秋を満喫したいなら江原道楊口・東海・ 寧越(1)
「天高く馬肥ゆる秋」という言い回しが自然と思い浮かぶ、そんな爽やか季節となりました。今年は新型コロナのため自由に行きたいところへと行けないものの、少し郊外に出かけて気分転換をする時間も必要ではないでしょうか。
ポストコロナにむけて、韓国を代表する観光地といえば江原道(カンウォンド)があげられますが、そんな江原道の中でもまだあまり知られていない穴場といえる楊口(ヤング)郡・ 東海(トンヘ)市・ 寧越(ヨンウォル)郡を訪れてみました。そこには分断国家として歴史の重みを持ちつつ、平和統一を願う人たち、また漁業の町として栄えた歴史を訪問客に伝える姿、韓半島の縮小版が出迎えてくれる姿など、それぞれ個性豊かで、美しい出会いがありました。
文・写真 大成直子
軍隊の町のイメージからスポーツ大会のメッカの町へ・・・ヤング郡
ソウルから車で約3時間。北朝鮮との軍事境界線「DMZ」がある中部山岳地帯の楊口郡へと向かいます。1945年に日本が戦争に敗れ、朝鮮半島が米ソにより38度線で分割されると、ここ楊口郡はソ連軍政のものとなったのち、1948年の朝鮮民主義人民共和国(北朝鮮)政府樹立を経て、北の領土となりました。その後韓国戦争が終わり、韓国領土となりましたが、北朝鮮と陸つながりで一番近く(50km)場所です。楊口に入ると道路の表記には金剛山路が見えますが、これは北側にある絶景の山・金剛山(クムガンサン)へと繋ぐ道路のことで、以前は自由に行き来できた山を懐かしむ名前となっていました。
やはり最北端ということから、軍隊が多い、軍人が多いというイメージが強かった場所ですが、大型のテニス場、青少年プール施設、総合運動場などスポーツ関連施設。実は全国から各スポーツ大会の開催や合宿を目的に1ヶ月に2万~3万名が訪問しているそう。現在は新型コロナで利用客が減少したものの、訪問した日も車椅子のバスケットボール大会が開催されていて500名が利用しているとのことでした。軍部隊に囲まれた田舎の町というイメージから、実際訪問してみると施設が充実したスポーツ都市でした。
そんなスポーツ体験とともに安全保障観光(安保観光)としても有名ですが、郡内にある亥安(ヘアン)面は韓国で唯一南北の統制域内にある居住地域で、現在も6つの集落に470世帯1,700人余りが居住しています。大岩山をはじめとするこの一帯は韓国戦争当時、パンチボウル戦や兜率山戦、カチル峰戦があった激戦地で、幾つもの戦跡碑が建てられており、当時の状況を現在に伝えています。パンチボウル村とも呼ばれており、標高400~500メートルの高い地帯に発達した盆地で、地形がまるでフルーツポンチ(Punch)の器(Bowl)のようであったため、米軍が呼び出してこの名前が広く使われるようになっそう。
戦時中は激戦区だったパンチボウルと大岩山は休戦後、民間の出入りが統制されたため自然環境がそのまま残り、天然記念物のレノックをはじめ、イヌムレスズメ、ハナブサソウなど、多くの貴重な動植物が生息しています。そこで、この亥安面一帯を郡立庭園として整備をはじめ、国立庭園として開発していきながら平和と自然を伝える自然体験庭園としてその姿を残していく計画だそうです。
軍事境界線から1キロメートル南側の地点にある加七峰(カチルボン)の尾根に位置する乙女展望台、南北統一に備えて韓国国民に北朝鮮の実状に対する理解の幅を広げ、統一教育の場として活用される統一館、北韓による軍事境界線以南への新たな浸透方法として模索され掘削されたトンネルである第4トンネルなどがあります。今回は新型コロナと豚コレラにより、入場が難しかったものの、是非次の機会には直接トンネルなど歩いてみたくなりました。
北朝鮮から攻めくる際には爆破して、道路を防ぐ役目をする建物。
地域の特産品「シレギ(大根の葉の乾燥)」ご飯定食
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