
韓国には「パルリパルリ(早く早く)文化」がある。急ぎ症の韓国人たちは食堂でわざわざ列に並んで食事することを嫌うが、行列に並んででもどうしても食べたい韓国料理店があると巷で話題になっている人気店2軒を取材した。 文/大成直子記者
健康料理として女性にブーム再熱
ホンズ・チュクミ
弘大(ホンデ)エリアの裏通りに、現地の会社員たちが行列を作って昼食時に通うと評判のチュクミ(イイダコ料理)店がある。チュクミ料理は真っ赤な色をしているためか、見るからに辛そうな料理として日本人は一見避けがちだろう。しかしチュクミは、焼いたり、茹でたり、炒めたり、そして焼酎などのお酒とも相性のよいなど、様々な楽しみ方ができる料理なのである。さらに最近では韓国女性たちの間で健康にもよい料理としてチュクミが注目されている。
チュクミとは、原産地が韓国の南西海岸で取れるタコの種類を指す。日本の小ぶりのイイダコにあたるものだ。チュクミ料理は韓国人から長らく愛され、チュクミは成人病防止などに効くタウリンが普通のタコやイカよりも多く含まれていることが分かっている。現地の健康テレビ番組などでも、大々的にチュクミ特集を報じられるなど、最近チュクミが健康によい料理として紹介されて人気が再熱している。チュクミ店に通う女性同士の客が増えたとのことだ。
またチュクミ料理は、チュクミプルコギやチュクミコチュジャン、チュクミサンギョプサル、チュクミエビなど、豊富なバリエーションがあるので何度食べても飽きない。また、この店のチュクミのタレは濃厚で、ゴマ油と砂糖とニンニクなどを混ぜた秘伝のソースをこだわっているという。甘辛いタレがよく染み込んだチュクミは、いわゆるご飯が進む味なので、食欲のない人が力を出したい時にピッタリのメニューである。おまけにビールやマッコリ、焼酎などすべてのお酒とも相性がいい。
ホンズ・チュクミ店の人気メニューを紹介すると、人気No.1はやはり基本メニューのチュクミである。王道のシンプルさで、チュクミにタレにしっかり染ませる具合が肝心だという。具材がじっくり煮えまで心待ちにしよう。5分くらいすれば色が変化し、甘辛い香りが漂ってくる。そして約10分が経過すれば、グツグツとタレが煮え立ち、チュクミの吸盤の部分が大きく開いてくる。そしてチュクミのタレが次第に蒸発してなくなってきたら、煮詰まる前にすばやく召し上がってほしい。
人気No.2はチュクミサムギョプサルである。これは基本のチュクミにプラスし、鍋全体にサムギョプサルを広げて、サムギョプサルとチュクミを包みながら食べるスタイルだ。注意したいのは、チュクミサムギョプのサムギョプは薄いので、通常の焼きサムギョプのようにカリカリになるまで焼かないのがポイントである。適度に火の通ったやわらかい状態で食べのが美味しいだろう。タレの染み込んだ弾力のあるチュクミと野菜を一緒に包み、脂分と菜モノをバランスよく食べるのがコツだ。
その他チュクミエビのメニューなども人気だ。基本のチュクミにエビを加え、バリエーションをつけてある。特に女性に特に人気だという。ここの店のエビのサイズは大きめでお得感もある。
これから秋冬にかけて寒くなる韓国旅行シーズンでは、辛くて健康になれるチュクミ料理でぜひ体を温めてほしい。
홍’s쭈꾸미(ホンズ・チュクミ)
住所:ソウル市 麻浦区(マポグ)合井洞(ハッチョンドン)412-31
電話:02-323-2789
営業時間:平日11:30~23:30 / 土日11:30~22:30
(15:00~17:00は休憩時間)
チュクミ価格:10,000ウォン~
地下鉄2・6号線ハッチョン(合井)駅5番出口を出て、すぐ前の通りを右へ。直進して並木道の通りの右側を歩けば右手にある。
おばあさんの手作りカルグクスの魅力
ハルモニ・カルグクス
日本でも韓国でも「素朴な家庭の味」これに勝る料理はない。鍾路(チョンノ)にある「ハルモニ(おばあさん)・カルグクス」は、韓国風うどん(カルグクス)の有名店として長年老舗の看板を守り続けてきた。韓国のカルグクスとは、小麦粉をこねて「カル(包丁)」で切った「グクス(麺)」を用いる料理のこと。このお店では、二代目ハルモニが先代からの伝統の味を引き継ぎ、昔ながら人の手で麺を作ることで有名だ。手作り麺は機械麺では絶対に出せないコシを麺に残すという。鐘路はカルグクスの激戦区としても有名だが、このエリアでも一際人気を呼んでいるのがこの店だ。ここのハルモニの味を一度食べると懐かしさの余り、故郷に帰りたくなるという。
鐘路エリアは、若者よりも元気なおじいさん、おばあさんが多く集まる地域だ。路地裏に一歩入れば食堂通りが並んでいる。知る人ぞ知る、地元の人が通う家庭的スタイルのお店が集結するエリアだ。この「ハルモニ・カルグクス」の周辺にも同じようなカルグクス専門店はたくさんあり、この細路地一帯を別称「カルグクス・キル(道)」と呼んでいる。
おばあさんの手作り麺の美味しさの秘密
ここの麺がなぜこれだけ美味しいのか。なぜこんなに心温まるあっさりスープの味が出るのか。それは長年お店を守るために苦楽を共にしてきた熟練スタッフが心を込めて毎日麺を打っているからだ。韓国の母たちの仕込み作業のおかげで家庭の味カルグクスが見事に実現している。力いっぱいコネて、コシのある麺にするための苦労は、一切惜しまない。スタッフらは毎日、腰の痛いのも忘れて、注文が入れば、麺をこねては打ち、叩いては伸ばし、ぶっきらぼうだけど適度な太さの麺にカットする。この単純作業を何十年も続けて来たおばさんたちの麺を扱う手つきは、一目見ても年季が入っている。見る者の目を奪うカルグクス手作りの技がこの店にはある。一人前の麺作りができるまで2年ほど修行が必要だということだ。
「手作りの不細工な麺」これは実に味がある。麺の美味しさは決して外見ではないということをこの「ハルモニ・カルグクス」は語ってくれている。他店の麺は、麺づくりの段階で、余計な手間を省こうとするため、どこもかしこも最近は麺を機械で切っている。機械か手製かは麺の太さを良く見れば分かる。均等か不揃いかで麺にかける愛情の違いが一目で分かるだろう店内の壁の張り紙にこんな文章がある。「私たちのお店はいつも伝統〝手製カルグクス〟にこだわってきました。これからも伝統の味を守るために努力いたします」とあり、 白菜や唐辛子はすべて国産を使用していること、さらには「キムチの使い回しはしません」など誓いの文句などが書かれている。鍾路の隠れた路地裏にあるカルグクス通りの名店「ハルモニ・カルグクス」はこれからも伝統の味を守り続ける。韓国の家庭の味を訊ね、懐かしくて暖かい鍾路おばあさんたちの手作りの味に触れてほしい。
할머니칼국수(ハルモニ・カルグクス)
住所:ソウル市 鍾路区(チョンノグ) 敦義洞(トンイドン)49-1
電話:02-744-9548
営業時間:11:00~20:00
カルグクス価格:4500ウォン
地下鉄1・3・5号線チョンノサンガ(鍾路3街)駅6番出口を出て、右に入る細い路地裏通り(自動車修理屋の横筋)の細路地へ入る。直進すると右手側にある。