ファッションタウン東大門を支える町の素顔に触れる | 縫製歴史館「イウムピウム」

2018年06月12日

ファッションタウン
東大門を支える町の素顔に触れる
縫製歴史館「イウムピウム」

ソウルは物語の宝庫だ。景福宮など有名な観光地に行かなくても、実はソウルの街々に興味深い物語がたくさん隠されている。最近、それらを発掘して紹介する二つの展示館がオープンした。西大門と東大門に面した二つの地域、「セムナンロ」と「昌信洞」にまつわる魅力的なエピソードを、展示館を訪問して探ってみた。
文/町野山宏記者

 

IMG_5871

 

「ファッションタウン」東大門。ソウルに来る目的の一つが東大門でショッピングをすることという人も少なくないだろう。安いだけでなくデザインも優秀な韓国のファッションの人気はさめることを知らない。それでは、東大門のファッションアイテムはどこから来るのかと考えたことはあるだろうか?それは東大門からほど近い昌信洞(チャンシンドン)という町。町のあちこちからミシンの音が聞こえ、スチームの湯気が立ち上る縫製の町だ。その昌信洞に縫製の過去と現在、未来を見ることができる縫製歴史館が誕生した。

縫製の町・昌信洞は興仁之門(東大門)に接し、洛山の山すそにびっしりとレンガ造りの家が並ぶところ。地下鉄東大門駅から出て丘を登っていくと、そこには活気付いた素顔のソウルがある。少し上ると道の両側からミシンの音が聞こえてくる。ひっきりなしに道路を行きかうバイクの荷台には長い生地のロールや完成した服の包みが積まれている。目的地の縫製歴史館に至る路地にも縫製工場が並んでいるが、縫製関係のイベントの看板がところどころに見られる。数十年の歴史を持つ縫製の町に新しい風が吹き始めている様子を示す洗練されたデザインの看板だ。そんな坂道を上っていくと、路地の奥に新築の建物がある。4月11日にオープンしたばかりの縫製歴史館だ。

この歴史館には「イウムピウム」という別名がある。「つなげる」という意味の「イウム」と、「花咲く」という意味の「ピウム」という二つの言葉を合わせたもの。布を縫い合わせることで花咲かせた縫製の文化を意味すると共に、縫製の過去と現在を「つなげる」ことで未来を「花咲かせよう」という願いが込められている。

1階から入ると最初に迎えるのは昌信洞の職人たちの紹介動画。長年この町でこの仕事を営んできた42人の職人のインタビューしたダイジェスト映像と、彼らを代表する9人のインタビューの詳細映像を見ることができる。自分にとって縫製とは何かを語る彼らの言葉は、「人生」、「生活」、「夢」とさまざまだが、一人ひとりから真摯さを感じられ、こだわりと愛着が感じられる。今まで記者が勝手に持っていた「たいへんな労働を強いられるかわいそうな人たち」というイメージががらがらと崩れ去った。長年経歴を積んできた40~50代の方が多いが、この仕事に自分の未来を掛けた青年も少なくなく登場することにも驚いた。

プロローグとなる映像を見て、いよいよ展示を観覧。エレベータで2階に上がると、壁に掲げられた大きなボタンが目に入る。ここではボタンを販売している。カラフルなボタンの中から気に入ったボタンを買って、持ってきた服につけることもできる。また、昌信洞のマスターたちがつくった服を購入することもできる。

隣の展示室は、壁一面に四角や楕円形の額が並んでいる。額の中にはカテゴリーに分けられて縫製の歴史や技術、文化などについて説明している。テキストだけではなく、写真やイラストなどで分かりやすくなっており、ビジュアルだけでも充分楽しめる。特に展示室の奥にあるレトロチックなミシンは、ハンドルを回すと画面にワイシャツを作る過程が映像で映し出される。シンプルにつくられた映像が興味深い。

 

IMG_5873

 

この展示室では世界と韓国の縫製の歴史を知ることができる。スタッフに簡単に説明してもらったが、産業革命によって機械化された縫製産業が韓国で本格的に始まったのは60年代のこと。60~70年代は国家主導で外貨獲得の手段として縫製産業が発展した。それによって女性の社会進出の機会となったが、反面、劣悪な環境で女工たちは低賃金で長時間労働を強いられた。それを社会に訴えようと、チョン・テイルという青年が焼身自殺を図るなど事件が起こることによって、政府による労働条件の改善の努力がなされた。それでも取締りの目を逃れた業者は昌信洞に移って営業を続けたという。もう一つの問題としては、物価がどんどん上がっている中でも20年前と変わらない価格でしか卸せていない状況だ。この歴史館がつくられたのは、そのような状況を打開し、製品の価値を高めることにある。

この展示室の一角は3階まで吹き抜けになっており、額が並ぶその上を、昌信洞の「マスター」たちの作品が回っている。展示室内の階段で3階に上がると、そこにはソウル市の公募で選ばれた10人のマスターの写真と彼らの使う鋏などの道具が展示されている。彼らの笑顔には自分たちの技術に対する自信が感じられ、使いこなされた道具からは経歴が感じられる。マスターたちの作品は東大門で販売されているということで、ショッピングをする時の見方も変わってくるようだ。

3階の展示を見終わると、順路は外の階段へ続いている。4階は「裁縫カフェ」。山の斜面に形成された昌信洞の町が見渡せる空間では無料のコーヒーでくつろげるようになっている。この町のどこかで縫製職人たちが今も布を裁断し、ミシンを踏み、ボタンを掛けているのだと思うと感慨深い。

地下1階の縫製作業室では簡単な服を作る体験コースや、その場でできる簡単なコースも準備されており、実際に体験で楽しめる。

 

縫製歴史館「イウムピウム」

http://iumpium.com
Tel: +82-2-747-6471~2
観覧時間:火~日、AM10:00~PM06:00
休館日:毎週月曜日、公休日

Pocket

関連する記事はこちら

박물관1

仁川の子供と一緒に楽しむ 博物館ツアー

子供と一緒に楽しむ 博物館ツアー 週末に、「子供たちとどこへ行こうか?」 と悩んでいる人なら、博物館巡り出かけてはどうだろうか。 子供と一緒に楽しめる5つの博物館を紹介しようと思う。 仁川児童科学館 仁川児童科学館では遊びや体験を通して、科学原理を分かりやすく学ぶことができるとこ…続きを読む

2

ウォーカーヒル、ディナーショー「花の伝説」が人気

ウォーカーヒル、ディナーショー「花の伝説」が人気 ウォーカーヒルホテルが製作・上演する圧倒的なスケールのコリアンショー「花の伝説」が人気を集めている。「花の伝説」は伝統的コンテンツと現代的感覚とが調和したオリジナル創作ショーで、男女主人公であるアラとミルの愛がロマンチックに繰り広…続きを読む

또 오해영

仁川の韓国ドラマ「また?!オヘヨン~僕が愛した未来(ジカン)~」のロケ地

カーネルワークにまたオセヨン! 「また?!オヘヨン~僕が愛した未来(ジカン)~」のロケ地 20~30代の女性から絶大な支持を得たドラマ「また?!オヘヨン~僕が愛した未来(ジカン)~」 未来が見える男パク・ドギョン(エリック/SHINHWA)と同姓同名の女性二人-それぞれ「普通」と…続きを読む

서브01-세븐럭강남점

<撮れ立てレポート>ゴージャスなマネーゲーム、「セブンラックカジノ」

今夜、幸運の女神と出会う。 ゴージャスなマネーゲーム、「セブンラックカジノ」   韓国の夜を楽しむ方法はいろいろある。高級なカフェやスカイラウンジでお酒を飲んだり、ソウルタワーに登って美しいソウルの夜景を満喫し、一晩で不夜城となる東大門ファッションタウンでは朝までショッ…続きを読む

파라다이스시티_메인

「韓国のカジノ観光産業は今、高速成長中」

最近、韓国の外国人観光客市場は変化の時代を迎えている。パッケージ中心の市場から個人自由旅行客を中心とした市場へとプラットフォームが変化し、一層高まった外国人旅行者のニーズを満たす新規コンテンツが続々と登場し、これまで固定化された韓国旅行のパラダイムまで変化しつつある。 このような…続きを読む

인천2

仁川の近代文化との出合い 開港場通り

近代文化との出合い 開港場通り 近代化が始まった所、西海岸第1の貿易港。仁川の開港場ヌリ道を訪ねてみよう。 まず仁川駅から出発してみよう。仁川駅は駅そのものが歴史的な場所だ。 韓国の鉄道は1899年9月18日に開通したが、最初に開通式を行った所が仁川駅だ。現在の駅舎は1925年に…続きを読む

경기도1

京畿道が選定した‘2017年京畿道の10大祭り’

12月になり今年も残りわずかとなりました。桜祭りが真っ盛りだった春がつい一昨日のことのように思えるのに、今や年末の冬祭りが大盛況です。 京畿道では、四季折々の個性満点の31ヶ所の市・郡のすべてが祭りを多く開催するということで噂されています。来るべき2017年を迎え、京畿道が201…続きを読む

K-Style_ミッションツアー

「K‐スタイルハブでミッションツアー&韓服体験」

 韓国観光公社が8月末まで、ソウル清渓川の近くにあるK‐スタイルハブ(韓国観光公社ソウル社屋)で、国内外の観光客を対象に韓服体験を含むK‐スタイルハブ・ミッションツアーイベントを開催する。「韓国の味と粋、そして興を探せ!」というテーマで進行される今回の行事は、無料のミッションゲー…続きを読む

東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02