平昌冬季五輪まで200日! 江原道のドラマ ロケ地を訪ねて

2017年09月22日

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とうとう開催まであとわずかとなった平昌オリンピック。オリンピックが行なわれる江原道はもちろん、韓国全体が多いに盛り上がっている。そんな中、開催まで200日を控えた7月22日、G‐200花火祭りが春川市で開かれた。また、花火祭りに合せて江原道日本語ブログファムツアーが行なわれ、江原道や平昌オリンピックに関心を持つ30人余が参加した。G200イベントだけではなく、最新の江原道の魅力を体験したツアーの様子をレポートする。

文/町野山宏記者

 

楽しみにしていたツアーにもかかわらず、時は梅雨の真っ最中。天気予報では一日中雨とのこと。それでも朝早くから元気に集まった参加者たち、韓国在住の人も多かったが、「たまたまツアーの日程が合った」と日本からも多くの参加者があった。「なかなか地方に旅行に行く機会がない中で、楽しみにしてきた」と参加者は嬉しそうに語った。

最初に向かったのが、ドラマ「鬼(トッケビ)」のロケ地である注文津(チュムンジン)。向かう途中では雨が降ったり止んだりしていたが、到着する頃には雨は止んでいた。トッケビの仕業かもしれない。注文津は昔から人気のある海水浴場だが、今回訪れたのは注文津の海水浴場と領津海岸(ヨンジンヘビョン)との間にある海岸防砂提。ここで「鬼」の撮影が行なわれた。海に突き出した堤で、主人公の二人が出会った印象的な場面が、ドラマの代表的なショットとしてさまざまなメディアに紹介されて人気となり、多くの人たちが訪れる名所となった。

場面としては、キム・ゴウン扮する「鬼の花嫁」チ・ウンタクが一人で誕生日を祝おうとケーキのろうそくを吹き消したところ、コン・ユ扮する「鬼」キム・シンが現れ、白いソバの花をプレゼントするというもの。海を背景に二人が向き合う場面が印象的で、SNSなどを通してロケ地の情報が広まると、多くのカップルが「鬼」の主人公になりきって写真を撮った。それだけでなく、シングルの女性たちは、コン・ユのような男性が現れることを願って一人で写真を撮り、後からコン・ユの写真を合成してSNSでシェアする人も多い。

 

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どれだけ人が並んでいるだろうかと心配しながらロケ地に行ってみると、天気のためか、心配したほどには人は多くない。それでも少し待たないと順番は回ってこない。ピークの時は、数十秒で終わる撮影のために20分から30分待たなければならなかったという。

順番が回ってくると、ドラマのポーズを取る人もいれば、自分なりのオリジナルのポーズを撮る人もいる。それぞれが思い思いのポーズでお互いに写真を撮った。ドラマを見た人はもちろん、広い海を前にしたきれいな写真を撮るには絶好の場所だ。実際の撮影に使われた堤のほか、すぐ隣にもう一つ同じ形の堤があるため、「コン・ユが立ったここでないと!」というこだわりがない人ならば、比較的順番が回ってきやすい隣の堤で写真を撮るのも一つの手だ。

「鬼」の主人公なりきり写真を楽しんだ後は、昼食の場所へ。せっかく江原道に来たからには名物料理をということで、注文津のビーチがある江陵(カンヌン)市の名物である「草堂(チョダン)スンドゥブ」を食べることに。草堂豆腐は、三陟府使としてこの地に赴任したホ・ヨムという人が、江陵の海水をにがりとして使って豆腐を作ったところ、おいしいことで広まったのが最初だという。この人の号をとって「草堂スンドゥブ」と名づけれられたわけだ。

「草堂豆腐」がいっぱいに入った鍋に、もやしやキャベツなどの野菜を入れてさっと煮立てた鍋料理だ。「スンドゥブっていうから赤いのかと思ったら、白いんですね」と参加者の声。シンプルな味付けで辛くもないため、日本人にも食べやすい。味はシンプルでも豆腐自体の味がおいしいため、これだけでご飯がしっかり食べられるメニューだ。もちろん、有名店らしくキムチはおいしいし、他のおかずも箸が止まらないほどの味だ。

今回食べた店は「100年の伝統の味」を歌う老舗だが、その名も「100年伝統スンドゥブ」。実際に主人に聞いてみるとすでに130年を越える歴史を持った店だという。朝鮮時代から4つの時代を超えてきた、まさに「時代を超えるおいしさ」なわけだ。

 

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「師任堂」が暮らした名家「烏竹軒」

 

午前中に訪れたロケ地はちょっと軽めのドラマだったが、午後のスタートは少し歴史のお勉強。といっても、ラブロマンスの加味された歴史ドラマ「師任堂~色の日記」のロケ地となった「烏竹軒(オジュッコン)」だ。

烏竹軒は、「江陵といえば、烏竹軒」といってもいいほどの江陵を代表する観光地。江原道の代表的な観光地が江陵であるから、烏竹軒は江原道を代表する観光地といってよい。その日も多くの観光客が、サルスベリの花が満開の烏竹軒を訪れていた。

ドラマ「師任堂」は、朝鮮時代の儒学者である栗谷李珥(ユルゴク・イイ)の母親である申師任堂(シン・サイムダン)を主人公にしたストーリーで、イ・ヨンエ扮する申師任堂とソン・スンホン扮するイ・ギョムとの「叶わぬ恋」を描いた切なくも美しいドラマだ。烏竹軒は申師任堂が生まれ育ち、栗谷李珥をはじめとする7人の子供(劇中では4人)を育てた家だ。ドラマのロケ地としても使われた場所でもある。

 

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ドラマのロケ地ということも注目を浴びている理由の一つだが、それ以上に韓国を代表する偉人たちが生まれ育った場所ということで、その知恵にあずかろうという人たちが多く訪れる。申師任堂とその息子である栗谷李珥が韓国でたたえられていることは、この親子がそれぞれ韓国の5万ウォン札と5千ウォン札に肖像画が描かれていることからも充分分かる。烏竹軒にある申師任堂と栗谷李珥の銅像の前で、お札を取り出して一緒に「認証ショット」を撮る人も多い。

烏竹軒の中で、中心的な意義を持つ建物は、「烏竹軒」と名づけられた別堂で、申師任堂が栗谷李珥を産んだ3間の家屋だ。右側のオンドル部屋がその部屋で、生まれる時に黒い龍がこの家に入ってくる幻を見たということで、「夢龍室(モンニョンシル)」と名づけられている。

申師任堂は、良妻賢母の代表として慕われている。特に、学問だけでなく人格も備えた栗谷李珥という偉人を育てたその子育ての知恵は、多くのお母さんたちに今も見習うべきこととして語られ、実践されている。この日も専門の解説士にガイドをお願いしたが、申師任堂と栗谷李珥、そしてこの家門の思想とその生き方に、思わず感嘆の声が漏れる。

「申師任堂は、子供たちを学校で学ばせるのではなく、自ら学問を教え、人格者として育てました。子女の中では栗谷李珥が最も有名ですが、実は7人の子女のすべてが偉人として名を残しているのです」と解説士は語った。ある参加者は「江原道は、人生哲学まで学べるところなんですね」と感心していた。

 

「鬼」と「青い海の伝説」の絶景の海のロケ地

 

この日、もう一ヵ所訪れたロケ地は、ドラマ「鬼」とドラマ「青い海の伝説」の撮影が行なわれた正東津(チョンドンジン)の海岸。初日の出の名所としてよく知られている。海岸線に沿って走る「海列車」の線路と、その向こうに広がる海を眺めながら江陵から20分ほど走って到着した。

正東津は、ソウルの光化門の真東にある船着場ということでその名が付けられた。海水浴場として有名なだけでなく、岬の上に乗った船の形をした「サンクルーズリゾート」がランドマークとなっている。また、1995年に正東津を人気の観光地として押し上げたドラマ「砂時計」にちなんで作られた世界最大の砂時計もある。

今回訪ねたのは、そのような「おなじみの」場所ではなく、そこから少し離れた場所だった。駐車場でバスを降り、線路を越えて海辺に出て、さらに歩いていく。「本当にこちらで大丈夫なんだろうか」という不安がつのりだした頃に、カラフルな家が見えてきた。ここがドラマのロケ地となったゲストハウス「ララムリ」だ。

 

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松林と砂浜の間に設けられた散策路のすぐ脇に建っている家で、海に向かってカフェのカウンターが開いている。ハンドドリップのコーヒーを注文し、コーヒーが出てくるのをゆっくりと待ちながら周りを散策した。カフェになってはいるものの、家の前にテーブルやいすが無造作に置かれているだけで、屋根もない。それでも、置いてある小物の一つひとつが個性的でいい雰囲気をかもし出している。

ドラマにおいては、「鬼」では、ウンタクが三神ハルモニから誕生日のプレゼントとして白菜をもらった場面が、カフェの裏にある部屋で撮影された。夜のシーンなのでよくは見えないのが残念だが。

そして「青い海の伝説」では、二人の主人公を演じたチョン・ジヒョンとイ・ミンホが仲良く海岸を歩いた場面が撮影された。また、カフェの前にある木のベンチも、二人が座っている場面がドラマのラストを飾った。このベンチも、その隣の人を象った木のオブジェもフォトジェニックで、旅の思い出を写真で残すには最適だ。

 

平昌冬季五輪はもうすぐ! 待ち遠しいメインイベント

 

海を後にして、いよいよもう一つのハイライト、平昌冬季オリンピック・パラリンピックG-200の花火祭りに向かう。花火祭りが春川駅の周辺で行なわれるため、まずは春川名物のタッカルビで腹ごしらえ。春川市内に入ると道路の脇にはタッカルビの店がしのぎを削っている。ソウルにももちろん、タッカルビの店はたくさんあるが、やはり本場で食べるものはひと味もふた味も違う。熱々のタッカルビを汗を流しながらほおばった。

一日中雨という予報にかかわらず、これまでほとんど雨が降らないままに来たが、夜の帳が降り始める頃になって、雨のしずくがバスの窓を叩き始めた。そして、会場に着く頃にはすでに土砂降りになっていた。遠くには会場の照明が見え隠れする。何とか少しでも見物できないかと方法を探したが、雨は強くなる一方で、泣く泣くバスに戻ることに。最後の締めが雨で台無しになってしまったのが残念だが、本来、雨が降るところを雨にぬれずにここまで来られただけでもありがたいことだ。まだ次にはG‐100の行事も待っており、本当のメインイベントとなるオリンピックも来年に控えている。その日にまた来ることを誓いながら帰宅の途についた。

後でニュースを見ると、G-200の花火祭りは開会の時に豪雨に見舞われたものの、そのあとは大きな雨が降ることもなく予定通りに行なわれ、美しい夜空の花が市民たちの目を楽しませたという。

この他にも多くの魅力的な観光地が位置する江原道、オリンピックを契機に、さらに江原道への旅行が活性化していくだろう。

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