2017今年の観光都市
今年最も期待される地方都市の旅、2017今年の観光都市
2017年の韓国観光は
「光州南区・江陵市・高靈郡」へ!
「今年の観光都市」は、韓国政府文化体育観光部が、観光の潜在力が大きい韓国の中小都市3ヵ所を選定、体系的な地方観光産業の育成とマーケティング、そして国内外の観光客に新しい価値のある地方都市の魅力を伝えるために、2016年度から選定を実施した事業。今年2017年度の「今年の観光都市」のタイトルを手にしたのは、江原道江陵市、慶尚北道高靈郡、光州広域市南区の3ヵ都市。江陵市は鏡浦台、安木コーヒー通り、烏竹軒などを活用したヒーリング都市の姿を見ることができ、高靈では大加耶博物館、王陵展示館、于勒博物館、大伽耶歴史テーマ観光地などを通して、古代の三国時代に隆盛した大加耶の歴史を見ることができる。そして韓半島南端の光州広域市南区では、近代歴史文化の宝庫である楊林洞を中心に、宣教、芸術、建築など、100年の歳月をそのまま抱いている近代芸術旅行を楽しめる。2017年、新年の新しい韓国旅行を期待する人であれば、この3都市はぜひ覚えておきたい。
文/李相直記者
光州市南区…宣教師の息遣いが聞こえるレトロな街
韓国の西南部の広域市・光州(クァンジュ)は、アート・イベント「光州ビエンナーレ」で知られているが、ここ数年、光州市南区は楊林洞(ヤンリムドン)という町が人気を博している。楊林洞は、由緒ある韓屋と、キリスト教の宣教師たちによる近代建築が多く残っており、街歩きにぴったりの場所だ。
楊林洞を代表する家屋といえば、李章雨(イ・ジャンウ)家屋と崔昇孝(チェ・スンヒョ)家屋がある。
李章雨家屋は、1899年、当時富豪であった鄭洛敎(チョン・ナッキョ)の息子・鄭秉好(チョン・ビョンホ)の家として建てられ、1959年に教育者であった李章雨博士が買い取った。現在も人が住んでいるが、日曜日を除いては一般公開もされている。立派な植木が植えられた庭の後ろには男性が起居する「サランチェ」、そしてその裏には行楼チェをはさんで女性たちが起居するアンチェがある。アンチェは、細かい障子の扉で構成された韓国的な部分と、ガラス窓の日本的な部分が同居している。角柱より格が高いものとされる円柱が使われているのも特徴だ。このアンチェは光州市の民俗資料1号に指定されている。
李章雨家屋と比肩する規模の崔昇孝家屋は、独立運動家である崔相鉉(チェ・サンヒョン)が1920年に建てた家で、その後の主人である崔昇孝の名で呼ばれている。広い庭に囲まれたきれいな家屋で、赤い瓦が特徴だ。屋根裏部屋に独立運動家をかくまったこともあり、その場所も見学できる。
楊林洞のもう一つの顔は、宣教師が定着した「西洋村」としての姿だ。1904年、米国南長老教会の宣教師であるユージン・ベルとクレメント・C・オーウェンが自宅でクリスマス礼拝を行ったのが宣教の始まりだった。その自宅の址には宣教記念碑があり、彼らが建てた楊林教会の後身である大韓イエス教長老会の楊林教会と、基督看護大学の間にはオーウェン記念閣が建てられている。
オーウェンは楊林洞で宣教と医療奉仕活動をしていたが、1909年に肺炎でこの世を去った。彼の死を悼む人々が1914年に建てたオーウェン記念閣は、礼拝や集会だけでなく、文化芸術の発表の場としても使われ、光州の文化の発信地となった。芝生の上に建てられたレンガ造りの建物で、西洋人の設計と監督による光州で最初の西洋建築という歴史的な価値も持っている。
1908年にユージン・ベル宣教師が建てたスピア女学校には4棟の西洋建築が残っている。グレーのレンガの外装が特徴的なスピアホールをはじめ、ユージン・ベルを記念して建てられたカーティス・メモリアルホールやウィンスブロウ・ホール、スピア女子高小講堂も登録文化財として指定されている。
湖南神学大学にも宣教師たちの痕跡が見つけられる。戦争孤児たちの面倒を見たロバート・ウィルソン宣教師の私邸は、光州で最初の西洋式住宅だ。グレーのレンガと木で建てられ、その建築の美しさだけでなく、込められたストーリーも美しい。ウィルソン宣教師は、孤児とハンセン病患者と生活を共にしようとこの家を建てたのだという。ウィルソン宣教師は、1905年に創立された済衆院(現在の光州基督病院)の第2代院長を務め、ハンセン病患者の自活に力を注いだ。
「ペンギンマウル」と名づけられた村も人気だ。古い庶民の家屋が密集している地域だが、この土地を離れた人たちが置いていった絵画、書、時計、雑貨などを狭い路地の壁に飾っている。地域の住民と芸術家が一緒につくりあげた芸術村で、路地全体がまさにアート作品。実はこのペンギンマウルを考案したのはこの村の村長で、「ペンギンマウル」という名も村長が、年老いた住民がペンギンのようによちよちと歩くのを見てつけたのだという。この村長のユーモアがこのような村をつくりだしたのだ。
江陵市…古の朝鮮時代の歴史に海の絶景まで満喫
ソウルから東に2時間余り、仁川空港から出発すると3時間で到着する。江陵(カンヌン)市が位置する江原道は秀麗な国立公園と青い海に囲まれた天恵の土地。数百年前の朝鮮時代から絶景の地として仰がれ、その魅力は長い月日が経った今もそのまま受け継がれ、旅行者を誘惑するスポットとなっている。
韓国人にとっても江原道江陵市は格別な土地だ。山あり海あり、自然の美しさは言葉に表せないほどで、最も行きたい旅行地であり最も身近な旅行先として、迷わず江原道江陵市が挙げられるほどだ。
烏竹軒と船橋荘はその代表的な例だ。江陵の人気海水浴場である鏡浦台へ向かう道に烏竹軒が位置する。烏竹軒は、朝鮮時代の大学者であり政治家であった栗谷・李珥(ユルゴク・イイ)先生が生まれた家であり、栗谷先生の母である申師任堂(シンサイムダン)が住んでいた家だ。
入口には、烏竹軒という案内標識と共に、立て看板に「世界初の母子の貨幣の人物生誕地」と書かれた文句が目を引く。栗谷先生とその母親の申師任堂は、それぞれ韓国の5千ウォン券と5万ウォン札の紙幣の人物だからだ。
烏竹軒という名前は、数百年間茂っている黒い竹(烏竹)がびっしりと生えていることから名付けられた。創建当時から5百余年が過ぎた今も黒い竹が変わらずまっすぐ空に向かって伸びており、烏竹軒という名前の由来を理解できる。
中には3軒の韓屋があるが、烏竹軒は、最も小さな別棟を指す。特に別棟が関心を集める訳は、実際に栗谷李珥先生が生まれた場所だからでもあるが、韓屋の美がそのまま表現されているためだといえる。華やかでも大きくもないが、謙遜するように低い瓦屋根と、正面3間、側面2間の扉だけを持つ素朴な外観は、清貧で剛直な当時の朝鮮のソンビの姿をそのまま映し出しており、壮大な宮殿で感じるよりもかえって韓屋固有の粋がさらに強烈に伝わってくる。
烏竹軒周辺には、栗谷先生の家族の遺品を保管する栗谷記念館に加え、立志門(イプチムン)の向こうに江陵市立博物館と郷土文化館があり、烏竹軒が位置する江陵市の歴史と文化についても知ることができる。
烏竹軒で素朴なソンビの韓屋を味わったら、次に紹介する船橋荘では、朝鮮時代の権力者の華麗で壮大な韓屋の趣を披露する。
船橋荘は朝鮮後期の上流層である士大夫(サデブ)の家。当時、朝鮮時代には王を除いては、いくら高い地位にいたり金持ちでも建てられる家の大きさが制限されていたが、船橋荘は当時の家の大きさの限界値である99間で建てられた最上流層の古宅だ。船橋莊という名前は、土地の形が船首に似ていることに由来しており、夫人が起居するアンチェ、夫が起居するサランチェ、使用人たちが起居する行廊チェ、嫁が住んでいる別堂、風流を楽しむ亭子など、朝鮮時代の上流層が起居する典型的な韓屋の形を確認することができる。
巨大な一つの家のように見えるが、実際には小さなドアや壁ですべて仕切られ、各建物ごとに独立して活用されている。外から見ると、すべての建物がつながっているように見えるが、実際には独立した空間にそれぞれ別々に、離れて建てられている構成美も驚くべきものだ。
99間に及ぶ巨大な古宅も一度にすべて建てられたものではない。約300年間、10代にわたって増築してきたが、そのすべての建物は、最初からその場にあったかのように完璧な統一感と構成美を見せており、韓屋の神秘的な魅力をここでも見つけることができる。
高靈郡…大伽耶国の歴史と文化に出会う観光都市
慶尚北道高靈(コリョン)郡ほど新しく魅力的な観光地があるだろうか。韓国古代史に「大伽耶」という花火のように強烈な1500年前の歴史を投影し、ユネスコ世界遺産候補に堂々と名を連ねた歴史観光地であり、静かな自然の中でヒーリングを満喫するアウトドアキャンプ&レクリエーション観光都市が、ここ慶尚北道高靈郡だ。
高靈郡は韓国内でも最も神秘的な歴史的感性を持つ大伽耶の古都としての評判が格別だ。大伽耶は韓国古代史を飾る高句麗、百済、新羅の三国盟主の間で最も小さな国だったが、独自の鉄器文化を隆盛させ、軍事的・文化的にも堂々と巨大な三国と肩を並べて、新羅に敗北・吸収されてその歴史は途絶えてしまったが、燃え盛る炎のように繁栄していた当時の文化は韓国人たちに強く刻印された歴史遺産である。
小国ながら強い力を持っていた大伽耶の歴史は敗北の歴史であるため、勝者の立場で記述された歴史書には充分に記録されていないが、悲しい歴史は韓国の多くの文学や芸術の舞台や素材となって、ファンタジックな古代国家として称えられている。
高靈を楽しむ旅のテーマも「大伽耶」というキーワードに帰結する。最大の見所は、やはり高靈郡の大伽耶の歴史を伝える大伽耶博物館と池山洞大伽耶古墳群だ。
大伽耶博物館(www.daegaya.net)は、高靈地域の歴史と文化を総合的に展示した大伽耶史専門の博物館だ。大伽耶歴史館、大伽耶王陵展示館で構成されており、特に博物館と隣接する大伽耶王陵展示館は、韓国で初めて発見された大規模な殉葬墓である池山里44号墳の内部を元の姿のままに再現してあり、かなり興味深い。
博物館の裏の山裾には、ユネスコ世界遺産登録を推進している池山洞大伽耶古墳群が目を引く。大伽耶最大の古墳群として、大伽耶邑を囲む主山の南東の尾根の上に韓国で初めて発掘された殉葬墓である44、45号墳をはじめ、大小704基の古墳が分布している。大伽耶様式の土器や鉄器、金管、装身具など、最高の価値を持った遺物が出土しており、2015年度韓国観光100選にも選ばれほどの高靈郡旅行に欠かせない見どころだ。
韓国伝統の弦楽器「伽椰琴(カヤグム)」の歴史も高靈で出会える。
伽椰琴は大伽耶の嘉悉王(カシルワン)がつくったと伝えられる弦楽器で、上部が丸く、中が空洞になっていて大きな共鳴筒を持つ桐の丸太に、絹糸を撚り合わせて作られた12本の弦と、12弦の雁足(柱)を使用した大伽耶の象徴ともいえる楽器だ。嘉悉王の指示で、当時の宮廷楽士であった于勒(ウルク)が12の曲をつくった後、新羅に陥落した後も伽椰琴の文化だけは残って現在までに伝えられている、大加耶の生きている歴史だ。于勒博物館では、伽椰琴を創製した于勒と伽椰琴の歴史資料を展示しており、伽椰琴工房では、観覧客が伽椰琴の製作過程を知って、伽椰琴に実際に触れて音を聞くことができるため、大伽耶の精神的遺産を探す人ならば、ぜひ行ってみたいコースだ。
国内外の観光客に大伽耶の歴史と文化を公園型テーマパークスタイルで伝える大伽耶の歴史テーマ観光地(www.daegayapark.net)も最近オープンした。大伽耶遺物体験館、伽耶市場、大伽耶窯址体験館、大伽耶探訪林道、古墳展望台、そして最新の映像施設である大伽耶シネマなど、体験が中心の施設が揃って楽しめる。特に、観光地の奥には宿泊施設の寅賓館(インビングァン)とログハウスペンション「王家マウル」などがあり、高靈郡旅行での宿泊にもぴったりだ。
高靈ならではのグルメとしては「大伽耶珍羞」も必須コースだ。高靈スタイルの伝統的な韓定食で、メイン料理の肉ポッサムを中心にジャガイモ栄養ご飯と高靈で栽培されている食材だけを使って、15種類以上のおかずが提供される。
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