Yuckyの大邱10味紀行 ⑦ ノンメギメウンタン

2015年08月26日

ノンメギメウンタン今回ご紹介するのは、ノンメギメウンタンです。ノンは田んぼ、メギはナマズ、メウンタンは辛いスープのことで、「田ナマズのピリ辛鍋」といったところでしょうか。自然豊かな大邱ならではのグルメの一つです。

さて、このナマズ鍋、大邱10味に選ばれてはいるのですが、大邱に住む私の友人(20~40代女性)は「ナマズはあまり食べる機会がない」と言います。ナマズのグロテスクなビジュアルが女性にはNGなのかもしれません。(私はカワイイと思うんですけど…)そして、ナマズといえば川魚。川魚はどうも泥臭いイメージがあって、大邱10味でなかったら、ナマズを食べようなんて思わなかったかもしれません。

また、大邱の友だちが「あまり食べない」のには、もう一つ理由が考えられます。それは「美味しいナマズは食べられる場所が限られる」ということです。探せば街中にも良いお店があるのかもしれませんが、未だ出逢えていません。
美味しいナマズを食べられるのは、達城郡の釜谷里(プゴンニ)にあるノンメギメウンタンマウルと呼ばれる村です。地下鉄2号線で大邱の中心部から30分、終点の汶陽(ムニャン)駅で降り、そこから車で数分のところにあります。

私が行ったのは、ちょうど紅葉が始まった頃でした。汶陽駅で降りる人は、ほとんどが中高年の登山客でした。村の奥の馬川(マチョン)山で登山を楽しみ、その帰りにナマズを食べる、というのがお決まりのコースになっています。タンパク質やビタミンが豊富なナマズが登山で疲れた身体を癒してくれるのだそうです。

汶陽駅の周りにはのどかな田園風景が広がり、数人のアジュンマが道端で地場の野菜を売っているだけで、食堂らしき建物はありません。駅前広場の大きな看板に、30軒ほどの食堂の名前と電話番号が書かれていて、電話をするとお店の人が車で迎えに来てくれます。

私たちが行ったのは、駅から一番近いところにあるサンジョンノンメギメウンタンというお店でした。お昼時はすごく混み合うというので、朝一番で行ったのに、もう数組の先客が来ていました。
オーダーしたのは、ノンメギメウンタン2万7千ウォンとメギチム(ナマズの蒸し煮)3万5千ウォン。おかずにはウリや葉野菜、落花生など自家栽培のお野菜が並び、メインの鍋にはたっぷりのニラやきのこ、ニンニク、唐辛子が入っていました。そして野菜の間からニッと笑った(ような)ナマズの顔が覗いています。

お鍋には昆布と大根からとった出汁が入っており、グツグツと煮えていくうちにナマズの旨味が溶けていきます。火が通ったところでお店のアジュンマがトングを持ってやってきて、慣れた手つきでナマズの中骨をスルスル~ッと抜いてくれました。

まずはスープを! 山椒がピリリと効いていて、臭みは全くありません。身は、淡泊でアッサリ、ピリ辛のスープで身体がポカポカ温まっていきます。

釜谷里のナマズの美味しさの秘密は、お店の周りの田んぼにあります。ナマズは水槽ではなく田んぼで養殖されているのです。釜谷里は蛇行して流れる洛東江(ナクトンガン)に三方を囲まれ、田んぼには洛東江の水が引いてあります。ナマズは川の水に含まれるプランクトンやエビやドジョウなどを食べて育つため栄養価が高く、糖尿病や貧血などにもよいといわれています。また広い田んぼを泳ぎまわるナマズは身がしまって弾力があります。スズキや鯛に似ているなと思いました。

この村のナマズの養殖は、1990年代、農家の新たな収入源として始められました。最初は食堂ではなく有料の釣り堀だったようです。釣り人たちが釣ったナマズを養殖場の横にあるビニールハウスで食べるようになってから、釣り堀は食堂へと移行しました。ナマズ鍋の評判はすぐに広がり、村の25世帯のうち14世帯が田畑を売って食堂を始めたといいます。そして今やノンメギメウンタン村を形成するに至ったのです。

食事の後、駅に向かって歩いている時、チョロチョロと水の音が聞こえました。この音に美味しさの秘密があったんだなあ。ノンメギメウンタンを食べる時、豊かな自然に感謝したいと思います。

Pocket

関連する記事はこちら

ヤキウドン

Yuckyの大邱10味紀行 ⑨ ヤキウドン

 この夏、久しぶりに大邱へ行って参りました。数か月ぶりの大邱で気が付いたのは、街中に和製韓国語が増えたこと。最近、日食(イルシッ)と呼ばれる日本食が人気のようで、お寿司屋さんの前に行列ができているのを見かけました。食堂の看板やメニューにはトンカツ(돈까스)、コロッケ(크로켓)、カ…続きを読む

003

若者が集うにぎやかな町 弘大(ホンデ) ベスト8

地下鉄2号線弘大入口(ホンデイック)の駅を出るとそこにはにぎやかな弘大の町が広がります。洋服店、アクセサリー店、ネイルアート店などがひしめき、明洞とはまた違った活気を持つ弘大の町。とにかく飲食店がいっぱいなのでおいしい店もたくさんあります。またアートの町でもあり、学生が制作したか…続きを読む

고기1

仁川に行ったら必ず寄るべき, グルメスポット

仁川に行ったら必ず寄るべき 仁川のグルメスポット 仁川市は鶏肉の辛味揚げ、辛だれ太麺、冷麺などで全国的に有名な都市だ。 その中から仁川市民おすすめのグルメスポットを紹介しよう。 チョンシルホンシル 「チョンシルホンシル」は仁川市における蕎麦の歴史と言っても過言ではない「レジェンド…続きを読む

312e59fd110f7190ed8f341991e93397-150x150

Yuckyの大邱10味紀行 ③ ぺたんこ餃子

Yuckyの大邱10味紀行 ③ ぺたんこ餃子  今回ご紹介するのは「ぺたんこ餃子(ナプチャッマンドゥ/납작만두)」、大邱の有名な名物の一つです。餃子の皮に、春雨とニラ、ネギ等の野菜を挟んで二つ折り(半月型)にしたもので、その名の通り平べったい餃子です。  一度蒸してから焼いてある…続きを読む

ムンティギ

Yuckyの大邱10味紀行 ⑥ ムンティギ

 大邱10味紀行、今回は「ムンティギ(뭉티기)」をご紹介したいと思います。 ムンティギとは、一言でいうと牛のお刺身のことで、韓国らしくニンニクと粉唐辛子の入ったゴマ油をつけていただきます。「ムントンムントン(뭉텅뭉텅、日本語ではサクサク)と切った肉の塊」という意味の言葉が、慶尚道…続きを読む

サンジュ食堂

Yuckyのうまうま大邱! ⑦ チュオタンの専門店サンジュ食堂

  「大邱の明洞」といわれる東城路(トンソンノ)は、オシャレなショップやレストランが建ち並ぶ賑やかな繁華街です。そんな東城路の一角に、大邱で最も古いチュオタン(ドジョウ汁)の専門店、サンジュ食堂があります。 初めて行った時、繁華街のビルの谷間に突然古い韓屋が現れ、本当に…続きを読む

1

韓国は今、クラフトビールの全盛時代

国産クラフトビールがホムスル(家飲み)市場の主役となっている。コンビニ各メーカーがクラフトビールの販売に積極的に乗り出し、販売量が急増している中、様々な製品を楽しもうとする若い世代の消費動向に合い、クラフトビールの人気は当分の間続くものと見られる。   ◇好材料が次々&…続きを読む

ソグレクッパ

Yuckyのうまうま大邱!⑱ 玄風の珍味・ソグレクッパ

 嬉しいことにここ数年、たくさんの日本人が大邱を訪れるようになりました。観光客が増えるにつれて、インスタ映えするオシャレなお店が次から次にできています。でも、大邱には有名な郷土料理の他に、昔から伝わるレアなグルメも潜んでいます。今回ご紹介する「ソグレクッパ」もその一つ。見栄えのし…続きを読む


東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02

  • travel agence