韓国の仁川にある特別な博物館旅行

2017年02月08日

ご両親との時間旅行

水道局山タルトンネ博物館

いわゆる「博物館」といえば、退屈なところ、というイメージがある。
展示されているものによって、そのイメージは異なるが、とにかく、博物館はその特有の語感から、気軽に楽しみながら、ゆったりとした時間を過ごすというイメージとはほど遠い。しかし、仁川市東区松現洞の水道局山タルトンネ博物館は楽しく時間を過ごせるところだ。

古いものに興味を持っている「若年寄り」も楽しく観覧できると思うが、若年層よりは高齢層のほうが楽しく感じることができるかもしれない。はじめて、ここに来た時
「次に来るときは、両親と一緒に来てみたいところだな」と思った。

水道局山タルトンネ博物館を簡単に説明すると、60~70年代の仁川を再現した近現代生活史専門博物館である。
その時代に、仁川タルトンネに住んでいた市民が、時間が経つにつれて、思い出がうすれていくのを寂しく思い、タルトンネがあった場所に何か意味のあるものを作ることはできないのかという考えから、博物館を作った。中・高齢層には過去の浪漫や懐かしさを感じることができ、若年層には一昔前のタルトンネの暮らしぶりを感じることができるのはと、水道局山タルトンネ博物館は始まったのである。
2005年秋オープンし、開館してもう10年の月日が流れている。地下1階、地上1階の規模で、一般的な博物館に比べ、小規模だが、館内は充実している、館内を1周するのにするのに30分くらいかかるのだが、見応えがある。博物館の隣のタルトンネ遊び体験館で体験もしたら、総所要時間は1時間くらい。石けり、ビソクチギ、ゴムとび、木馬、面子遊び、手玉遊び、ユンノリ、さいころゲームなどのゲームも楽しめるし、懐かしいアニメも上映している。
地下鉄1号線(京仁線)東仁川駅で降りて、松現近隣公園の方向に7~8分くらい歩いていくと、きつい坂道があるが、その坂道の頂上に三角形の水道局山タルトンネ博物館がある。「水道局山」は「水道局のある山」という意味である。本来の名前は万寿山とか松林山であったが、20世紀のはじめ、水道局が設置されることにより、水道局山と呼ばれるようになった。狭くて、急な丘の頂上に町が形成されているのが不思議だが、日本統治時代、当時の日本人と中国人に追い出された人たちがここに集まったといわれている。
本格的に水道局山が庶民の住宅になったのは50年代以降のことだ。朝鮮戦争により住まいを失った避難民が集まり、60年代以降の産業化と共に、仁川だけでなく、忠清道、全羅道からも大勢の人が移住してきた。そのためか、一時、水道局山には3千軒以上が一緒に住んでいたといわれている。登り口付近はもちろん頂上まで小屋が建てられ、後に、これが仁川を象徴する「タルトンネ」になったのだ。
「タルトンネ」という名前は「月」に近い高いところに位置した町という意味から始まったという説とほとんどの住民が「月払い(賃貸)」で暮していたためだという説がある。しかし、この名前が広く使われるようになったのは80年代のはじめ頃の大ヒットドラマ「タルトンネ」の影響が大きい。
水道局山博物館にはドラマ「タルトンネ」のセット場は「きっとこうだったんだろう」と推測できるような空間や小道具がたくさんある。ひっそりとした小道、古い映画ポストが貼ってある壁、小さな店、不動産、塾、練炭の店、床屋、漫画喫茶、喫茶店、洋装店、写真館、住宅、共同水道、共同トイレといったものをリアルに再現している。テーマごとに小品が展示されているため、当時の生活ぶりを想像することもできる。
当時の貧しい生活は大変だったと思うが、「暮らしの現場」を背景にいろんな写真を撮ることができるのも興味深い体験ではないかと思う。恋人と一緒に写真を撮りながら、デートが楽しめるという一方で、両親と一緒にきて「懐かしさ」を味わいたいという気持にもなるのだから、本当に'不思議な博物館である。
博物館には、親子連れが目立つ。子供の教育のためと考え訪れたのであろう。珍しい空間や小物に関心を持つ子供もいたが、ほとんどの子どもたちは、生まれて初めて見る風景に緊張していた。まるで「恐怖の家」「お化けの家」に来ているように、緊張している子供もいた。また、それもかわいい。
博物館の所々で不思議に思って質問する子どもの声が聞こえた。
「母さん、ここ怖い。母さんがこんなところに住んでいたの?」
「いや、母さんじゃないよ。お婆ちゃんの時代かな?!」
一見みても子供は小学生の低学年くらいで、母親もまだ30代に見えた。しかし、子供は博物館の風景をみても、時代を十分に理解していないようだ。80年代と90年代の様子はメディアを通じて、よく紹介されているが、60年代、70年代はなかなか触れることができないからだと思う。
水道局山タルトンネ博物館は両親世代にとっては懐かしい思い出を振り返る機会を提供すると共に、幼年期や学生時代の暮らしぶりが体験できる意味のある場所だと思う。また、恋人同士にはデートコースとして、子供連れの夫婦には3、40年前の韓国そして、仁川の昔の様子を体験学習もできる教育の場としての役割を果たしている博物館だ。
また、仁川国際空港や松島新都市などを通じて、現代的な仁川の様子しか知らない子どもたちや外国人観光客にも、過去の仁川の様子を感じることのできる魅力的なところだといえる。 水道局山タルトンネ博物館は単なる展示のみならず、体験や教育プログラムがあり、「過去の仁川の様子」に興味のある旅行者であれば、絶対、後悔しない観光スポットになると思う。 粗削りでクオリティは低いが、クオリティだけでは評価できない懐かしいアイテムなどを土産物屋(記念品ショップ)でも見ることができるのも水道局山タルトンネ博物館の大きな魅力の一つではないのだろうか。
  • 水道局山タルトンネ博物館

    • 住所: 仁川広域市 東区 ソルピッ路 51 (松現洞)
    • 交通: 地下鉄1号線 桃源駅から徒歩3分
    • 利用時間: 9時~18時
    • 入場料: 大人1,000ウォン / 小人500ウォン
    • Web site : http://www.icdonggu.go.kr/open_content/museum/index.jsp
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