Yuckyの大邱10味紀行 ⑤ ヌルンククス
以前ご紹介したぺちゃんこ餃子と並び、市場でよく食べられているもう一つのグルメに「うどん」があります。韓国ではうどんのことをカルグクス(カル=切る、ククス=麺)と呼ぶのが一般的ですが、大邱では「ヌルンククス」と呼ばれています。生地を押して(ヌルン)作ることからその名がついたようですね。
麺は細めで柔らかく、イワシからとったいりこ出汁が一番の特徴。味付けは、あっさり塩味(ちょっと醤油?)、どちらかというと薄味で、たっぷりのすりゴマがかかっています。具はお店によってさまざまで、エホバ(朝鮮かぼちゃ)やカボチャ、ニラ、意外なところできゅうりが入っていたこともありました。また、うどん(カルグクス)とすいとん(スジェビ)が半々に入った「カルジェビ」も人気があります。
西門市場には「ヌルンククス通り」があり、ククスの屋台がズラリと並んでいます。一杯2500ウォン(約250円)というお手頃さもあって、お昼時にはどのお店もお客さんでごった返しています。アジュンマ(お店のおばさん)がでっかい包丁で麺を切り、大きな鍋に放り込んでいく様は見ているだけで楽しくなります。喉越しのいいうどんをすすりながら、市場の活気と働き者のアジュンマの元気もいただいた気になるのです。
西門市場で特筆すべきは、ウネン食堂というお店。大邱在住の知人(日本人)が「ククスなら絶対ここよ!」と太鼓判を押すのでさっそく探しに行きました。でも、なかなか見つけられず…。それもそのはず、お店といっても別のお店の軒先に椅子が無造作に置いてあるだけ。壁に「ウネン食堂」と書いた貼り紙があるので、やっとそこだと分かりました。お店というより露店かなぁ? 地元ではかなり人気があるらしく「農協の横のうどん屋」といえば分かるのだそうです。
お客さんがひっきりなしにやって来て、席に着くと自動的にククスが出てきます。「さすがに観光客は浮いちゃうな~」と引け目を感じつつ、ククスをズズズ…。一口で分かりました。人気の秘密は出汁にあり! いりこ出汁なのに魚臭さはなく、なんとも優しいお味です。地元の人たちと肩を寄せ合い大邱訛りを聞きながら、雰囲気もろとも味わっていただきたいお店です。
さて、この記事を書くにあたりいろいろ調べているうちに、大邱ではうどんの生地にきな粉を混ぜる、ということが分かりました。やはりこれも食糧難時代、栄養補給のための工夫でしょうか?
大邱の料理の先生に伺ったところ「昔、家でうどんを打つ時は、きな粉を入れたものですが、最近は(特に屋台などでは)費用がかさむので入れなくなってしまいました。でも、専門店に行けば、今でも入れているかもしれませんよ」とのこと。これは食べなくっちゃでしょう!? 今度大邱に行く時には、きな粉入りのククスを探してみたいと思います。
最後に、あまり知られてはいませんが、大邱は韓国の中で小麦粉の消費量が一番多いといわれています。そういえば、ヌルンククスもぺちゃんこ餃子も、主原料は小麦粉。この2つのグルメがいかに大邱市民に愛されているか!?の証明ではないでしょうか?
大邱10味紀行、今回もまた市場のグルメをピックアップしてみました。大邱は何度行っても、美味しいものに出逢ってしまうグルメな街です。本当は10味じゃ足りないんだよなあ。(笑)
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