芸術の秋、食欲の秋、そして…祭りの秋!
韓国の地方へ旅するなら、その土地の祭りに合せて行くことをお勧めしたい。その地方ならではの魅力が祭りに凝縮されているからだ。その土地ならではの特徴をテーマに観光客を呼ぼうと楽しいコンテンツを準備するため、祭りの会場に訪ねさえすれば、見て、知って、食べて、体験して、その地方を充分に楽しめる。特に祭り会場へのシャトルバスや通訳の配置など、外国人にやさしいサービスも充実しているため、地方観光へのハードルも一段低くなる。韓国の祭りのシーズンは秋。秋祭りの中から代表的なものを紹介しよう。
文/町野山宏記者
チャラ島国際ジャズフェスティバル
2017年10月20日~22日
http://www.jarasumjazz.com/the14th
北漢江に浮かぶ「チャラ島」という島がある。スッポンの形に似ているということでその名が付けられたこの島は、昔は雨が降ると浸水してしまう島だったが、ある公務員と公演企画者の提案によって、韓国のジャズフェスティバルのメッカとなった。今年で14回目を迎える今回の祭りは、ベーシストのアビシャイ・コーエンやキューバのピアニストであるチューチョ・バルデス&ゴンサロ・ルバルカバなどが来韓、国内外の有名ミュージシャンの演奏と共に、若手ミュージシャンを発掘する場ともなっている。
なんといっても自然の中でジャズに浸ることができるのが最大の魅力だ。チャラ島はキャンプ場としても有名で、キャンプをしながらジャズを楽しむこともできる。もちろん、トイレや休憩室、飲食店などのインフラも整っており、シャトルバスの運営もしている。また、ジャズを聴くだけではなく、家族連れのための「キッズジャズプロジェクト」などの参加型プログラムも行われ、飽きることなく楽しめる。
ジャズフェスティバルだからといって、音楽だけを楽しむのは惜しい。肌寒い秋の夜に体を芯から温めてくれるベンショー(ホットワイン)や、毎年新しい味が発売される「チャラ島ジャズマッコリ、マッククスなどのグルメもぜひ味わいたい。
江景発酵塩辛祭り
2017年10月18日~22日
韓国の代表的な食品・キムチをはじめとするさまざまな料理に使われるのが、韓国語で「チョッカル」と呼ばれる塩辛。塩辛は、料理の味を左右する重要な要素の一つだ。その塩辛で有名なのが忠清南道・論山(ノンサン)市の江景(カンギョン)だ。江景は伝統的な製法にこだわった塩辛作りをしていることで知られ、初冬のキムジャン(1年のキムチを漬ける行事)シーズンになると、江景は塩辛を買いに来る人たちでいっぱいになる。
そんな江景で行われるのが「江景発酵塩辛祭り」だ。いろいろな塩辛を味見したり、塩辛を自分で作る体験コーナーも準備されている。塩辛の種類も、カキや、シジミ、アミなどさまざまで、好みの味の塩辛を食べて、つくる体験ができる。また江景のおいしい塩辛を使ってキムチを漬ける体験もできる。キムチ漬け体験は外国人も参加できるが、江景の塩辛を海外に広報するために、外国人のための体験コーナーが別途準備されており、格別なサービスを受けられる。自分が作った塩辛やキムチは、その場で味見するだけでなく、持ち帰ることができるので、塩辛の本場・江景を訪ねた記念としてのお土産もできて一石二鳥だ。
体験プログラムはその他にも、エビのつかみ取りもあり、捕ったエビはその場で焼いて食べられる。また、塩辛おにぎり作り、塩辛キンパプ作り、願い事の流し舟など、さまざまなプログラムが楽しめる。塩辛を使った郷土料理も会場で食べられる。
塩辛作りやキムチ作りを体験しなくても、販売コーナーでは通常から30~40%割引された価格で購入できるため、おいしい塩辛を買いたいなら絶対に見逃せない。
晋州南江流灯祭り
2017年10月1日~15日
晋州(チンジュ)の中心を流れる南江(ナムガン)に灯篭を浮かべる行事は、韓国最大の受難期の一つといえる「壬辰倭乱(文禄・慶長の役)」に端を発している。1592年、金時敏(キム・シミン)将軍は3800の兵を率いて晋州城に攻め込む2万の日本の軍勢に立ち向かい、勝利を喫するが、その時に、南江を渡ろうとする敵軍を制止したのは、南江に浮かべた船だった。また、灯篭は遠く離れた家族に無事を知らせる通信手段としても使われた。そのような「晋州大捷(チンジュテチョク)」を記念し、戦乱で亡くなった多くの兵たちの魂を慰めるために毎年行なわれているのが「晋州南江流灯祭り」だ。
何よりも、南江に浮かぶ灯篭が見ものだ。晋州城の代表的な建物である矗石楼(チュクソクル)を背景に、さまざまなテーマの数多くの灯篭が浮かび、夜になると幻想的な風景を演出する。それだけでも美しいが、10月1日には水上で花火が打ち上げられ、まさに夢のような光景が繰り広げられる。
見るだけでなく、体験するプログラムも楽しい。願い事を託した小さな灯篭を浮かべるプログラムや、願い事を書いた灯篭でトンネルをつくるプログラムなどが行なわれ、とっておきの思い出が残せる。
南江の灯篭も美しいが、その背景となる晋州城も見所がたっぷりの城だ。特に有名なのが、日本の武将を誘って、その武将を抱きかかえたまま南江に身を投げて国に対する忠誠を尽くした女性・論介(ノンゲ)の逸話だ。論介が身を投げた岩が残っており、詞堂が建てられている。
晋州といえば晋州ビビンバも有名だ。全州ビビンバのような華やかさはないものの、素朴ながらユッケの旨みがたっぷりの味が絶品だ。
思い出の光州7080忠壮祭り
2017年10月18日~22日
光州は芸術の都市として知られており「光州ビエンナーレ」も行われる。また、80年代に起こった民主化運動の舞台でもある。「7080世代」と呼ばれる、70~80年代に大学生だった世代の韓国人にとって、光州は青春を象徴する都市だといってもよい。「思い出の光州7080忠壮祭り」は、「7080」の人たちはもちろん、復古ブームでその時代の関心を持っている若い人たちの興味もひきつける祭りだ。
祭りの期間、メイン会場となる忠壮路(チュンジャンノ)、錦南路(クムナムロ)は、7080の時代にタイムスリップする。一番の目玉プログラムは、ストリートパレード。1万人の出演者たちがチームごとにパレードを行い、観客たちを楽しませる。パレードの賞金は、総額3千万ウォン。光州の民主化運動をテーマにしたパフォーマンスや、昔の学生服に身を包んだ女子高生の姿、農機具を手にした農民の姿など、楽しく凝ったパフォーマンスが見られる。光州に住む外国人たちもパレードに参加して祭りを盛り上げる。
パレードの後は光州の代表的な無形文化財である「光州漆石コサウム遊び」が行われる。「コ」と呼ばれるわらで編んだみこしを大勢の人が担ぎ、その上に指揮者が乗って、その「コ」同士をぶつけあって勝負を競うという民俗行事だ。大声で掛け声を上げて押し合う勇壮な行事で祭りはクライマックスを迎える。
光州劇場の周辺では「思い出のテーマ通り」がつくられ、映画上映、学生服試着、自転車乗りなど、懐かしのアイテムが楽しめるだけでなく、昔の食堂、宝石店、薬屋、郵便局、学校、文房具屋、ゲームセンター、美容室などが再現される。また、テーマ通りでは1日に4回、「弁士劇」と呼ばれる演劇も行われる。
馬山カゴパ菊花祭り
2017年10月23日~11月1日
http://festival.changwon.go.kr/gagopa/
今の昌原(チャンウォン)市は昔の馬山(マサン)市と鎮海(チネ)市が合併してできた、慶尚南道の道庁所在地だ。そのうちの元・馬山市は暖かい気候と地質、優れた技術の普及などによって、韓国を代表する菊の産地として知られる。馬山港では毎年10月に「馬山カゴパ菊花祭り」が行われ、港は菊でいっぱいになる。「カゴパ」とは「行きたい」という意味の韓国語だ。
会場となる馬山港の第1埠頭には10万点もの色とりどりの菊の花が咲き、市街地の全域には69万点の花が咲き乱れる。会場には韓国の農村風景やアニメのキャラクター、世界の名所などをかたどった菊の作品が並び、観光客たちはその前で記念撮影に忙しい。
菊の作品の中でも一番の見所は、毎年世界記録を更新してギネスブックに搭載されている菊の鉢で、「千香旅心(チョニャンヨシム)」という作品。一株に1500輪を越す花を咲かせた大作で、昨年は1515輪を記録した。この「千香旅心」も祭り会場で見学できる、この花の前で願い事をすれば叶うともいわれている。
菊の花を見るだけでも満足できるが、「花より団子」という人には菊マッコリをお勧めしたい。また、菊のいい香りが楽しめる菊花茶など、菊を使った各種料理も祭り会場で楽しめる。
夜になれば会場はライトアップされて、昼間とはまた違う幻想の世界に浸ることができ、海上花火ショーも行われるため、天と地の両方の花が鑑賞できる。
菊の花だけでなく、馬山港ではクルーザーやヨット、カヤックに乗って馬山湾を回る海洋レジャー体験もできる。無料で体験でき、人気が高いため、事前に申し込んでおくことをおすすめする。
淳昌醤類祭り
2017年10月20日~10月22日
http://www.jangfestival.co.kr/
韓国料理で欠かせない調味料の一つがコチュジャン(唐辛子味噌)だ。海外旅行をする時に多くの韓国人がコチュジャンを持っていくといわれるほど韓国の味を代表する調味料だ。ビビンバをはじめ、さまざまな料理で使われるコチュジャンだが、「コチュジャン」といったら「淳昌(スンチャン)コチュジャン」というほど、淳昌はコチュジャンの代名詞として知られる。長寿地域としても有名な全羅北道の淳昌郡は、コチュジャンだけでなく、「テンジャン(味噌)」、「カンジャン(醤油)」などを含めた「醤類の聖地」と呼ばれる。
淳昌で毎年開かれる「淳昌醤類祭り」は、淳昌の醤類を使った大量の料理作りが話題を呼んでいる。昨年2016年は、2016人分のトッポッキと、おにぎりによる巨大モザイクを、観光客と地元の住民が力を合せてつくった。大勢の人たちが一緒に作って、一緒に食べる楽しみが味わえるため、ぜひ参加してみよう。
そのほか、コチュジャン作りやトッポッキ作り、韓国式の納豆である清麹醤(チョングッチャン)クッキー作りなどの体験プログラムも楽しめる。コチュジャン料理コンテスト、王へのコチュジャン献上行列なども行われ、見所も満載だ。もちろん、その場で食べるだけでなく、淳昌の醤類を展示販売しているため、おいしかったらぜひ、お土産に買って帰ろう。
他にもある! 韓国有望祭り
大蔵経世界文化祝典
2017年10月20日~11月5日
高麗時代の1236年、モンゴルの襲来に悩まされた高宗は、仏教の聖典を刷る木版である大蔵経の製作を命じた。15年の歳月をかけて完成した81258枚に及ぶ大蔵経の版木は、現在、陜川郡の海印寺(ヘインサ)に保管されている。
大蔵経世界文化祝典は、この高麗八万大蔵経の実物を見られる貴重な機会だ。そのほか体験や展示が、メイン会場である記録文化テーマパークで行われる。大蔵経という難しいテーマを立体映像で楽しみながら理解できるのが魅力だ。
江陵コーヒー祭り
2017年10月6日~9日
江原道の代表的な観光地・江陵は、コーヒー第1世代といわれる名人の店やコーヒー工場、コーヒー博物館などがあり、有名店がしのぎを削るコーヒー通りも有名だ。江陵で開催されるコーヒー祭りも今年で9回目を迎える。
祭りでは、100人100味バリスタパフォーマンス、マグカップなどの賞品がもらえるスタンプラリー、世界各国のコーヒーが味わえる「世界は薫り高い」イベント、露天カフェなど、コーヒー好きにはたまらないイベントが目白押しだ。
瑞山海美邑城歴史体験祭り
2017年10月6日~8日
忠清南道の瑞山市(ソサンシ)にある海美邑城(ヘミウプソン)は、1491年に築城され、韓国で最も保存状態がよい石城だ。勇壮な石造りの壁と門が見るものを圧倒する。城内では普段からさまざまな体験ができるようになっているが、「瑞山海美邑城歴史体験祭り」の期間中は、さらに多彩な体験と見所でいっぱいだ。朝鮮3代王である太宗大王の講武行列を再現した行事をはじめ、伝統文化や民俗遊戯体験、民俗公演、文化公演など、さまざまなプログラムが楽しめる。
横城韓牛祭り
2017年10月19日~23日
江原道の山の中にある横城郡は、上質の韓牛で知られる。横城の韓牛のおいしさを知ってもらおうと行なわれているのが横城韓牛祭りだ。
おいしい韓牛を試食できるのはもちろん、韓牛に関連した食品の紹介や販売なども行なわれ、韓牛や特産物に合う地域のお酒などにも出会える。体験プログラムもあり、牛で畑を耕したり牛に干草をあげたりする農耕文化の体験場や、競売の体験、韓国の田舎の文化を体験するイベントも行なわれる。
新羅音祭りエミレ展
2017年10月13日~15日
新羅の都・慶州にある「聖徳大王神鐘」は、「エミレ鐘」とも呼ばれ、鐘がつくられた時の悲話が伝えられている。「世界で最も美しい音がする」といわれるこの鐘は、保存のために鳴らさないことになったが、その音と形の美しさを伝えようとする「新羅音祭りエミレ展」が行われている。
テーマ館の「エミレ博物館」をはじめ、新羅の文化体験、新羅時代の「看灯会」の再現、ヒーリングコンサートなどが行われ、新羅の時代へのタイムスリップが楽しめる。
東莱邑城歴史祭り
2017年10月20日~22日
http://www.dongnae.go.kr/festival/
釜山を代表するグルメの一つ、東莱(トンネ)パジョンで有名な東莱区にはもう一つの見所がある。三韓時代から築造されたといわれ、文禄慶長の役での激戦地となった東莱邑城だ。「東莱邑城歴史祭り」では、東莱府使行列や東莱城の戦いの場面がリアルに再現される。数千人が参加する東莱綱引きも見ものだ。東莱邑城には城を回る散策路も設けられ、スタンプラリーも行われる。また、東莱パジョンを焼く姿を目の前で見ながらパジョンに舌鼓を打つのも乙な楽しみ方だ。
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