Yuckyの大邱10味紀行 ⑦ ノンメギメウンタン
今回ご紹介するのは、ノンメギメウンタンです。ノンは田んぼ、メギはナマズ、メウンタンは辛いスープのことで、「田ナマズのピリ辛鍋」といったところでしょうか。自然豊かな大邱ならではのグルメの一つです。
さて、このナマズ鍋、大邱10味に選ばれてはいるのですが、大邱に住む私の友人(20~40代女性)は「ナマズはあまり食べる機会がない」と言います。ナマズのグロテスクなビジュアルが女性にはNGなのかもしれません。(私はカワイイと思うんですけど…)そして、ナマズといえば川魚。川魚はどうも泥臭いイメージがあって、大邱10味でなかったら、ナマズを食べようなんて思わなかったかもしれません。
また、大邱の友だちが「あまり食べない」のには、もう一つ理由が考えられます。それは「美味しいナマズは食べられる場所が限られる」ということです。探せば街中にも良いお店があるのかもしれませんが、未だ出逢えていません。
美味しいナマズを食べられるのは、達城郡の釜谷里(プゴンニ)にあるノンメギメウンタンマウルと呼ばれる村です。地下鉄2号線で大邱の中心部から30分、終点の汶陽(ムニャン)駅で降り、そこから車で数分のところにあります。
私が行ったのは、ちょうど紅葉が始まった頃でした。汶陽駅で降りる人は、ほとんどが中高年の登山客でした。村の奥の馬川(マチョン)山で登山を楽しみ、その帰りにナマズを食べる、というのがお決まりのコースになっています。タンパク質やビタミンが豊富なナマズが登山で疲れた身体を癒してくれるのだそうです。
汶陽駅の周りにはのどかな田園風景が広がり、数人のアジュンマが道端で地場の野菜を売っているだけで、食堂らしき建物はありません。駅前広場の大きな看板に、30軒ほどの食堂の名前と電話番号が書かれていて、電話をするとお店の人が車で迎えに来てくれます。
私たちが行ったのは、駅から一番近いところにあるサンジョンノンメギメウンタンというお店でした。お昼時はすごく混み合うというので、朝一番で行ったのに、もう数組の先客が来ていました。
オーダーしたのは、ノンメギメウンタン2万7千ウォンとメギチム(ナマズの蒸し煮)3万5千ウォン。おかずにはウリや葉野菜、落花生など自家栽培のお野菜が並び、メインの鍋にはたっぷりのニラやきのこ、ニンニク、唐辛子が入っていました。そして野菜の間からニッと笑った(ような)ナマズの顔が覗いています。
お鍋には昆布と大根からとった出汁が入っており、グツグツと煮えていくうちにナマズの旨味が溶けていきます。火が通ったところでお店のアジュンマがトングを持ってやってきて、慣れた手つきでナマズの中骨をスルスル~ッと抜いてくれました。
まずはスープを! 山椒がピリリと効いていて、臭みは全くありません。身は、淡泊でアッサリ、ピリ辛のスープで身体がポカポカ温まっていきます。
釜谷里のナマズの美味しさの秘密は、お店の周りの田んぼにあります。ナマズは水槽ではなく田んぼで養殖されているのです。釜谷里は蛇行して流れる洛東江(ナクトンガン)に三方を囲まれ、田んぼには洛東江の水が引いてあります。ナマズは川の水に含まれるプランクトンやエビやドジョウなどを食べて育つため栄養価が高く、糖尿病や貧血などにもよいといわれています。また広い田んぼを泳ぎまわるナマズは身がしまって弾力があります。スズキや鯛に似ているなと思いました。
この村のナマズの養殖は、1990年代、農家の新たな収入源として始められました。最初は食堂ではなく有料の釣り堀だったようです。釣り人たちが釣ったナマズを養殖場の横にあるビニールハウスで食べるようになってから、釣り堀は食堂へと移行しました。ナマズ鍋の評判はすぐに広がり、村の25世帯のうち14世帯が田畑を売って食堂を始めたといいます。そして今やノンメギメウンタン村を形成するに至ったのです。
食事の後、駅に向かって歩いている時、チョロチョロと水の音が聞こえました。この音に美味しさの秘密があったんだなあ。ノンメギメウンタンを食べる時、豊かな自然に感謝したいと思います。
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