ソウル駅高架が車道から歩道へ~ソウル路7017を歩く

2017年07月12日

IMG_6029

5月20日、ソウル路7017がオープンした。ソウル駅を見下ろして線路の両側を40年間にわたってつないできた高架道路が市民の憩いの場として生まれ変わったのだ。空中歩道となった高架道路の愛称は「ソウル路7017」。「70」は高架道路が建設された1970年を意味し、「17」は生まれ変わった2017年と、ソウル路によってつくられる17の道を意味する。話題を呼んでいるソウル路7017とその周辺の興味深いスポットを紹介しよう。

文/町野山宏記者

 

高架道路が建設されたのは1970年。多くの工事を行って「ブルドーザー」の異名をとる金玄玉(キム・ヒョノク)・ソウル市長の号令によって始まった事業だった。金市長は自身が主導した臥牛アパートの崩壊事件の責任をとって辞職したため参加できなかったが、高架道路の竣工式には当時の朴正熙大統領夫妻がテープカットを行なった。この事業がどれほどの注目を得ていたかが分かる。

それから数十年、道路の老朽化による問題が出始めていた。1985年にはすでに崩壊の危険性が提起され、2006年には安全等級がD等級という判定を受けた。撤去か、再建かの中で、朴元淳(パク・ウォンスン)市長の選択は「再活用」だった。紆余曲折の後に、2015年12月13日、道路は閉鎖され、補修工事が始まった。

今回の高架道路リモデリングの設計をしたのは、オランダの建築事務所MVRDVのヴィニー・マース氏。設計の公募で当選した彼の設計案は、「ソウル樹木園(The Seoul Arboretum)」。高架道路の上に円形の植木鉢を設置し、韓国に自生するさまざまな木を植えるというものだ。最終的に、645の植木鉢に228種、2万4085本の木が植えられた空中歩道となった。

また植木鉢だけでなく、各種の施設も設置されている。案内所や「ソウルロショップ」、「木蓮カフェ」、「あじさい食パン」や「バラキンパプ」などのテイクアウト食堂、公演場、子供用トランポリンなどがある。旧ソウル駅舎をリニューアルした文化空間「文化駅ソウル284」の前に降りる階段をつくる計画は霧散してしまったが、その位置に7日間だけ、廃棄された靴で作られたオブジェ「シューズ・ツリー」が設置され、話題を呼んだ。

満を持してオープンした5月20日、本格的な夏が到来したかのような暑い日差しが照りつけたにもかかわらず、10万人を越える市民が訪れた。ソウル路は24時間開放しており、夜にはLEDの照明が神秘的な光景を演出した。

 

ソウル路の周辺にも隠れた見所がたくさん

ソウル路7017により、高架道路の周辺の、これまであまり知られていなかったスポットが注目を浴び始めている。ソウルの街歩きがブームとなっており、地域にまつわる歴史や、近隣の住民しか知らないような話を聞きながら歩くツアーも頻繁に行なわれている。その中で代表的なスポットを紹介しよう。

まずは一番近い「文化駅ソウル284」から紹介しよう。前述したようにここは1925年に建てられたソウル駅舎だった。設計は塚本靖で、アムステルダム中央駅をモデルにしたといわれている。2011年に複合文化空間としてオープンし、昔のインテリアを残したまま展示などを行なう場所として使われている。

ソウル駅の北にある線路を渡る橋は塩川橋(ヨムチョンギョ)。この橋のたもとには70年代から営業をしているという靴屋通りがある。昔、使い古した米軍のブーツを修繕して売ったのが始まりで、ソウル一の靴屋通りだった。最近ではさまざまな広報のためのイベントを行なっている地域だ。

塩川橋から西の方に、レンガ造りの聖堂が立っているの見えるだろう。丘の上に立つこの薬峴(ヤッキョン)聖堂は、ソウルで最初に建てられた西洋式の聖堂だ。典型的なゴシック様式の聖堂で、結婚式のメッカ。ドラマでおなじみのロケ地でもある。残念ながら火事で焼け、2000年に再建されたものだが、その美しさはそのまま残されている。

薬峴聖堂のすぐ近くには、斜面に沿って階段状に建てられた古いアパートがある。薬峴聖堂の経済活動のためのアパートで「聖ヨセフアパート」と名づけられている。他では見ることができない風景であるため、多くの人がカメラを持って訪れる。

忠正路駅の近くには、9角形の小塔が印象的なレンガ造りの洋館がある。現在は「忠正閣」というイタリアンレストランになっているが、もとは漢城電気会社のエンジニアであるマクレランが住んでいたといわれている。

この近くには韓国最初のアパートである「忠正(チュンジョン)アパート」もある。暖房用の煙突がそびえ立つ中庭の不思議な空間は多くの人をひきつける。朝鮮戦争の時には北の軍に占領され、首都奪還後は国連専用のホテルになるなど、紆余曲折の多い歴史も興味深い建物だ。

この他にも韓国の近現代史を生き抜いてきた多くの場所があり、それらを巡るウォーキングツアーも催されている。(http://japanese.visitseoul.net

seoullo

Pocket

関連する記事はこちら

메인_한국민속촌

朝鮮時代にタイムスリップ! 韓国民俗村

韓国の伝統美を五感で楽しむ伝統テーマパーク ヴィンテージな風景に出会うと、過去にタイムスリップしたような不思議な気分になる。韓国民俗村は韓国の伝統と文化を一ヵ所で見ることができる、まさにヴィンテージな野外民俗博物館。1974年にオープンしてからほぼ40年になる今でも韓国を代表する…続きを読む

Eワールド桜祭り

カラフルな街・大邱をカラフルに楽しむ、2016大邱の祭り9選

 ここ数年、ソウルや済州に偏っていた観光客の足が少しずつ大邱に向き始めている。「それでは大邱はどんな都市?」という質問に対しては、人によってさまざまな答えが返ってくる。それを一言でいい表すとすれば、大邱市のキャッチフレーズとなっている「カラフル大邱」だ。カラフルな魅力を持った大邱…続きを読む

IMG_2852

[特別インタビュー] 元・外交通商部長官 柳明桓 共通の歴史文化を通じた 観光交流で未来を開こう

共通の歴史文化を通じた 観光交流で未来を開こう 柳明桓元・外交通商部長官 特別インタビュー   韓国の李洪九元首相や福田康夫前総理等とともに、日本と韓国の元老たちによる韓日関係改善のために作られた「韓日賢人会議」のメンバーであり、駐日本大使も歴任した元外交通商部長官(外…続きを読む

20200606_145719

私だけの秘密にしたいヒーリング聖地「江原道」 ~1 襄陽郡 ~

春の暖かい気温や美しく咲く花を見ながらも自由に外に出かけられなかった時間を過ごし、やっと少しずつ日常が戻ってきた6月。今まで経験したことがなかった感染病に対するストレスから開放されるのはやはり、大自然の光と海、そして空気だといえます。 そんな大自然を一番体感できる場所、江原道(カ…続きを読む

扶餘郡守

<インタビュー> 忠清南道 扶餘郡守 李龍雨

百済の都、扶餘郡を 歴史・文化・観光・エコが 調和した観光地に   Interview 忠清南道 扶餘郡守 李龍雨    1500年前の百済の都が世界遺産に登録されることによって、世界の注目を浴びている。忠清南道と全羅北道にまたがる遺跡地区の8ヵ遺跡のうち、4…続きを読む

경상남도_전체메인

春がこの上なく似合う場所、韓国・慶尚南道

山あり海ありの自然絶景に 韓国的な感性と伝統美まで、 ここが旅行理想郷! 「春がこの上なく似合う場所、韓国・慶尚南道」 韓半島の最南端。下にはコバルトブルーの南海が、上には名山・智異山が、東には韓国第2の都市であり、関門である釜山と向き合い、全部で8つの市と10の郡が位置する。海…続きを読む

경상북도_메인_주왕산

慶尚北道の冬を楽しむ5つのテーマ

慶尚北道の冬を楽しむ5つのテーマ 「冬がいい、慶尚北道がいい、慶尚北道冬の旅」    韓国東南部に位置する慶尚北道は、韓国内でも最も魅力的な観光地に数えられる。四季の美しい魅力を誇る自然をはじめ、慶州や安東に代表される歴史遺産、そして慶尚北道だからこそ味わえる珍味が満載…続きを読む

11

韓国民俗村「雪原のハンター」

京畿道龍仁市 2021.12.18〜2022.02.02 伝統文化テーマパーク韓国民俗村 伝統文化テーマパーク韓国民俗村では12月18日(土)から冬祭りシリーズ「雪原のハンター」の行事を開始する。今回の祭りは、朝鮮時代の先祖たちの冬季の狩猟生活を直接体験してみるプログラムを多彩に…続きを読む


東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02

  • travel agence