韓国ならではの伝統酒の魅力を体験「韓国伝統酒研究所」

2014年09月22日

韓国伝統酒研究所01

韓国ならではの伝統酒の魅力を体験

韓国伝統酒研究所

韓国のお酒と聞けば、ストレートで楽しむ焼酎(ソジュ)や、若い女性にも人気の高いどぶろく(マッコリ)などを思い出す人が多いだろう。今では店で購入して飲むのが当たり前のお酒だが、昔はそれぞれの家で自家製酒を作り、その家庭ならではの味を楽しんできたという。そんな韓国伝統酒の復興と広報活動を行っているのが「韓国伝統酒研究所」だ。研究所というと少し敷居が高そうに感じるが、入り口から漂う伝統酒のよい香りに、お酒が好きな人たちにはたまらない誘惑の所であり、深い伝統酒の世界を案内してくれる休憩場となる。
文/大成直子記者
 

消えた伝統を発掘・発展

 古い伝統的な韓屋が並ぶ景福宮周辺の一角。入り口に、「伝統酒作り体験可能」という日本語の縦看板が置かれている建物の2階にある「韓国伝統酒研究所」へと上がる。階段にはほのかに伝統酒の香りが漂い、入口から中へと続く廊下の壁や、室内の壁などには、所狭しと小さな瓶に入った色とりどりの伝統酒が並べられている。インテリアかと思いきや、この瓶一つひとつに復元された伝統酒が入っており、その数は850瓶にもなるという。
 日本の各地域には伝統的な酒蔵があり、銘酒作りの技術が酒蔵にて受け継がれてきたが、韓国では、昔から家庭でお酒をつくって飲む風習があり、地方によって、家門によって、様々な家釀酒が作られ、受けつがれてきた。地域で有力者と呼ばれる家には常に人の出入りが激しく、その接待に必ずお酒が登場することから、名家銘酒と呼ばれながら、その家でしか味わうことができない特別な味により、訪れる人たちを魅了したという。しかし、法律により家庭での酒造りが禁じられた時期があり、内戦も経験しながら、古くから伝えらてきた家釀酒が一気に廃れてしまった。しかし、その伝統を復活させ、復興させることを目的に作られたのがこの研究所だ。
 韓国伝統酒研究所の所長であり、伝統酒研究家であるパク・ロッダン氏は、韓国全土を巡りながら、国内の伝統酒、家釀酒に対する現場調査と発掘活動を行い、様々な文献を研究しながら、伝統酒の再現に努力してきた伝統酒の第一人者だ。「韓国の美をたどる旅」の中で、ペ・ヨンジュン氏に伝統酒を教えた人物として紹介され、より多くの人たちにその存在が知られるようになった。
韓国伝統酒研究所03

代表的な伝統酒を飲みたいなら

 家醸酒を基盤として発展した韓国伝統酒の最大の特徴は、柔らかな甘みと濃厚な香りだといわれる。生の米粉を固めて作った餅麹と強飯、水などの最小限の材料だけを使用して作りだすためだ。また基本とともに、韓方薬や季節にふさわしい果物などが加えられ、韓国ではその呼び名も「薬酒(ヤクジュ)」と呼ばれる。「これまで70冊の醸造に関連する文献を元に復元資料と再現過程を通じて気づいた重要な事実がいくつかあります。韓国伝統酒には、独自の優れた香りと黄金色の美しい色、7つの複雑な味を感じることができるという点です。ワインや日本酒にも決して引けをとらないお酒です」とパク所長は語る。パク所長から、多くの伝統酒の中から、韓国の代表的な酒を紹介してもらった。
 「まず、香りと味で一品だとされる自喜香(チャヒヒャン)を紹介したいと思います。これは、香りがよいため飲むのがもったいないという意味の惜呑酒(ソクタンジュ)というジャンルに入る酒で、うるち米で作った粥に小麦麹を混ぜて発酵させて酒母を使い、菊の花を一緒に入れて炊き上げたもち米で酒を造ります。熟成を終えた酒を濾過すると、アルコール含有量15%の、菊の香りでたっぷりの自喜香ができ上がります。甘みと酸味が混ざり、香り高い余韻が残るため、サムスンの社長主催による晩餐酒としても採用されたことから、広く知られるようになりました。 
 また、竹の産地である全羅道の特産酒、竹瀝膏(チュッリョッコ)も紹介したい一品です。その名称からも分かるように、この酒に含まれる成分に、竹の抽出液があります。一般的に「竹瀝」というのは、竹の幹を裂き瓶にいれて、炭や薪で熱することから得られる樹液のような油のことで、この竹瀝と共に蜂蜜、生姜を入れて蒸留した焼酎を竹瀝膏といいます。それぞれの成分がよく調和をなし、蜂蜜と生姜の香りが鼻と口を刺激しながら、食事の味もよりおいしくしてくれる酒です。
 一方、朝鮮時代最高の名酒として知られている甘紅露(カムホンロ)もまた、必ず飲んで見なければならない伝統酒の一つといえます。坡州甘紅露は2回発酵させたものを蒸留して、1次蒸留式焼酎にしてから、再度、蒸留を行います。蒸留を繰り返すことにより、アルコールの純度が高い露酒が作成され、この時、野生の霊芝と天然の蜂蜜が加えられ、純度の高い甘紅露が完成します。アルコール度数は55〜60%に達するほど高いのですが、霊芝と蜂蜜が混さり、やわらかく強い香りを出すため、飲みすぎても二日酔いにならないお酒です。この研究所では現在、この甘紅露の商品化を進めており、来年には皆さんにお届けできる予定です」
 

より身近に伝統酒を楽しむ

韓国伝統酒研究所02

 ここ伝統酒研究所では、具体的にどんな活動をしているのだろうか。伝統酒の文化的な価値やその原理を学びながら、麹作り、酒作りをマスターする「伝統酒マスター過程」教室の運営や、 伝統酒を醸造している小規模工場の支援や技術協力、海外に向けた韓国伝統酒の広報、そして、春夏秋冬のそれぞれの季節にふさわしい伝統酒の試飲会など様々な方面から、伝統酒を知らせる努力をしている。
 「韓国では季節ごとに異なるお酒を造ってきました。春にはつつじの花びらやレンギョウ、桃、梨の花などを入れて酒を造り、また夏になると蓮の花や薔薇の花を入れたもの、秋には菊や柚子、ミカンの皮を、そして冬には梅などを可香材料として使ってきたと文献に残っています。昔の人たちはこのようにお酒の香りを通じて、季節の変化の趣と風流を楽しんできましたが、現代の人たちにも、同じような楽しみを知っていただきたいと、季節にあったお酒と料理を紹介する伝統酒の試飲会を年に4回行っています。インターネットを通じて申し込み、関心がある人は誰でも参加できます。年齢を問わず、伝統酒に関心がある人たちが集まり、高い人気となっています。
 また、伝統酒作りの基本から様々な伝統酒の作り方を学ぶ『伝統酒マスター過程』も人気です。醗酵剤として使われる麹作りから濁酒類と速成酒類、甘酒類、清酒類、加香酒類、焼酒、混養酒類など伝統銘酒のすべての部分を幅広く扱って紹介しており、将来、自分のお店を持つために努力している受講生もいるため、これからはより身近に、韓国伝統酒を楽しんでいただける機会が増えると希望を持っています」
 伝統酒に関心はあるものの、韓国に長期滞在するわけにはいかない外国人旅行客のための伝統酒作り教室も開催されている。「韓国伝統酒文化やマッコリに興味のある外国人のために『マッコリ(ドンドンジュ)』体験プログラムを用意しています。この体験プログラムでは、無添加で米・麹・水のみを材料とした健康的なマッコリを醸し、試飲することができます。短い時間ですが、蒸した米に麹と水を混ぜて甕に入れるなど、その過程は本格的で、酒造りの基礎を知る機会となります。酒ができあがるには時間がかかるので、すでにできあったマッコリを試飲していただき、マッコリもお持ち帰りいただけます」
 その国の料理に一番ふさわしいのはその国に伝えられる伝統酒だといえる。本場で味わう特別な伝統酒を楽しめば、忘れられない韓国旅行となるのではないだろうか。
 

Information

景福宮駅3番出口から直進。3番目の角を右手に入るとすぐ(徒歩10分)
TEL:02-389-8611
www.ktwine.or.kr(韓国語)
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