Yuckyの大邱10味紀行 ⑥ ムンティギ
大邱10味紀行、今回は「ムンティギ(뭉티기)」をご紹介したいと思います。
ムンティギとは、一言でいうと牛のお刺身のことで、韓国らしくニンニクと粉唐辛子の入ったゴマ油をつけていただきます。「ムントンムントン(뭉텅뭉텅、日本語ではサクサク)と切った肉の塊」という意味の言葉が、慶尚道の訛りで「ムンティギ」になったそうで、その名の通り、刺身というより「ブツ切りのお肉」といった方がピッタリかもしれません。
大邱でムンティギが登場したのは1950年代のことで、大邱駅の南にある香村洞(ヒャンチョンドン)で食べられるようになりました。そして徐々に人気をよび、今では大邱のあちこちに専門店ができています。私は東城路にあるソンハックイ(송학구이)という大型店に行きましたが、知る人ぞ知るディープな専門店もあるようです。(まだ行けてないので興味津々!) お肉を生で食べるのですから、お肉の質や鮮度の良さが重要なのはいうまでもありません。まず、使用されるお肉は「純粋な韓牛」に限られます。部位としては、後ろ足の太ももの内側部分、チョッチゲ(처지개)と呼ばれるスジ肉の一種で、一頭の牛から4キロほどしかとれません。供給量が限られるため、お店によっては、仕入れのない週末には売り切れだったり、予約しないと食べられなかったりするので、小さなお店では予約は必須のようですね。
ちなみにユッケも同じ部位になりますが、細かく刻んだユッケと違い、ムンティギは親指大、いやマッチ箱大にカットされ、血のしたたるような真っ赤な色をしています。そんな生肉をワシワシ食べるなんて、大邱の人ってなんて豪快なんでしょう!
初めて食べに行った時、牡丹の花のように真っ赤な肉片がドーンと盛られてきて「これを全部生で?」と一瞬たじろぐほどでしたが、口に入れると意外にアッサリ! 脂や筋がないのでとても柔らかく、お肉というよりマグロのお刺身のような食感でした。お肉の臭みもほとんどなく、肉本来の旨味がジワ~~っと口の中にひろがります。
お値段は大皿のムンティギにいろいろなパンチャンがついて3万ウォン前後。女性なら4~5人でも充分足りると思います。パンチャンにはレバーやセンマイ、珍しいところで脊髄(등골)なども出てきます。また、お肉と共にキャベツを出すお店があるのですが、これは生肉の特性上、消化に負担がかかるので、消化を促進させる役割を果たすのだそうです。
先日、ムンティギの美味しいお店を探すべくネット検索しているうちに、同じような写真を何枚も見かけました。それはムンティギの載ったお皿を縦にしたり、逆さにしたり。驚いたことに、ひきたてのお肉は、縦でも逆さでもお皿にビッタリはりついたまま、落ちないのです。その写真は、「こんなにもお肉が新鮮!」ってことをアピールするものであり、韓国のブロガーさんの間では、ムンティギのお決まりのショットというわけです。私も逆さまのお皿を撮ってみたいなぁ。でも、もし落ちたら食べられなくなるからなぁ。(笑)
残念ながら日本では規制が厳しくなり、生のお肉がなかなか食べられなくなってしまいました。でも、大邱なら「新鮮」な「肉厚」の韓牛を「生」で味わうことができるのです。肉好きにはたまらない一品かもしれません。大邱に行ったらぜひムンティギにチャレンジしてみてください。(ただし、「お店選びは慎重に!」と付け加えておきますネ)
Yuckyは…
韓国旅行を愛する福岡在住の主婦。現在、大邱市を中心に韓国旅行の魅力をブログ(yukiful.exblog.jp)を通して紹介しており、2013年5月から大邱市の名誉広報委員として活動中。
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