百済時代の愛の物語が込められた「宮南池」
古の百済の都「泗沘(サビ)」は現在の忠清南道扶余郡にあった。ユネスコ世界遺産に登録された「百済歴史遺産地区」の8つの遺跡のうち半分が扶余郡に位置するが、世界遺産に登録された遺跡のほかにも魅力的な百済の遺跡が扶余の地に残っている。それが「宮南池(クンナムチ)」だ。
宮南池には、百済の王子である薯童(ソドン)と善花(ソナ)姫の愛の物語が伝えられている。薯童の青年時代、隣接する新羅の眞平(チンピョン)王の三女である善花姫が美しいという噂を聞いて慕っていた末に、新羅へと旅立つ。新羅の都の子供たちに、自分が作った「薯童謠(ソドンヨ)」という歌を教えて歌わせるが、その内容は、善花姫が毎夜こっそりと薯童の部屋を訪ねるというものだった。この歌が新羅の都城の中まで広がると、眞平王は王室に恥をかかせたという理由で、善花姫を流刑に処すが、薯童はその道で待ち伏せし、一緒に百済へと戻った。その後、彼は百済の武王(ムワン)となって善花は王妃になったという物語だ。後に武王となった薯童は宮南池の敷地に離宮を建て、水を引き込んで風流を楽しみながら、故郷である新羅を離れた善花姫の郷愁を慰めたと伝えられている。
この宮南池は韓国で最も古い人工池としても有名だ。池の趣もよいが、広大な敷地内にある宮南池には、 2万5千坪にもわたり蓮の花や野花が植えられて四季折々の美しい表情を作り出し、誰もがその場を離れたくなくなるほど。
宮南池は西暦634年頃に築造され、韓国の歴史書である「三国史記」には、「武王が宮城の南に池を掘り、約20里にもおよぶ長い水路をつくって水を流し込んだ。池の周辺には柳を植え、池の中には島をつくった」と記録されている。抱龍亭(ポヨンジョン)という東屋をがある、宮南池の中にある島が歴史書にある島で、島に渡る木の橋が印象的だ。
毎年夏には、蓮の花祭りが開催される。蓮の花ファッションショー、レンコン料理、フォトコンテストなど様々な催しが開催されるため、華やかな催しと共に、赤や白、そしてピンク色の蓮により美しく色づく風景を楽しみに、この時期に訪問するのがお勧めだ。
もちろん、春夏秋冬それぞれに美しい表情を見せるため、いつ訪れてもその季節ならではの魅力を発見することができるだろう。
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