見て、買って、味見して、ソウル伝統市場散歩
世界の多くの国を巡る旅行マニアが欠かさず訪問する場所のうちの一つが「伝統市場(在来市場)」だ。都心の有名百貨店やショッピングモールなどと違い、昔の雰囲気が残っていて、粗悪なものが懐かしく感じられ、その物を売り買い人の体臭に人情を感じる。その上、それぞれの物が秘めている伝統文化と地元の生活習慣や哲学、そして空腹をなだめてくれるグルメで、伝統的な市場はいつも旅行者で賑わっているからだ。韓国の鍾路の広蔵伝統市場とシンジン市場、そして通仁市場もそれぞれの歴史と話の種、異色なグルメを打ち出して旅行を集めているスポットだ。広蔵市場はビンデトックと麻薬キムパプ、ユッケなどがあり、シンジン市場のタッカンマリ・焼き魚、通仁市場のお弁当カフェも旅行の楽しみを増している。歩きやすいこの季節、ソウルならではの感性と味を探す感覚派の旅行客ならば、ぜひ行くべきスポットだ。
文/李相直記者
広蔵(クァンジャン)市場は、ユネスコ世界文化遺産に登録されている宗廟と宝物第1号の興仁之門(東大門)、DDP(東大門デザインプラザ)、清渓川から近い所にある。地下鉄1号線鍾路5街駅の9番か10番出口、または地下鉄2号線・5号線乙支路4街駅の4番出口を出て清渓川橋を渡ると広蔵市場に行ける。100余年の歴史を持つだけにビンデトックや麻薬キムパプ、ユッケ、チャンチククス、豚足、スンデ、ジョンの盛り合わせなどグルメも多様だ。
広蔵市場は清渓川に沿う方向に長い長方形で、清渓川側の南門(南1・2・3門)と東門と西門(西1・2門)と、正門となる北門(北1・2門)の8ヵ所からアクセスが可能だ。
このうち地下鉄1号線鍾路5街駅9・10番出口を出て広蔵市場の北2門を通過して歩いていくと、ビンデトック(緑豆を石臼ですりつぶし平たくして焼いた料理)のにおいが食欲をそそる。
ビンデトックの場合、広蔵市場のグルメゾーンを中心に、道路の真ん中に屋台を出してビンデトックを焼く店と、正式な店でビンデトックを売る店の2通りに分けられる。屋台で売るところとお店で売るビンデトックの価格は平均5千ウォンだが、ビンデトックの種類によっては店で売るほうが2ウォン程度高いものがある。
道で売っているビンデトックのほうが少し安いが、木の長いすに座って食べるので、待っている次のお客さんのために早く食べて席を空けてあげなければならない。
屋台で食べるビンデトックの風景に比べ活気は落ちるが、店のほうはやや小さいテーブルでマッコリを傾けながら食べる余裕がある。
ビンデトック通りから1ブロック移ったところにあるユッケ通りも名物だ。ユッケ通りは、牛肉を生で細かく切って、さまざまな味付けをして食べる「ユッケ」の店が集まっているところ。地下鉄1号線鍾路5街駅の10番出口を出るとすぐのところにある「ユッケ通り」は、見慣れない韓国の食文化を味わうために訪れる若い旅行者も多い。
ほとんどのユッケの店では、韓国産の肉牛(牛肉)を使用している。メインメニューのユッケの場合、1人前200グラムが1万2千ウォン程度で、ユッケの生臭さに対する負担を軽減するためにつくられた、ご飯と一緒に食べるユッケ丼(6千ウォン)も人気のメニューだ。他にも、生きたイイダコ(ナクチ)をまな板の上に置き、包丁で「タンタン」とぶつ切りにした後、塩とエゴマ油を混ぜたソースにつけて食べる「ナクチタンタン」も特別な味でおつまみにぴったりで、酒好きにはぜひお勧めしたいメニューだ。
グルメゾーンを中心に4方向に散らばっている「街角飲食店(建築物ではない移動式飲食店)」では、別名「麻薬キムパプ」をはじめ、スンデ、豚足、トッポッキ、うどん、野菜ビビンパなどが旅行者を集めている。このうち、韓国でキムパプをつくるときに使うのり巻き用の海苔を4等分した後、ほうれん草・にんじん・たくあんだけ入れて醤油と酢、マスタードを混ぜてつくったソースにつけて食べる「麻薬キムパプ」が足をとどめさせる。「麻薬キムパプ」というのは、材料はシンプルだが、サイズが小さいため(普通のキムパムの4分の1)食べる回数が多くなるだけでなく、普通のキムパムとは違って醤油をつけて食べると中毒性があるということで付けられた名前だ。広蔵市場を訪ねて小腹を満たすにはぴったりだ。
| http://kwangjangmarket.co.kr
東大門の隣のシンジン市場タッカンマリ&焼き魚
広蔵市場の東門側から道を渡るか、地下鉄1号線鍾路5街駅の5番出口を出て3ブロックほど過ぎると、右側に鍾路シンジン市場の入り口を示す看板が見える。シンジン市場に入ってコプチャン(ホルモン)の店が集まっている最初の十字路から左に入るとタッカンマリ・カルグクス通りが始まる。
韓国映画「ヒマラヤ」の出演者たちが訪れて有名になったタッカンマリ・カルグクスは、韓国旅行の日程の中で一度は立ち寄る場所となった。
タッカンマリ・カルグクスは、たっぷりのスープに鶏一匹が丸ごと出てくる。旅行者はそれをはさみで切って食べる。スープに小さな鶏を丸ごと入れて出てきたら、それぞれの好みに合せて、キムチやニンニク、調味料を入れて調理して食べる。調味料と酢、マスタードを混ぜてソースをつくりながらシェフの気分も味わうことができる。
まずは鶏を食べてから、鶏のスープでカルグクスを煮て食べるとメインコース(?)は終了だが、より満腹感を感じたいなら、鶏が煮える間にジャガイモやトッポッキの餅を注文しておいて一緒に煮て食べたらよい。
旅行客の食事の量に応じてタッカンマリの満足度は違うだろうが、大人3〜4人が食べる場合は、最初に2羽くらい注文するのがちょうどよいだろう。
タッカンマリ・カルグクス通りを過ぎると練炭で魚を焼く焼き魚の店が現れる。新鮮なサバやサワラ、サンマなど、お好みの魚を選んで一食を味わえる焼き魚の店で、練炭で焼く魚の匂いは、韓国ならではの路地裏の味を感じられるだろう。東大門ショッピングモールなどから近い距離にあり、物売りに来た商人も、遊びに来た旅行者も、皆が一緒によく焼いた魚と温かいご飯を食べて、楽しい時間を過ごすことができるところだ。
西村韓屋村で旅行感性、通仁市場の「葉銭弁当」
広蔵市場が位置する地下鉄1号線鍾路5街駅から地下鉄駅で3駅行ったところにある通仁(トンイン)市場も一品だ。通仁市場は景福宮内にある国立故宮博物館や地下鉄3号線景福宮駅の2番出口から約500m、青瓦台サランチェから150mの距離に、東西に長く形成された路地型在来市場である。
広蔵市場に比べて規模も小さく有名ではないが、西村韓屋村(景福宮の西側にあって付けられた名前)などを巡ってお弁当カフェで食事を解決するために通仁市場を訪ねる旅行客が増えている。
昔の市場の雰囲気を感じられるように、1両当たり500ウォンで利用できる市場専用の貨幣「葉銭(ヨプチョン:昔のお金)」を作って楽しみを加えている。葉銭販売店で購入した葉銭でジョンやチャプチェ、卵焼きなどしっかりとしたおかずから、通仁市場の名物である「油トッポッキ」のようなおやつまでお好みで選択して、顧客センター2階の弁当カフェで食べられる。ご飯とスープが必要なときは、それぞれ1000ウォンでお弁当カフェで購入することができ、コーヒーや飲料などが500ウォン割引となり、大人の場合5千ウォン程度なら一食が解決できるため人気だ。
| https://tonginmarket.modoo.at
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