春の花が迎える世界遺産「水原華城」を歩く

2016年03月17日

「高貴な世界遺産と出会う最もバラエティーな韓国旅行」

春の花が迎える世界遺産「水原華城」を歩く

水原華城

訪問の年ロゴ

 旅行を他の言葉で表現するとすれば、それは「発見」だ。今まで知らなかった世界に足を踏み入れると、その地の歴史と情緒に遭遇し、その発見を通して感動というプレゼントまでもらえるのだから、旅行ほどに価値のあるテーマはない。舞台はソウルのすぐ南にある、水原だ。世界の人々が感心してやまないユネスコ世界遺産「水原華城」をはじめ、楽しいコンテンツが満載のため、韓国の歴史と伝統と五感で出会うバラエティーな韓国旅行には、水原ほど魅力的な観光地はない。
文/李相直記者

 

ソウルの中心地である鐘路からでも、関門であるソウル駅からでも、地下鉄1号線に乗って行けるため、面倒な旅行の準備も必要ない。目的地の水原駅までは約1時間。各駅停車の電車のドアが開くたびに変わる風景を楽しんでいるうちに、すでに1号線水原駅に到着している。

水原は、いわずと知れたユネスコ世界文化遺産「水原華城」がある所。水原を訪ねたらまず訪ねるべき名所だ。

目的地が水原華城であるだけに、その歴史を事前に知っておけば楽しみが倍増する。水原華城は、朝鮮王朝第22代正祖(チョンジョ)大王が、世継ぎとして冊封されながらも、政権闘争に巻き込まれて王位に就くことができないまま無念にも米びつの中で餓死した父・思悼世子(サドセジャ)の墓を水原に移す計画から出発する。

正祖大王がどんな人だったのか知りたい人は、歴史ドラマ「イ・サン」で俳優イ・ソジンが演じた「イ・サン」という人物を思い浮かべればよい。父の無念の死の後に、朝鮮の22代目の王となり、国民を敬う人本主義に基づいて、学術、文化、芸術史において大きな業績を残し、歴代の朝鮮王の中でも最も高い人格を持った王として尊敬される人物が、ここ水原華城を建てた正祖大王だ。

正祖が自分の父・思悼世子の墓を水原に移したのは、大きな計画を成し遂げるためだった。正祖は、自分の王権を強化するには新しい政治空間を作る必要があると考えた。彼の理想を実現するためには、忠実な臣下、軍事力、そしてこれらをうまく運営することができる資金という3つの条件が必要だったが、正祖は首都・漢陽(現在のソウル)では、この3つのすべてを得るのは難しく、新たな都市を建設するのが最善であるという結論に至った。

そのような目的を持った政治空間を、父である思悼世子の追悼事業と重ね、当時の水原府は大変理想的な場所だった。ソウルの南と接する交通の要所であり、商業活動のための都市である一方、思悼世子の眠る顯隆園が近くにあったためだ。

城の周囲は5744メートル、面積は130ヘクタールで、東西南北には蒼龍(チャンニョン)門、華西(ファソ)門、八達(パルタル)門、長安(チャンアン)門という4つの大きな門を造り、その間に5つの暗門、2つの水門で構成されている。東の地形は平地をなし、西は八達山にまたがる平山城の形で、軍事的防御機能と商業機能を共に持っており、単に巨大な威容を放つ城というだけではなく、機能を合理的で実用的な構造で設計し、ユネスコ世界遺産に指定された当時、東洋城郭の最高峰という賛辞を受けた。

つまりは、水原華城は正祖の孝心が築城の根本となり、新しい政治を実現するための政治的信念と、民のための新しい都市を作るという民本主義の結果だということができる。これでも長いというならば、朝鮮時代に施行された最初のニュータウンのランドマークといって間違いはない。

 

長安門の建築美に感動、「武芸24技」の迫力に感心

水原華城を耽美する旅行なら、水原市民には長安公園という名前でよく知られている華城の北門「長安門」から楽しもう。正面5間、側面2間の重層楼門で、水原華城の北門の役割をするが、巨大な城門である虹霓(ホンイェ)門の上に2階建ての楼閣を乗せ、外側に丸い甕城を持つ変わった形をしており、朝鮮時代のソウルの4大門とは異なり、甕城の形で戦争時に防御の役割をするために、このような独特な形となった。

歴史的な試練もあった。1950年、韓国戦争で楼閣が焼失したが、1978年、門楼が元の姿に復元され、道路の真ん中にぽつんと離れて復元された門楼も、2007年6月には、既存の水原華城の長安門との接続部分の復元工事を通し、正祖大王が朝鮮時代に築城した高さ7.4メートルの城として、その威容を取り戻した。

長安門

城の道が完成したおかげで、北門である長安門を通って華城行宮に向かうことができる。朝鮮時代の建築美に加え、色と漢字で方角を示す巨大な原色の旗が風にはためき、城を歩く旅行者はいつのまにか城を警備する朝鮮時代の軍士になったような錯覚にも陥る。

しばらく歩いて到着した行宮は、正祖大王が、父・思悼世子の墓がある顯隆園を参拝する時に滞在した所である。王となる運命にありながら、王になることができないまま28歳の若さで無念の死を遂げた父・思悼世子を偲んだ正祖大王は、思悼世子の墓を旧邑治であった花山(現在の京畿道華城市)に移して新都市である水原の華城を造り、それと同時に行宮を建てた。行宮は、王が休暇や地方を訪問する際に一時的に留まるところをいう。簡単にいえば、王が休暇や地方への出張をする時に、生活し、政治をするもう一つの宮廷で、今でいう政府機関の別館庁舎にあたる。

華城行宮は朝鮮時代に建立された数々の行宮の中で断然最高だ。景福宮の副宮という称号があるように、外観も規模も漢陽都城の縮小版だ。奉壽堂(ポンスダン)、長楽堂(チャンナクダン)」をはじめとする合計576間規模の巨大な韓屋が並んでいるが、ただ華やかな建物を建てたにとどまるものではない。正祖大王は、1年に1度、思悼世子の墓を参拝するために訪れたのはもちろんのこと、思悼世子の妻であり、自分の母親である敬懿王后(恵慶宮洪氏)の還暦祝いや敬老祝いを漢陽の景福宮ではなく、ここ華城行宮で開くほどに、父・思悼世子に対する切ないまでの親孝行を行ったのである。都城である漢陽に巨大な景福宮がありながら、なぜ水原にもう一つ宮廷である行宮を建てたのかという疑問も、正祖大王の家門の悲しい歴史を知れば、このように自然に解けてしまう。

ユネスコ世界遺産である水原華城を楽しむなら、常設公演である「武芸24技」の実演も必須コースだ。武芸24技は正祖大王の命を受けた朝鮮最高の剣客であり武芸家である白東脩(ペク・ドンス)が、朝鮮の伝統武芸をもとに、中国大陸と日本の優れた武芸を収容して作成された武芸書「武芸図譜通志」に収録された武芸で、正祖大王当時、王宮最精鋭王宮護衛部隊であった壯勇營(ジャンヨンヨウン)が修めた24の実戦武芸だ。華城行宮内の新豊楼(シンプンル)で毎週火〜日曜日、11時に豪快なデモンストレーションが繰り広げられる。朝鮮時代の王宮武士が当時の鎧や衣装をまとい、実際の剣や弓を使って、一糸乱れぬ緊張感あふれる武術を披露し、歴史ドラマに出てくるような戦闘シーンを目の前で楽しめる感動があふれてくる。

武芸24技

家族と一緒に気軽に水原華城を回りたい旅行者ならば、水原華城の音声ガイドの説明を聞きながら華城の主要観光地を巡る観光列車「華城列車」が便利だ。列車の前部は正祖大王の権威を象徴する龍の頭が飾られ、客車も正祖大王が乗っていた輿を形象化しており、正祖大王になりきって水原華城のあちこちを探索できる。運行は、雪と雨の日を除く10時から17時50分まで年中無休で、八達山(城神祠)‐華西門‐長安公園‐長安門‐華虹門‐練武台の3.2キロを走る。所要時間は片道30分で、終点と起点である八達山と練武台で搭乗する。料金は大人1500ウォン。

華城列車

 

工房通りでロマン散歩、トンダク通りではB級グルメも

水原の魅力を満喫するには、水原華城だけを見て帰ってしまってはあまりにも惜しい。ソウルとはまた違ったテイストの個性的な名所が水原華城から遠くないところに続いており、思わず足を伸ばしてしまう。

華城行宮からそう遠くない行宮道の工房通りは歩いて楽しむには最適なスポットだ。華城行宮から八達門に至る約420mの通りで、工芸体験イベントや多彩な食べ物の饗宴で活気があふれている。16ヵ所の美しい行宮道工房と48ヵ所の華城行宮の食堂などが集まっており、体験とグルメを同時に楽しめる。また、工房通りでは3〜10月の第4土曜日に工芸体験、試食コーナーやグルメイベント、公演などを行う「美しい行宮道祭り」も開かれるため、ぜひ憶えておきたい。

行宮洞工房通り

水原華城の華虹門と華城博物館の間の水原川を渡ると現れる行宮洞壁画通りも工房通りに劣らないアート的情緒に満ちている。壁画通りは、世界文化遺産にふさわしい文化と芸術が息づく街をつくるために、作家や住民、ボランティアが一緒に完成した通りで、くねくねと続く路地ごとに描かれた素朴な韓国の日常を描いた壁画が並んでおり、我知らずカメラのシャッターを押してしまう。

韓国の伝統的な食文化を体験して楽しむ施設も水原で会うことができる。水原八達区に位置する「伝統食生活体験館」(www.swtf.or.kr)は、韓国で唯一の伝統食生活の教育・研究のための施設で、水原華城築城の頃から伝わる朝鮮時代の伝統料理や宮廷料理を学び、体験することができる。

体験プログラムも盛りだくさんだ。宮廷料理と自然に優しい料理の2つのカテゴリで、外国人観光客を対象に「宮中料理体験」プログラムと「自然食づくり」プログラムを随時運営している。

韓国の重要無形文化財第38号に指定された「朝鮮王朝宮中料理」を実際に作って味わうことができるため、水原ならではの貴重な体験を探している人であれば至極の選択となる。体験は2時間コース(1万5千ウォン)と3時間コース(2万ウォン)があり、少なくとも1ヵ月前の予約が必要。予約・問い合わせは、+82-31-247-3764(韓国語対応)。

-統食生活--館

伝統食生活体験館のすぐ隣には、韓国伝統の礼節と文化を体験する「礼節教育館(suwonyejeol.or.kr)」がある。韓服体験、茶礼、茶道、伝統遊びなど、韓国の伝統文化を専門講師の指導を通して常時体験することができるため、水原華城の感性を共有する体験を探している人にぴったりだ。

水原の味も欠かせない。水原といえば、断然高級料理である水原カルビが代表格だが、最近、水原カルビと同じくらい人気が高いのがトンダク(鶏の丸焼き)だ。水原華城博物館の入り口から水原川に沿って伸びる「トンダク通り」があり、韓国式フライドチキンなどの鶏料理を味わうことができ、最近、観光客の観光スポットとして人気が高い。トンダク通りという名前の通り、路地に入ると20件以上のトンダクの店が集まっているが、1960年代から続く伝統的な方法で鶏を焼いて、脂っこくないサクサク感が、最近のフライドチキンとはまた違った味を出しており、多くの美食家が訪れる。ソウル市内のフライドチキン専門店の1.5倍以上にもなるボリュームたっぷりの量も特徴で、砂肝や鶏の足の料理までサービスとして提供される。トンダクの値段は1羽1万3千ウォン前後。

水原トンダク通り

水原の伝統的な市場も見逃せない。水原の代表的な在来市場である八達門市場と隣接した榮洞(ヨンドン)市場は、世界文化遺産「華城」と共に210年あまりの歴史と伝統が息づくところ。店300件、露店100件の、衣類、雑貨、薬局、病院、アクセサリーなどの店舗が入店しており、スンデ炒め、豚足、ククス、餃子など韓国在来市場ならではの安くておいしいグルメがいっぱいで、水原旅行の軽い一食やショッピングを一度に解決するのにぴったりだ。

■ 取材協力:水原市庁(www.suwon.go.kr

Information

水原までは、ソウル地下鉄1号線を利用し、水原駅で下車すればよい。所要時間はソウル駅出発目安約1時間。水原華城観光ポイントである長安門、華城行宮、八達門などには、水原駅から多数のバス路線が運行している。観覧料は、水原華城は大人1000ウォン、華城行宮は1500ウォンで、水原華城と華城行宮、水原華城博物館、水原博物館をセットで利用できる統合観覧券(3500ウォン)も発売中。一方、水原市は、今年2016年度を「水原華城訪問の年」に指定し、毎月、国内外の観光客のための特別プログラムやイベントを進行中。詳細なイベントのスケジュールは、水原華城訪問の年の公式サイト(2016.suwon.go.kr)で確認できる。

 

「水原華城訪問の年」年間スケジュール

今年2016年は水原市が指定した「水原華城訪問の年」で、多彩なイベントが催される。一年間のスケジュールを紹介しよう。

 

KBS開かれた音楽会

日程: 2016. 4. 22(金)18:00
場所: 華城行宮広場

 

水原演劇祭り

日程: 2016. 5.1 (金)~5. 5 (火)5日間
場所: 華城行宮広場、広橋湖水公園、水原SKアトリウム、KBS水原アートホール
プログラム:海外作品、国内作品、市民フリンジ、市民喜劇朗読、大学演劇フェスティバル

2016アジアモデルフェスティバルin水原

日程: 2016. 5. 19(木)~5. 21(土)3日間
場所: 水原室内体育
参加国: アジア25ヵ国

水原K-POPスーパーコンサート

日程: 2016. 6. 17(金)~6. 18(土)20:00 2日間
場所: 水原ワールドカップ競技場内メイン競技場

水原訪問の年

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