白い壁の建物がいくつか見える。

文化ヌリ館

文化ヌリ館

まず最初に正面にある「文化ヌリ館」に入ってみる。金重業氏が師事した「近代建築の父」と呼ばれるル・コルビジエの作品を思わせるピロティーがある建物だ。直線的な直方体の建物だが、窓に取り付けられた日よけなど、美しい工業製品を思わせる。2階の角の部分には彫刻家である朴鐘培(パク・ジョンベ)氏のパイオニア像と母子像が置かれ、強い印象を与えている。

この文化ヌリ館は、地域の作家の作品を展示するギャラリーとなっている。もともとが製薬会社の事務棟として使われていただけに、展示室としては天井が低く感じるが、その建築に合わせた展示がなされているのも興味深い。内部の階段や窓も、他の建築には見られない金重業氏の独特なデザインが目を引く。見所は展示だけでなく、1階にはデザイン文具などを集めたアートショップがあり、屋上テラスのレストランも安養の山や公園が見渡せる気持ちのよい場所だ。

文化ヌリ館の向かいの建物は金重業氏の建築について紹介する「金重業館」だ。この建物も特徴的な外観を持っている。側面に飛び出した梁が印象的で、入り口の雨よけはX字型の柱で支えられている独特な姿だ。内部は金重業氏の代表作である駐韓フランス大使館、三一路ビル、徐産婦人科医院などの模型や図面をはじめ、金重業氏の建築に対する思想が分かりやすく説明されている。パネルの説明には日本語と英語の訳もあるのがうれしい。金重業氏の建築は取り壊されて現存しないものもあるが、模型や写真などでその姿を想像することもできる。

金重業館

金重業館

ここで金重業氏について簡単に紹介しておこう。冒頭でも紹介したとおり、金壽根氏と双頭をなす韓国を代表する建築家だが、金壽根氏ほど知名度が高くないのは、政府の住宅政策を批判することで国外追放された時期があったことによる。建築がどうあるべきかという確固たる哲学を持っていた彼は、時代の渦の中で虐げられた人だった。しかし、現在はその思想と業績が認められ、韓国現代建築の第一世代として認められている。

また彼の履歴として特筆すべきは、ル・コルビジエの事務所にいた経験があるということだ。建築に関心を持つ人であれば知らない人はいないフランスの建築家、ル・コルビジエは「新しい建築のための5つの要点」を発表し、人体に基づいた建築をつくるためのモデュロールと呼ばれる基本寸法を提唱した近代建築の巨匠だ。ここ金重業館でもル・コルビジエの思想について知ることができる。このようなル・コルビジエの思想は、韓国においては金重業によって受け継がれた。ル・コルビジエのもとで3年半の間、学んだ彼はその思想を韓国の風土に適用させようとしたが、その試みもこの金重業館で見ることができる。

金重業館の至るところに彼の言葉が記されており、建築や都市に関する彼の思想を垣間見ることができる。この建物の前には石碑が立っており、そこにも彼の残したテキストが刻まれているが、その中に「建築家とは、時間と空間の中に自身のすべてを燃やし尽くす者たちです」とある。まさにそのような人生を歩んできた建築家なのだろう。

この博物館が建てられるとき、改修工事の過程で「安養寺」の礎石が発見された。高麗時代の寺である安養寺址の発見によって明らかになった郷土の歴史に関しては「安養寺址館」に展示されている。

安養寺址館

安養寺址館

また、3月27日から5月10日まで、「文化ヌリ館」では開館1周年を記念して「ここ、つながる:韓仏建築展」が開かれ、博物館の土地と金重業を中心とした建築家、そして建築についての紹介する展示が行われる。この博物館についてより深く理解できる貴重な機会となるだろう。

建築の博物館というと堅いイメージがあるかもしれないが、芝生が敷かれた気持ちのよい公園のような雰囲気で、すぐ隣には山を背にした渓谷の流れる果川芸術公園もある。ソウルから離れて一日を過ごすのもよい選択となるだろう。

 

金重業博物館

地下鉄1号線冠岳駅2番出口から大通りを左折。最初のバス停留所で5713、5624番バスに乗って次の停留所(安養芸術公園)で下車。進行方向に歩いて最初の地下道で道を渡り、川の前で左折川沿いに5分ほど歩いて最初の橋の左側。

観覧料金: 2000ウォン(企画展示)

観覧時間: 9:00~18:00(月曜・旧正月・秋夕休館)

TEL:031-687-0909

http://www.ayac.or.kr/museum

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