韓国ART散歩 | 煥基美術館

2018年01月05日

韓国最高の抽象画に最高の空間で出会う

煥基美術館

 

2017年11月27日、青い色調の一枚の絵が香港でのオークションで2800万ドル(約39億ウォン)で落札された。この「モーニングスター」という題の半抽象画は、韓国の美術品では最高額で落札される、樹話(スファ)・金煥基(キム・ファンギ)画伯による作品。最高額を4月に更新したのは65億ウォンで落札された彼の点画で、今回の作品も点画を除く作品では最高額だという。そんな話題の尽きない金煥基画伯の作品をまとまって鑑賞できる空間が、ソウル鍾路区の付岩洞(プアムドン)にある「煥基美術館」だ。ここで金画伯の作品に触れた瞬間、その価格の意味するところを感じることができるだろう。
文/町野山宏記者

 

煥基美術館1 光化門からバスに乗って北に向かう。大統領府である青瓦台の脇を抜けると、だんだん山道に入ってくる。北漢山が右手にそびえる坂道を登り、ソウル城郭を抜けると、そこは付岩洞。山に囲まれて坂の多い土地に住宅街が広がり、小ぢんまりしたレストランやカフェもあってわざわざ訪れる人も少なくない。「コーヒープリンス1号店」や「華麗なる遺産」などのドラマのロケ地にもなったため、外国人観光客も多く訪れる地域だ。そして付岩洞は芸術の街でもある。ソウル美術館をはじめ、多くのギャラリーが点在し、ソウル城郭の門となる彰義門(チャンウィムン)の隣には詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)を記念した尹東柱文学館もある。

そして、付岩洞で芸術散歩を楽しむなら、外せないのが「煥基美術館」だ。韓国最高の抽象画家・金煥基画伯の作品を所蔵・展示する美術館だ。金煥基画伯の死後、画伯の妻・金郷岸(キム・ヒャンアン)女史が設立した煥基財団によって建てられた美術館だ。金郷岸女史が夫と彼の作品をどれだけ愛していたかが分かる。

1913年、日本統治時代に生まれた金煥基画伯は、1930年代に日本に留学して抽象画と出会い、前衛的な美術運動にも参加した。西欧的な様式を研究しながらも韓国的なアイデンティティーを追求した彼は、1956年、パリへ旅立った後も韓国的なモチーフの抽象画を試みた。彼の代表的なモチーフとなる白磁の壺もパリ時代に端を発している。1963年、第7回サンパウロビエンナーレに韓国代表として参加して好評を得た彼は、その地位に安住することなくニューヨークへ向かった。そして1974年に他界するまでより抽象画の表現を突き詰め、韓国を代表する抽象画家として世界にその名を知らしめた。

彰義門前の三叉路を右に折れ、二股に分かれる道を左にしばらく進むと、右手に美術館が見える。ハングルをモチーフにした街灯のような作品が目印だ。門を入るとまた道は二手に分かれるが、左側の階段を上がる。庭園もきれいに整えられ、それだけでもいい気分になってくる。階段を上ったところにある建物でチケットを買う。この建物もカフェ兼小さなギャラリーとなっている。

IMG_4544 さて、いよいよ美術館の展示室へ。この美術館の建物は斜面に沿って階段状に建てられているのが特徴。四角い建物の上にかまぼこ型の屋根が二つ、そしてそれを外の階段が囲むように登っている。地形に調和した導線だけでなく、この土地で採掘した石材を壁に使うなど、よりこの環境に調和するようにつくられている。抽象画でありながら韓国の自然を思わせる金煥基画伯の作品を思わせるような建築だ。

3階建ての展示室も階段で下から上りながら観覧するようになっているが、一つひとつの展示室が独特で、空間の配置や光の入り方、作品の見せ方など、すべてにおいて緻密に計画されており、展示室を移るたびに驚きを禁じえない。空間自体も美しいが、その中で金煥基画伯の作品が圧倒的な存在感を持って見る者に語りかけてくるため、その場にずっとたたずんでいたい気持ちになってくる。そして一つひとつの展示室は独立していながらも、その上階の展示室から見下ろすこともでき、作品や空間を違う方向から鑑賞することができるのもこの美術館の特徴だ。見る角度や距離によって作品から受ける感覚が違ってくるため、何気なく過ぎ去った作品も違う角度から見ることで、はっとさせられることもある。そのような驚きに満ちた空間だ。おそらく金煥基画伯のそぎ落とされた抽象表現だからこそ生まれた緊張感であろう。もちろん、金画伯の作品に特化された美術館として計画された建築であることはいうまでもない。

作風はさまざまだが、青を基調とした点描が有名だ。無数の点を描き、その点を一つひとつ囲んで大きなキャンバスを埋めている。無数の星が集まって宇宙を形成しているように、無数の点が宇宙をも思わせる一つの作品を形成しているのだ。そしてある作品は、その点の群れを分けるように何本かの白い筋が通っている。それらの直線と、点の群れが成す面とがせめぎあう緊張感は、作品に視線を固定させてしまう。崇高でありながら温かみを感じる不思議な作品たちだ。

IMG_4542 3階まで展示を見終えたら、外の階段を下りてくることをお勧めしたい。外にもいくつかの野外彫刻が展示されているだけなく、周囲の自然に調和した建築の美を感じることができるはずだ。

展示室は本館だけでなく、入り口を入って右に向かう通路を伝っていくと、小さな展示室がある。「樹郷山房(スヒャンサンバン)」と名づけられており、金煥基画伯の号である「樹話」と妻の金郷岸女史の名前から一字ずつをとった名前で、これは彼らが城北洞で新婚生活をした家の名でもある。その家は現在、他の人が住んでいるが、この美術館を付岩洞に建てたのは城北洞に町の雰囲気が似ているためだという。樹郷山房は本館とは違って小さな作品が展示されているが、これらの作品も見逃すには惜しいすばらしい作品たちだ。

作品も建築も、写真で見るのと実際に見るのとではまったく違う。特に煥基美術館はその違いが顕著に現れる例だと思っていい。ぜひ一度訪ねてその感動を味わってみてほしい。

 

Information

煥基美術館

地下鉄5号線光化門駅から1020、7212番の市内バスに乗り、付岩洞住民センター下車。徒歩約5分。
観覧時間:10時~18時 休館日:毎週月曜日、1月1日、旧正月と秋夕の連休期間 入場料:展示による

www.whankimuseum.org

Pocket

関連する記事はこちら

메인_세로A

韓国観光公社ウェルネス観光25選特集 -上-

今までにないワンランク上の韓国旅行 「韓方、自然・森の癒し、 ヒーリング・瞑想で満喫する 韓国ウェルネス観光」    健康的な生活を追求する人のためのとっておきの旅行である「ウェルネスツアー」が旅の世界的なトレンドとなっている。疲れた心身を休ませて健康な生活を追求する少…続きを読む

수도국산박물관1

韓国の仁川にある特別な博物館旅行

ご両親との時間旅行 水道局山タルトンネ博物館 いわゆる「博物館」といえば、退屈なところ、というイメージがある。 展示されているものによって、そのイメージは異なるが、とにかく、博物館はその特有の語感から、気軽に楽しみながら、ゆったりとした時間を過ごすというイメージとはほど遠い。しか…続きを読む

경기도1

京畿道が選定した‘2017年京畿道の10大祭り’

12月になり今年も残りわずかとなりました。桜祭りが真っ盛りだった春がつい一昨日のことのように思えるのに、今や年末の冬祭りが大盛況です。 京畿道では、四季折々の個性満点の31ヶ所の市・郡のすべてが祭りを多く開催するということで噂されています。来るべき2017年を迎え、京畿道が201…続きを読む

다담콘서트

国立国楽院、国楽コンサート「茶談」オープン

国立国楽院、国楽コンサート「茶談」オープン   –  歌手ユ・ヨルが進行、お茶とトークショーがあるコンサートを開催     国立国楽院が冬のソナタに出演した歌手ユ・ヨルが進行する午前の国楽コンサート「茶談(タダム)」を今年の前半期と下半期…続きを読む

국립중앙박물관

国立中央博物館、「新安龍泉靑磁展」を開催

国立中央博物館、「新安龍泉靑磁展」を開催 -アジア館にて6月19日まで 国立中央博物館内にあるアジア館の新安海底文化財室にて6月19日(日)まで、新安沖の海底から発掘された龍泉靑磁をテーマにしたテーマ展が開催される。 龍泉靑磁とは、中国の呉・北宋の時代から清王朝まで浙江省南部の龍…続きを読む

춘천마임축제

春川マイム祭り開催日確定、5月22日から8日間

春川マイム祭り開催日確定、5月22日から8日間 -国内外90ヶ余り劇団参加、マイムの真髄を見せる 世界3大マイム祭りとして、2007年からは韓国最優秀祭りに選ばれた春川(チュンチョン)マイム祭りが来る5月22日から29日までの8日間、春川市一帯で盛大な幕を上げる。 祭りには国内外…続きを読む

6cc04265d5531cd408bf4d08f1290942-150x150

貞洞劇場の企画公演2014新作「裵裨將傳」開演

貞洞劇場の企画公演2014新作「裵裨將傳」開演 古典小説「裵裨將傳」を伝統的な舞踊劇として新しく創作  古典小説「春香伝」を原作に、ダイナミックで品格のある伝統的なミュージカルに脚色して、国内外の観覧客に好評を博した作品「美笑」を演出した貞洞劇場が美笑の後続作品として企画公演「裵…続きを読む

日本に帰っても作れる 好きなコースを選んで習う

ソウル伝統文化体験館

韓国グルメを堪能したり、エステや観光を楽しんだり。それもまた充実した旅の楽しみ方ですが、実際に韓国料理を作ったり伝統文化の体験ができたら、旅のグレードが一段と上がるのではないでしょうか。ソウル伝統文化体験館では外国人観光客に向けた楽しい体験メニューを行っており、趣のある韓屋では伝…続きを読む

東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02