新作映画「兄貴」

2016年12月20日

兄貴

 

失明した柔道国家代表と前科10犯の詐欺師の「ブロコメディー」

兄貴 韓国映画界で「ブロコメディー」という言葉が話題になっている。聞きなれない言葉かもしれないが、映画「兄貴」を修飾する言葉と分かればピンと来る人もいるだろう。そう、男同士の近しい関係のことをいう「ブロマンス」を扱うコメディーのことだ。その映画「兄貴」が大ヒットしており、すでに観客数が260万を突破した。

映画「兄貴」は、不慮の事故で失明した柔道国家代表の弟と、前科10犯の詐欺師の兄の、ブロマンスを描いたコメディ…というのが映画の説明だが、「ブロマンス」とはまったく逆の方向からスタートする。

弟のドゥヨンは柔道選手として国家代表に選ばれるほどの実力の持ち主だったが、試合中の不慮の事故で視力を失ってしまう。順調な人生を歩んでいた立場から一転して、自分の生活さえままならない境地にまで陥ってしまったのだ。そんな彼には15年間、連絡を絶っていた兄・ドゥシクがいた。詐欺師で前科10犯。今は刑務所にいる身だった。しかし、弟の失明の知らせを聞いたドゥシクは、弟を世話するという名目で、1年間、保護者として仮釈放を狙う。詐欺で生計を立ててきただけに、持ち前の口の達者さで仮釈放の幸運を勝ち得、15年ぶりに弟のもとを訪ねたドゥシクは弟に言い放つ。「生きてみるとお前が俺の人生に役立つことがあるんだな!」しかし、弟のドゥヨンにとって、兄の魂胆は見え透いていた。「兄貴は役立たずだ。頼むから俺の人生から消えてくれ!」こうして、ドゥヨンの目の前の闇のように、お先真っ暗な二人の同居生活が始まった。

韓国のコメディ映画らしく、心をわっさわっさと揺さぶられ、韓国的な表現を借りれば「笑い袋が破裂する」コメディだ。二人の同居生活のように予測不可能な展開に、笑いをこらえるのは不可能だといっていい。しかし、笑いだけではなく、これも韓国コメディの定石といっていい涙あふれる感動がついてくる。ネットには「涙と鼻水を搾り出してきた」という感想が並ぶほどだ。中には「韓国映画にありがちなストーリー」との評もあるが、その評を書いた彼らも湧き上がる笑いと涙をこらえるのは難しかったに違いない。

何といっても主演の一人、兄のドゥシクを演じたチョ・ジョンソクの演技が光を放つ。甘酸っぱいストーリーで韓国人の心を揺さぶった映画「建築学概論」で、主演のスジに勝るとも劣らない印象的なキャラクター「ナプトゥギ」を演じたチョ・ジョンソクは、「兄貴」でも人間味あふれるキャラクターを演じている。仮釈放のために最高の弟思いの兄を演じながら、弟の前では「ヨク(相手を罵る言葉)」を繰り返し、弟の財産を根こそぎ持っていこうと画策する。それでも憎めない、そんなキャラクターを演じる俳優として彼を置いて他に適役がいるだろうか。

兄貴

 

もちろん、チョ・ジョンソクの演技が光ったのは、弟のドゥヨンを演じたト・ギョンスの純粋な演技があったためであることはいうまでもない。EXOのディオとして歌手としても不動の人気を持つ彼だが、演技においてもすでにドラマ「大丈夫、愛だ」や映画「純情」などで披露した演技の実力を「兄貴」においても充分に発揮している。特に目が見えない演技には多くの人が感嘆の賛辞を惜しまない。歌も演技も万能な美男とあれば、彼のファンでなくても女性ならば、彼の魅力に酔ってしまうだろう。

兄貴

 

男同士の関係を描いた映画ではあるが、そこにはもちろん、女優の役割は欠かせない。この兄弟の関係についていけないと愛想を尽かしながらも最後まで彼らを助けるドゥヨンのマネージャーのイ・スヒョンを演じたパク・シネも、映画「7番房の奇跡」やドラマ「ピノキオ」など、数々のドラマや映画を演じたベテラン女優としての安定感を見せる。

兄貴

 

兄と弟という関係は、簡単な関係ではない。記者にも長い間連絡をしていない弟がいる。連絡をしても話すこともないし、久しぶりに会っても挨拶くらいしかしない関係だ。仲良くしたい気持ちはあるものの、お互いにそれを表現することも難しく、表現したからといって関係がよくなるわけでもない。映画「兄貴」の二人もそのような、いや、それ以上に難しい関係だろう。しかし、運命は彼らをしてより親密にならざるを得ない状況に押しやった。そして彼らがどのような兄弟関係を築いたのか、どんな「ブロマンス」をつくっていったのか、それは映画を期待してみて欲しい。

兄がいるならば、弟がいるならば、彼のことを思い出すかも知れない。家族の意味、特に兄弟の意味を考えさせられる、家族で見ることをお勧めしたい映画だ。もちろん、単純に大笑いして大泣きしたい、ストレスが溜まりがちの人にもお勧めだ。

ランニングタイムは110分。

Pocket

関連する記事はこちら

엑소_유니버스

EXO、冬のスペシャルアルバム「ユニバース」発売

 グループ・EXOが12月21日、冬のスペシャルアルバム「ユニバース」(Universe)を発売した。アルバム内の曲は全7曲で、タイトル曲「Universe」は、世界のすべてになってしまってしまった愛を宇宙の果てまで行っても取り戻すという内容の歌詞が引き立つロックバラードジャンル…続きを読む

Kchan_한류채널

スマートフォンで楽しむ韓流チャンネル「Kchan! 韓流TV」開局

 日本を代表韓流チャンネルKNTVとアジアエンターテイメントチャンネルDATVを保有しているDAグループが、スマートフォンやタブレットを通して韓流チャンネルをいつでも楽しむことができるモバイルリニア伝送チャンネルである「Kchan! 韓流TV」を1月31日に開局した。 「Kcha…続きを読む

YG보석함

ボーイズグループ選抜プロジェクト「YG宝石箱」11月16日初公開

 YGエンターテイメントが新規サバイバルリアリティー番組「YG宝石箱」を11月16日から公開する。「YG宝石箱」はビッグバン、ウィナー、アイコンに続いてYGが4年ぶりに披露するボーイグループを選抜するプロジェクトを盛り込んだサバイバル放送だ。 放送を通じて、ミッション中心の既存の…続きを読む

재중_파라다이스시티_홍보대사

JYJキム・ジェジュン、パラダイスシティの広報大使委嘱

 韓流スターのキム・ジェジュンが6月25日、仁川永宗島に位置する北東アジア初の複合リゾート「パラダイスシティ」の広報大使に委嘱された。パラダイスシティは4月にオープンした国内初の複合リゾート。パラダイスグループはキム・ジェジュンが日本などアジア圏はもちろん、世界的にファンが多い代…続きを読む

영화리뷰_포스터

新作映画「僕の中のあいつ」

 いわゆる「パンシャトル(パシリ)」となって、同じクラスの友達にいじめられているドンヒョン(ジニョン扮)。不細工で食いしん坊、その上小心者の彼は、いつもいじめっ子の友人の餌になっている。 今日もいつものように建物の屋上で同じクラスの友だちにいじめられて、屋上から墜落する事故に遭っ…続きを読む

徳恵翁主

〈新作映画〉徳恵翁主

大韓帝国最後の皇女の人生に投影された悲しき朝鮮の歴史  朝鮮の最後の皇女「徳恵翁主」がホ・ジノ監督演出の映画で日の目を見ました。「こんな皇女がいたの?」と初めて知った人も多いかと思われます。主人公の名前は、李氏朝鮮の王・高宗と後宮の間で生まれた娘で、「李徳恵」。日韓の暗黒の時代の…続きを読む

방탄소년단_오사카콘서트

防弾少年団、10月に京セラドーム大阪にて公演

 防弾少年団が日本デビュー後初のドーム公演を開催する。ビッグヒットエンターテインメントによると、防弾少年団は、10月14〜15日、京セラドーム大阪でライブ「TRILOGY EPISODE III THE WINGS TOUR IN JAPAN ~SPECIAL EDITION~」…続きを読む

nothumbnail

「オールキル」ミス・エイ、大ヒットの予感

 ガールグループ、ミス・エイ(Miss A)の新曲である「他の男じゃなくあなた」への関心が熱い。発表から2日間、ヒットチャートのトップを保ちながら、大ヒットの兆しが見られている。 ミス・エイは、先月30日に7番目のプロジェクトアルバム「カラーズ(Colors)」を発表しながら本格…続きを読む


東海岸圏経済自由区域01
東海岸圏経済自由区域02

  • travel agence