韓国郷土料理「トヤンコル」

2015年04月08日
ゆで豚(左)とアカエイの和え物(右)

ゆで豚(左)とアカエイの和え物(右)

 

伝統家屋で楽しむ韓国オモニの味

韓国郷土料理「トヤンコル」

 

トヤンコル 景福宮の西側の地域である通称「西村」が脚光を浴びているが、西村から大通りを渡った地域、ソウル地方警察庁の隣の地域も、路地に入り込むと伝統的な韓屋がたくさん残った地域だ。観光客はあまり足を踏み入れない地域だが、実は、高級料亭や地域の人にしか知られていない「穴場」的な郷土料理の店が長年営業を続けている。その地域に新しく韓国の伝統酒と、郷土料理が楽しめる「トヤンコル」がオープンした。地元の人たちが楽しむ「オモニ(お母さん)」の味とはどんなものだろうか。

文/大成直子記者

 

韓屋が続く細い路地に沿って中に入っていくと、壁にハングルで「トヤンコル」と書かれた看板が見えてくる。トヤンコルとは、大地のよい気が込められた谷間という意味だという。韓国の南方に位置し、霊山と呼ばれる智異山(チリサン)のふもとで採れた、大地の気がたっぷりとこもった食材を使った料理が自慢だ。

コの字型の韓屋を利用しており、入口の重々しい木の扉には韓国伝統の装飾が施されている。歴史が感じられる木の柱が並ぶ室内はそれほど広くはないが、別室が2部屋用意されているため、商談や家族同士のプライベートな時間はぴったりだ。引き戸を取り払うと、40人の食事も可能となる。

メニューは食事が中心の昼食と、お酒が中心となる夜のメニューがあるが、昼に訪れても夜に訪れても満足できる。夜のメニューを見ると、タコの刺身、アカエイの和え物、ゆで豚、海鮮チヂミ、タクトリタン(鶏の煮物)などがある。

タコの刺身は、韓国の東南に位置する港町・浦項(ポハン)から朝捕らえられたものを高速バスで郵送される新鮮なオオダコを使っている。韓国で最もタコの消費量が多いのが慶尚北道の安東(アンドン)や栄州(ヨンジュ)など、両班文化が栄えた地域であり、その供給地は東海岸だったため、韓国で最もおいしいタコを使っているということだ。味はもちろんのこと、皿の上に花が咲いたように鮮やかで、目にも美しい。

韓国のエイの料理といえば「ホンオ」を食べたことがある人もいるかもしれない。発酵させて独特なにおいのするホンオは好き嫌いの分かれる食材の一つだが、好きな人にはこの上のないご馳走だ。そのホンオに似たアカエイは韓国語で「カオリ」と呼ばれ、ホンオよりは歯ごたえのあるこりこりとした食感が人気だ。このアカエイを少し甘酸っぱい辛口のソースで和えた「カオリムチム」は、ソウルではなかなか食べられない珍味だといえる。

豚肉は韓国料理の定番の食材で、さまざまな料理に登場するが、トヤンコルでは「テジスユク」と呼ばれるゆで豚として出てくる。田舎の黒豚を使って肉自体も上質なものだが、ここでは独自のレシピによるしょうゆ風味で煮ているため、黒豚の旨みが更に引き出された一品だ。

海鮮チヂミは日本人にも人気の高い料理だ。新鮮な魚介類がたっぷり入ったチヂミは、マッコリや伝統酒にぴったりのおつまみには欠かせないメニューだ。

メインの料理もここでしか味わえない貴重な料理ばかりだが、付けあわせで出てくるおかずもあなどれないおいしさだ。若い桑の葉のナムルや、しゃきしゃきとした食感のヤーコンの和え物などは、食材自体がソウルではなかなか味わえない珍しいものだが、味付けも絶妙で、精魂のこもった料理だと感じられる。このおかずだけでご飯が食べられるくらいの満足感を与えてくれる。

おいしい料理にはおいしいお酒が欠かせない。焼酎やマッコリもいいが、伝統酒を味わってみるのもいいかもしれない。トヤンコルでは、一般の食堂ではなかなか出会えない、韓国各地方の伝統酒が準備されていて、韓国料理にふさわしい伝統酒を味わうことができる。

昼のメニューは日替わりで2通りずつ。ファンテタンとカルビタン、あるいはウゴジタンとソルロンタンとなる。ファンテタンはスケソウダラを煮込んだ白いスープ。ファンテタンは普通、辛くないことが多いが、ここでは慶尚道式のけっこう辛目のスープ。白いスープながらしっかりと温まる。カルビタンは、牛のカルビを時間をかけてじっくりと煮込んだ透明なスープが自慢だ。合成調味料を使っていないため、薄味に感じるが、肉の旨みがよく出た深い味わいで、いつの間にかスープがなくなっている。カルビタンの肉も、普通は骨を持ってかじって食べることも多いが、ここではよく煮込んであるため、箸で簡単にほぐれるほどのやわらかさだ。

ウゴジタンとソルロンタンの日も捨てがたい。ウゴジとは、白菜や大根の外葉を干したもの。このウゴジを牛肉と共に煮込んだスープがウゴジタンだ。辛いスープだが、野菜と牛肉の旨みがよく出ている。肉もごろごろと入っているので、満足感も大きい。辛いものが好きな韓国人はこのスープにご飯を入れてクッパにして食べ、スープも飲み干してしまう人が多い。ソルロンタンは、最近では日本でもよく知られるようになった白いスープだ。牛のさまざまな部位と骨を一晩煮込み、味付けをしていない素材の旨みがあふれるスープだ。塩コショウなどを入れて食べてもよし、キムチやカクトゥギを入れて食べてもよし、これもスープは一滴も残らない。

調味料もご主人の田舎(慶北道)から持ってきたものを使い、化学調味料は使わないため、家庭でお母さんが作ってくれる安心で温かい料理を楽しむことができる。

 

Information

トヤンコル地下鉄景福駅7番出口から30mほど直進するとコンビニがあり、その横道に入り約3分

・カルビタン 8000ウォン

・ファンテタン 8000ウォン

・ウゴジタン 7000ウォン

営業時間:11:00~21:00

定休日:日祝日(事前予約には対応可能)

TEL:02-720-1223

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