2018年冬季オリンピック開催地を巡る「江原道ヒーリング旅行」

2016年12月20日

大関嶺「ハヌル牧場」

 

 寒い冬が始まった12月2日から1泊2日の日程で「江原道オピニオンリーダー招請事業」が行われた。「2018年平昌(ピョンチャン)オリンピック」を1年2ヵ月後にひかえた江原道の旅行には、記者を含めた4人が参加した。今回のツアーの参加者は、それぞれいろいろな分野での発信力を持つ「オピニオンリーダー」たち。参加者には江原道ならではのコンテンツを体験し、各自が持っている広報手段で発信するというミッションが課せられた。訪れた所々での温かいおもてなしと、山、海、そしてオリンピックの施設など、感動的な思い出を残した2日間となった。

文/小峰明記者

ソウルから車で約2時間半、まずはオリンピックのメイン会場となる平昌を訪問した。まずは食事をしながら江原道庁のスポークスマンであるキム・ヨンチョルさんとユン・ホジョンさんから、オリンピックの準備状況や見どころなどを聞いた。そのレストランの隣では、冬季オリンピック開・閉幕式会場の建設工事が行われていた。この会場の工事は少し遅れているが、この他の会場は90%が既に工事を完了しているという。

食事の後、オリンピックのメイン会場ともいえる「アルペンシアリゾート」を訪問した。平昌のリゾートの一つで、ゴルフ場、スキー場、ウォーターパークのほか、インターコンチネンタルホテルとホリデーインホテルの2つのホテル、900の客室を誇るコンドミニアムがある。スキージャンプ競技場もあり、山の斜面に建てられたジャンプ台を見学することができた。

このジャンプ台は、実際に選手が上り競技を行う「スキージャンピングタワー」に上ることができる。まずはケーブルカーに乗ってタワーの下まで上がり、さらにエレベーターで高さ150mまで昇る。すると、配下にジャンプ到着地点が見える。しかも選手がエレベーターから降り移動するジャンプ場まで、下は鉄の格子の床で、下がしっかり見えるのだ。実際に選手が座ってジャンプをスタートするところは、高いところにも怖さを感じない私でも恐ろしさを感じるほどだった。解説士の話によると、選手は7年以上練習したのち、このジャンプ台で降りることができるという。ジャンプをするだけでも相当な訓練が必要なわけだが、展望台のフォトゾーンではジャンプ台から実際にジャンプをするようなトリック写真を撮ることもできた。

アルペンシアリゾートのジャンプ台

 

その次は、平昌のアルペンシアリゾートから約20分のところ、「ハヌル牧場」を訪れた。ここは、ダイナミックな大関嶺(テグァンリョン)の高原にあり、40年間牧場として使っていたが、2015年に一般の人も楽しめる生態体験型牧場としてオープンした。体験施設としては、乗馬、トラクター馬車、馬車ツアー、羊に餌をあげる体験などができる。春の花のシーズン、夏の緑の草原の景色、秋の紅葉、冬の雪景色など一年中楽しめる施設として家族旅行にはぴったりの場所だ。映画のロケ地としても有名で、2005年の大ヒット作「ウェルカム・トゥー・トンマッコル」の舞台として、また数々のCMロケにも利用されている。参加者はトラクター馬車に乗って、牧場の風車がそびえたつ丘に夕日が沈むシーンを見ることができて大満足。牧場には多くの大きな風力発電の風車があったが、その風車による年間の発電量は、江陵(カンヌン)市の年間消費量の半分をまかなうほどであるという。環境にやさしい自然エネルギー促進地域・江原道の取り組みをうかがうことができた。

牧場を後に、40分ほどで平昌郡の隣、江陵市の風光明媚な鏡浦湖(キョンポホ)があり、その横には鏡浦海水浴場がある。その海岸線の一角に、今回1泊する「江陵フォーシーズンビーチ観光ホテル」がある。チェックイン後、新鮮な刺身を食べに行くことにした。店選びのポイントは、現地の人に聞いたり、ホテルのフロントで紹介してもらった店ははずれがないようだ。新鮮な海の幸に舌鼓を打ちながら、一日の反省会。アルコールが入ると、話に花が咲いた。食事の後、ホテルに戻ってからもその余韻は冷めることなく、絶え間なく聞こえる波の音のように、夜遅くまで笑い声が絶えなかった。

オリンピック広報館で競技をバーチャル体験

 

翌日、全員がホテルのエレベーターに貼ってある日の出の時間を確認したのか、疲れも知らずホテルの前の砂浜にある「コブギバウィ(亀の岩)」に登り、海岸線から朝焼けの中昇る朝日を拝んだ。昨日の夕日といい、今日の朝日といい、心に残る自然の美しさに遭遇でき、この江原道のツアーは忘れられないものとなったと思う。

ホテルの朝食の時間が合わなかったため、参加者の希望で、江陵市でも有名な安木(アンモク)海岸線の「コーヒー通り」へ向かう。約20件以上のカフェが並ぶ一角にあるカフェ「キクロス(KIKURUS)」で、手作りのハンバーガーとアメリカンをいただいた。そして前の海岸線を朝の散歩をしながら、くつろいだひと時を過ごすことができた。

その後、車に乗ること30分、「2018平昌冬季オリンピック広報館」を訪問した。日本語が堪能な担当者ソン・ダヒョンさんがオリンピックの種目や開催地について詳しく説明してくれた。オリンピック会場は、平昌では大部分のスキー種目、江陵ではアイス種目、旌善(チョンソン)ではスピードスキー種目がそれぞれ行われる。

ここでは、4Dによる競技体験ができる。3Dのバーチャル映像に椅子の動きが加わって、よりリアルな体験ができる。スキージャンプの体験は、実際に自分が飛んでいるような感覚を味わえ、ボブスレーはスピード感にあふれ迫力があった。また、アイスホッケーは実際のスティックでパック(ボールに該当する円盤)を打って、ゴールに入れる体験ができる。

平昌冬季オリンピック広報館

 

その後、昼食時間まで余裕があったため、江陵の歴史的遺産として有名な「船橋荘(ソンギョジャン)」を訪れた。朝鮮時代の上流階級の邸宅を代表する場所として重要民俗資料第5号に指定されている。船橋荘という名前は、鏡浦湖が現在よりも広かった時代、出入りするのに船を利用していたためこの地域を「船橋の村(船橋里)」と呼んでいたことに由来している。船橋荘は朝鮮後期、李乃蕃(イ・ネボン)がイタチの群れを追いかけて偶然見つけた土地に建てた邸宅で、彼の子孫が現在も住んでいる。長い行廊(伝統的な屋敷で表門の両側にある、仕える者が居住する部屋)に囲まれたアンチェ、悦話堂(ヨルファダン)、東別堂(トンビョルダン)という建物がそのまま残っている。門の外には数百坪の蓮池の上に造られた活來亭(ファルレダン)という東屋があり、庭園も備えている。船橋荘は、建物だけでなく朝鮮後期の住居生活や生活用具を研究する際の貴重な資料になっており、周辺の景観とよく調和している。またドラマ「ファン・ジニ」、「宮」などのロケ地としても有名で、イ・ヨンエ、ソン・スンホン主演の「師任堂、光の日記」も撮影されるなど、ますます注目を集めている観光スポットだ。解説士が話していた「船橋荘」にまつわるエピソードが印象的だ。朝鮮時代、船橋荘には旅人が何日でも無料で宿泊をすることができた。中には7年間宿泊した旅人もいたという。それでも主人はもうそろそろ出てほしいということをはっきり言わず、それを示す方法として食事の膳の中の位置を変え、旅人はそれを見て主人の気持ちを悟って静かに去ったという。のんびりした昔の生活のよさを感じ、風流を感じる場所だといえるだろう。

ミュージアムSANと船橋荘

ミュージアムSAN(左)と船橋荘(右)

 

 

昼食後は、最後の目的地である「ミュージアムSAN」を訪問。ソウルからバスで1時間半、江原道西部の原州(ウォンジュ)市の山中にある美術館だ。自然の中で芸術と文化を感じる田園型ミュージアムをコンセプトに、2013年5月に「ハンソルミュージアム」として開館、同年12月に現在の名称になった。総面積は約2万1500坪で、韓国の美術館の中でも最大規模。設計は世界的に著名な建築家である安藤忠雄が担当した。館内には、韓国の伝統紙・韓紙(ハンジ)に関する展示物や韓国近代絵画、海外の芸術家の彫刻など、多彩な作品が展示されている。「ミュージアムSAN」の「SAN」とは、「スペース、アート、ネイチャー」の頭文字をとったもので、韓国語で山を意味する「サン」にちなんでいる。

また、ミュージアムSANには光と空間のアーティストと呼ばれるジェームズ・タレルの展示があり、これは彼のアジア最大規模の展示室だ。自然の風景と目の錯覚を利用した4つのインスタレーション作品が展示され、人間にとって光とは何か、見ている光がすべてではなく、この世は光の錯覚の中にいるというようなテーマだった。

これでモニターツアーが終わりとなった。短い時間ではあったが、江原道の山、海、そしてオリンピックに燃える姿を垣間見る時間となった。参加者すべてが、それぞれの角度から江原道の素晴らしさを感じたようだった。

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