仁川江華島を訪ねるとっておきの旅

2015年02月23日

江華島00

春を前に新しい仁川の魅力に触れる

仁川江華島を訪ねるとっておきの旅

 

仁川空港が位置する観光地仁川(インチョン)の魅力を、意外にも知らない人が多い。仁川の最北端にある江華島(カンファド)では、海の向こうに北朝鮮の姿を目の前に望むことのできる江華平和展望台をはじめ、 よもぎで楽しむ健康体験、そして仁川でなければ味わうことができないうなぎ料理まで、仁川空港に降り立ちソウルにばかり向かうという習慣を変えれば、今までめぐり会うことのできなかった感動と驚きが待っている。仁川江華島は新しい韓国とめぐり会いたいという人にとって、最適な場所である。
文/李相直記者
仁川空港から車で約1時間。東へ進んで仁川都心を通り過ぎ、ソウルの入口を経て再び北へ進むと、江華島の一番上に位置する江華平和展望台が見えてくる。3~4時間もかけてDMZがある江原道まで行かなくても、北朝鮮の鮮明な姿を見ることができる仁川ならではの隠れた名所である。
江華平和展望台が位置する場所は、江華郡両寺面(ヤンサミョン)の民間人統制区域で、38度線のあるDMZと同じく一般人が自由に立ち入ることができない軍事区域だ。展望台へ行く道も厳重で、外国人旅行客はもちろん一般の韓国人観光客も入口の検問所で軍人に身分確認を受け、許可を得なければ先に進むことができない。
厳しい雰囲気の次に見えてくる江華平和展望台は、閑静な公園を連想させる。坂道はよく整えられた散歩道で、その坂の一番上に空港の管制塔を思わせる展望台があり、観光客を待ち受ける。
展望台の中に入ると、1階では開放された野外展望台が最初に出迎える。展望台に足を踏み入れるとすぐ目の前に北朝鮮の田舍の風景が広がっており、望遠鏡を使わなくても、海の彼方に北朝鮮の山や田んぼ、村の風景が見え、「本当?」という疑念まじりの感嘆の声も出る。
展望台の前方にある北朝鮮の村との距離にも驚く。海を隔てての南北の距離は約1.8キロ。「地名は開城(ケソン)特別市ケプン郡で、橋があればわずか10分程で渡れるくらい近く、北朝鮮の姿を肉眼で間近に見られるのは、江華平和展望台しかない」と担当者が説明を付け加える。
現在は観光地であるが、数年前までは、軍人が北朝鮮と交替で境界に立っていた警戒所だった。毎晩、多くの軍人が北朝鮮を監視していた所であったが、韓国と北朝鮮が融和ムードとなるに従い、2008年9月に警戒所が撤去され、国内外からの観光客のための観光展望台としてオープンした。

(左)戦争の痛みを思う「懐かしき金剛山」歌碑。展望台のすぐ隣にある。 (右)室内展望台。曇りの日でもモニター映像を通じて北朝鮮の風景を見ることができる。

(左)戦争の痛みを思う「懐かしき金剛山」歌碑。展望台のすぐ隣にある。 (右) 室内展望台。曇りの日でもモニター映像を通じて北朝鮮の風景を見ることができる。

北朝鮮の姿をもっとよく見たければ、3階の展望台に足を運ぼう。展望台は室内と室外に分かれ、どちらからでも高性能望遠鏡で観測をすることができ興味深い。望遠鏡で眺める北朝鮮の風景には本当に驚く。スレート屋根の建物が並び、村の前の田んぼで農作業にいそしむ北朝鮮の人々の様子がよく見え、日本や韓国の普通の静かな田舍の村と変わらない平和な風景に、頭の中にあった北朝鮮のイメージとはかなり違うという感慨を抱く。
村の小道を走る自転車もよく目につく。北朝鮮では自転車が非常に高価であるが、ここの住民が北朝鮮政府の代わりに農作を行い、その代償として自転車を供給されたからだというのがガイドの説明だ。
展望台高性能望遠鏡は、500ウォンで2分間使用できる。テレビのニュースなどでこれまで見てきた北朝鮮の実状が目の前に広がり、500ウォン硬貨を何度も入れ、北朝鮮の風景にどっぷりとはまる観光客も少なくない。
雨や曇りの日だと、望遠鏡を利用しても展望がよくない時がある。しかし、がっかりすることはない。室内展望台には展望施設とともに、天気が悪くても北朝鮮の全景を見られるように、映像スクリーンが別に設けられているからだ。展望台の窓の上に設置されたカメラが鮮やかな映像を見せてくれる。

2階展示館。名物である錆びた鉄帽。朝鮮戦争当時の実物がそのまま展示されている。

2階展示館。名物である錆びた鉄帽。朝鮮戦争当時の実物がそのまま展示されている。

展望台観覧を終えたら、2階の展示館に移動しよう。朝鮮戦争の時代的背景や国内外戦争勃発の過程を写真と映像で展示しており、平和展望台にふさわしい見所となっている。特に印象的なのが朝鮮戦争の惨状を伝える鉄帽だ。砲弾で穴があいたまま錆びてしまった鉄帽の間から草が芽生え、その上に平和に蝶がとまっている姿から戦争の痛みが伝わってくる。実際に朝鮮戦争当時に発掘された実物の鉄帽を展示してあるので、感慨もひとしおである。
北朝鮮と韓国の統一を祈願する意義深い所でもある。1階の統一念願所にはメモ用紙を一枚一枚繋げて作った紙の木があるが、統一を祈るメッセージを記し、木に結んでおくことができる。展望台の外の一角に展示された巨大な実物の戦車も見所の一つだ。韓国海兵隊が上陸作戦で実際に使用した水陸両用戦車2台が並んで展示され、恐ろしい化け物を連想させる威圧的なデカールまで装飾されており記念撮影にぴったりの場所だ。

よもぎチムジルや高麗人参スパで健康管理

江華島で江華平和展望台だけ見て帰るのは惜しい。冷たい風が吹く冬にも個性満点のスパを満喫できるウェルネススポットがあるからだ。
江華平和展望台から約40分の場所にあるアルミエワールドがそのスポットだ。アルミエワールドは江華島地域の農・特産物を利用した観光農業タウンで、2009年3月オープンした。江華島を代表する特産品のよもぎを利用した多様な健康体験コースがあり、観光に加えて健康管理にも役立つユニークな施設だ。
一番人気の体験コースは、よもぎを利用したチムジルコースだ。韓国でよく体験する蒸し風呂とは一味ちがった健康薬草のよもぎを素材とした江華島ならではの蒸し風呂だ。
チムジルの種類は、手軽に楽しめる足湯から、女性の体にとても良い座浴コース、全身がよもぎの香りで包まれる全身チムジルまであり、自由に選べるようになっている。
女性旅行客であれば、座浴コース「薬よもぎ座浴」がおすすめ。薬よもぎ座浴コースは、焼いたよもぎから出る煙を女性の下半身にあてる韓方固有の療法で、下腹部の老廃物や脂肪質を除去し、肥満や女性疾患予防に効能があるとされている。
小さな壺一杯によもぎを入れて焼くので、濃厚なよもぎの香りを醸し出してゆらゆらと立ち上る煙の上にじっと座っているだけで効果が得られる。よもぎの煙が漏れないように座ることがポイントだ。チムジル服ではなく長いスカートを着用するが、従業員の説明によると、このスカートから煙が逃げないようにすればより高い効能が期待できるという。
よもぎの効能をよりアップグレードして楽しみたい人のために、全身によもぎの気運を吹き入れることができる「薬よもぎ黄土ボールチムジル」コースもある。
薬よもぎ黄土ボールチムジルコースは、鹿児島県指宿の名物である砂蒸し温泉を思い浮かべると分かりやすい。砂の代わりによもぎと黄土を混ぜて作った小さなビー玉くらいの大きさの黄土ボールで一杯にした空間に入って、全身を黄土ボールで包むようにして楽しむ個性的なチムジルメニューで、よもぎの香りに加えて黄土の效能まで期待でき、一石二鳥だ。熱すぎることも息苦しいこともなく、一般の蒸し風呂では負担の大きい子供や老年層でも気軽に楽しめる点も魅力だ。
よもぎを利用した体験工房もある。「よもぎウェルガ」では江華よもぎを利用した様々な体験が楽しめるが、来場客がよもぎなどの材料で天然薬草石鹸を直接作るコースが特に人気だ。体験コースは難しくない。予め用意されている石鹸の材料を刻んで弱火で溶かした液体に、江華島特産のよもぎを細かくしたパウダーと肌に良い蜂蜜を入れて混ぜたものを、石鹸の型に注いで約10分待てばオリジナルの手作りよもぎ石鹸を手にすることができる。肌への刺激が少ないのはもちろんのこと、にきびやアトピー疾患にも効果があり、プレゼント用としても人気だ。

(左)全身を黄土ボールで包むようにして楽しむユニークなスパコース薬よもぎ黄土ボールチムジル体験。 (右)韓国最大迷路公園のオンセミロ。

(左)全身を黄土ボールで包むようにして楽しむユニークなスパコース薬よもぎ黄土ボールチムジル体験。 (右)韓国最大迷路公園のオンセミロ。

迷路公園もアルミエワールドならではのユニークな楽しみの一つだ。アルミエワールド中央にある韓国最大の迷路公園であるオンセミロでは、複雑な迷路を通過すれば朝鮮時代に初めて作られたという神秘の温室を見ることができ、チャレンジのしがいがある。迷路を散歩しながら山林浴も楽しめるので、迷路で迷うほど健康にもよい。

アルミエワールド記念品売場では、江華よもぎブランドで販売されている様々な健康関連のショッピングも満喫できる。よもぎを利用したお茶やドリンク、化粧品、女性用品など種類も豊富で仁川江華島にしかない特産品があるのでショッピングの楽しさも格別だ。

仁川の定番コース、江華島干潟うなぎ

日本同様、韓国でもうなぎは最高の保養食として人気だが、自然産うなぎは韓国でも値段が高く気軽に楽しめない。しかし、仁川では心配御無用。負担のない金額で自然産同様の上質のうなぎが楽しめるからだ。

仁川名物の干潟うなぎ焼き。

仁川名物の干潟うなぎ焼き。

主人公は干潟うなぎだ。仁川江華島の特産品である干潟うなぎとは、養殖場で孵化した稚魚を干潟で一定期間放ち育てたうなぎを指す。うなぎ養殖場で幼いうなぎを購入して江華島の干潟を遮って作った漁場で75日以上放して育てると干潟うなぎとなるが、味が大雑把な通常の養殖うなぎとは異なり、自然産に劣らない身のしまったうなぎとなるため、うなぎの味を知る美食家も我先にと求めるほどの人気だ。
江華島の至る所に干潟うなぎ専門店があるが、特に江華郡仙源面(ソヌォンミョン)トリミに位置する「トリミうなぎタウン」が有名で、多様なメニューがある。日本と似た味付けのたれ焼きをはじめ、塩だけで味付けをした干潟うなぎ固有の淡泊な味がそのまま味わえる塩焼き、そして韓国特有のコチュジャンで味付けをしてやや辛い味が何ともいえないおいしさのコチュジャン焼きなどメニューが豊富なので、どの料理を注文するかという贅沢な悩みも伴う。焼き物メニュー以外にも、うなぎ一匹をそのまま入れて煮た栄養満点のスープを楽しむことができるチャンオタン(うなぎ鍋)や、江華島固有のスタイルで完成したチャンオトッパプ(うなぎを乗せたごはん)などもあり、秋から冬への移り変わりで落ちたスタミナを完全に取り戻すこともできる。

Information

江華平和展望台は年中無休で運営されている。入場料金は大人2,500ウォン。個人旅行の場合は、江華バスターミナルから3番バスを利用して終点下車。アルミエワールドへは、江華バスターミナルから多数のバスが運行しており便利で、農業技術センターで下車。入場料は無料で、足浴、座浴、全身チムジルを全て体験できるパッケージを15,000ウォンで楽しむことができる。より詳細な仁川市観光情報は仁川観光公式サイトで確認できる。

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