韓国33観音聖地をめぐる「私探しの旅」~南部圏~

2015年12月07日

韓国33観音聖地をめぐる「私探しの旅」~南部圏~

 

ありふれた韓国旅行ではない癒しの旅行を求める人たちに、お勧めしたいのが「韓国33観音聖地をめぐる旅」だ。1700年の歴史を誇る韓国の仏教文化は、同じ仏教文化圏の日本のそれとはまた赴きが違い、色鮮やかながらも、素朴なものが多い。寺院の多くが奥深い山の中にあるため、山の霊気も感じることができる。そんな古刹・名刹の中で本尊が観音菩薩である寺院の中から厳選された「韓の国33観音聖地」を一つひとつ巡回することにより、心に安らぎを感じると共に、韓国の隠された美しさも同時に発見できる旅となる。一度に巡るには広範囲にわたるため、4つのエリアに分けてその魅力を把握した後、自分探しの旅へと出かけよう。

文/大成直子

 

菩提庵

智異山と2大観音祈祷道場で祈る

 

韓半島の南地方にある寺院を巡ると、韓国の霊山と呼ばれる智異山(チリサン)で山の気運を、多島海海上国立公園と閑麗海上国立公園で海の美しさと気運を授かる旅が待っている。

まずは智異山にある華厳寺(ファオムサ)へと向かう。雄大な山が連なり、登山のメッカとして国内外から多くの登山客が訪れる韓半島の南部地域にある国立公園・智異山は、かつて山岳信仰の聖地であったほか、仏教の聖地としても知られており、古くは三国時代から霊山としても重要な役割を担ってきた場所だ。

そんな智異山にある寺院の中で有名なのが華厳寺だ。ここは6世紀中旬にインドから来た縁起大使により創建されたとされており、禅宗大本山として栄華を極めたものの大火災により建物が焼失し、現在は全て17世紀以降の朝鮮時代に再建された建物たちとなっている。そんな華厳寺の代表的な建物は2階建ての合掌屋根の大きな建物、国宝67号の覚皇殿(カクファンジョン)だ。ここは670年に新羅の僧、義湘がその内部の壁の石に華厳経を刻んだことから、この寺の名前が華厳寺となったとされるが、この華厳石経は文禄・慶長の役に破壊された。今では8980個の破片となって、影殿に保存されており、現在国宝第301号として指定されている。

また、国宝第35号である寂滅宝宮の四獅子三層石塔は、創建主である縁起の孝行の思いが表現されているため、孝台とも呼ばれている。

今度は全羅南道の順天市にある曹渓山・松広寺(ソングァンサ)へと移動する。ここは仏宝寺刹の通度寺、法宝寺刹の海印寺と並ぶ僧宝寺刹として、韓国三宝寺刹の中の一つだ。この僧宝とは、皇帝や朝廷が高僧に対して送られる僧侶として最高の栄誉とされる「国師」が16人も輩出された特別な寺院だということから付けられた名称だ。

この寺の一番の見所はなんといっても国師殿(国宝第56号)だ。これは1400年頃に建てられたのち、内部に1780年に十六国師の肖像が収められた。そして、1951年に起こった火災によりこの松広寺全体が焼失してしまった際にも、国師殿だけが火魔から守られたことから、国師達の法力によるものだとも伝えられている所だ。

海水観音が迎える祈祷道場

今度は山から海へと移動しよう。2012年に万博が開催された麗水市の端、突山島にある向日庵(ヒャンイラム)は、金鰲山の岩絶壁の上にある。

向日庵は華厳寺(ファオムサ)の末寺として659年に元暁大師が創建したと伝えられおり、他の寺院と違い観音殿が2つという特異な構造を持つ。

山の斜面登り坂の道に沿って寺院への道が続くが、石段道を登ると、人がやっと一人通り抜けることができるかというほどの狭くて長い、岩の隙間が現れる。境内に向かうには、このようなこの岩の隙間を7ヵ所通過するが、この岩の隙間を抜けるごとに願いが一つずつ聞かれるという俗説があるため、ここをを訪れた人たち7個の願いを聞かれるといわれる。境内に入ると絶壁の下には青く輝く南海の海が波打つ。再び狭い岩の隙間道を通過すれば、元暁大師が遂行中に観世音菩薩を親見したと伝えられる観音殿があり、その傍には、海水観音菩薩像が海を眺めて立っている。

そして、向日庵とは海を隔てた慶尚南道・南海にある菩提庵(ポリアム)も全国3大祈祷道場として知られる、観音祈祷道場だ。錦山の頂上近くにある菩提庵は、その周辺を一面、38景の奇怪石群で覆われていて、絶景の風景を誇る場所だ。

683年、ここに観音菩薩を親見した元暁大師は、普光寺と名づけたが、千年が過ぎ、新しい名前を受けることとなる。1660年、朝鮮王朝の太祖李成桂(イ・ソンゲ)がここで100日祈祷を捧げたあかつきに新しい王朝を開いたことにより、菩提庵と改名したためだ。現在も太祖・李成桂が祈ったことを記念して建てられた璿恩殿が残されている。そして、錦山第1展望台とも呼ばれる海水観音像には参拝客の足取りが絶えることがない。この観音像は自分のためではなく、愛する人たちに捧げる人たちの祈祷だけが聞き入れられるといわれ、今日も額を床につけながら祈る多くの人たちの姿が見られる。

 

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