春満開!! 全国の桜祭り 2019年版
長い韓国の冬も終わりを告げ、花の便りがあちこちで聞こえてようくるになった。春になったら花見に行きたくなるのは日本でも韓国でも同じだ。韓国にも桜の名所は各所にあり、桜祭りが行われる。日本の桜とは楽しみ方がちょっと違う韓国の桜祭り、地方ごとの特色が見られるさまざまな桜祭りを楽しんでみよう。
文/町野山宏記者
韓国代表桜祭り、鎮海・軍港祭
韓国の桜の名所といえば最もよく知られているのが、鎮海(チネ)だ。慶尚南道・昌原(チャンウォン)市鎮海区の軍港祭は、韓国人の間では一度は行ってみたい桜祭り。軍港祭という名前からも分かるように、鎮海は軍港があることで知られており、祭りも文禄慶長の役の韓国の英雄である李舜臣将軍の追慕祭を行ったことが始まりだ。それが後になって郷土文化の振興の趣旨を加え、文化芸術イベントや世界軍楽フェスティバルなどが行われるようになった。
鎮海区全体で祭りが催されるが、その中でも桜の名所はドラマなどでも有名になった2ヵ所だ。一つは「鎮海ロマンス橋」という餘佐川(ヨジャチョン)に架かる橋だ。ドラマ「ロマンス」で軍港祭を見にきた主人公カップルが出会ったのがこの橋で、「ロマンス橋」という別名で呼ばれるようになった。餘佐川に沿って、鎮海最高と歌われる桜のトンネルができ、ロマンス橋からの眺めは最高に美しい。
もう一つの名所は簡易駅である慶和駅(キョンファヨク)。2006年で旅客業務を終えた昔の駅舎で、桜のトンネルの下を廃線となった線路の上を自由に歩けるようになっている。さらに、列車が通ることで桜の花びらが舞い散る姿がロマンチックだということで、軍港祭の期間に限って列車が運行している。徐行する列車に乗って花見をするのもよし、舞い散る桜のシャワーを浴びるのもよし、韓国一の桜を楽しもう。慶和駅もドラマ「春のワルツ」で有名になった名所だ。
軍港祭では「軍楽儀仗フェスティバル」という軍隊によるパフォーマンスも行われる。軍の楽隊によるマーチングバンドの勇壮な演奏や、制服に身を包んだ儀仗隊の公演など、軍港祭でしか見られない舞台が楽しめる。また、海軍鎮海士官学校が開放され、亀甲船の試乗や軍艦の見学、制服試着、ヨットの試乗などさまざまな体験が楽しめる。
鎮海の桜と共に有名なのが「桜パン」と呼ばれるおまんじゅう。桜の形をしており、中のあんこに桜の花のエキスが入っていてほんのりと桜の香りが漂う。鎮海の土産にぴったりだ。
歴史的文化財と共に楽しむ、慶州桜祭り
韓国の代表的な歴史観光地である慶尚北道の慶州は、花見の名所でもある。慶州桜マラソン大会も開かれ、全世界のランナーが訪れるほど有名だ。新羅の遺跡と調和した桜が各所で楽しめるが、代表的な名所を紹介しよう。まず最初に、新羅による半島統一の一等功臣である金庾信(キム・ユシン)将軍の墓地が有名だ。韓国国土交通部が選定した「美しい韓国の道100選」にも選ばれた桜の並木道だ。昼間はもちろん、夜にもライトアップされた桜が幻想的な風景をつくりだす。
写真家たちの名所である普門亭(ポムンジョン)も名所だ。普門観光団地の中にある蓮池と東屋、そして桜が調和した美しさは、実際にその光景を目の前にしたら写真家たちが魅了される訳が納得できることだろう。慶州の歴史観光地・仏国寺(プルググサ)も、境内には少ないものの、寺に至る道と仏国寺公園には見事な桜が鑑賞できる。
桜の季節の慶州は多くの花見客が訪れるため、渋滞は避けられない。車の代わりに自転車で回るのも一つの手だ。慶州市内には自転車専用道路も整備されているため、事故の心配も少ない。自転車で訪れるのによい名所としては瞻星台(チョムソンデ)がある。新羅時代の天文台と伝えられる瞻星台の周りは広い公園になっており、のんびりと花見が楽しめる。桜のほかにも一面を黄色に染める菜の花畑もあり、まさに童話の世界に入りこんだような景色が堪能できる。この他にも半月城の桜の林、大陵苑の石塀の道、皇龍寺に至る道なども花見サイクリングにはぴったりの観光地だ。
異色の夜桜を愛でる、大邱Eワールド桜祭り
韓国第3の都市、大邱では少し異色の桜祭りがある。アミューズメントパーク「Eワールド」で行われる「Eワールド星の光桜祭り」だ。もともと、Eワールドのある頭流山(トゥリュサン)一帯は桜の名所で、ソウルの桜の名所として知られる汝矣島の約3倍の桜の木が植えられているが、それ以上のこの桜祭りの特徴は、夜桜がメインだということ。夜になると桜が緑や黄色や紫といったライトに照らされて、幻想的な光景をつくりだす。極彩色のライトが桜に合うだろうかと不思議に思うかもしれないが、百聞は一見にしかず、この美しさは実際に見て確かめてほしい。
大邱でもう一つ有名な桜の名所が八公山(パルゴンサン)。大邱市の象徴ともいえる八公山に登る道路に沿って桜並木が続いている。標高差のために平地より開花が数日遅れるため、平地で桜を見逃した人にはチャンスだといえよう。八公山には大邱を代表する寺院である桐華寺(トンファサ)や、頭の上に石版を載せた不思議な仏像「カッパウィ」などがあり、訪ねておきたい名所だ。特にカッパウィは、「願いのうち一つは必ず叶う」といわれ、入試の前には受験生の両親が訪れる霊験あらかたな場所として知られるため、願い事を準備していくのがいいだろう。
日本ではあまり知られてはいないが、慶尚南道・河東(ハドン)郡の花開(ファゲ)ジャント桜祭りも見逃すには惜しい桜祭りだ。慶尚南道と全羅南道の間を流れる蟾津江(ソムジンガン)の川辺にある市場「花開ジャント」から双渓寺(サンゲサ)まで花開川に沿って、25㎞にわたって桜の並木が続く「十里の桜道」がよく知られている。道路の脇には木でつくられた歩道があり、桜のトンネルの下を歩けるようになっているが、この道は「婚礼の道」と呼ばれ、愛し合う二人が手をつないで歩くと百年間仲睦まじく過ごせるといわれている。
河東の桜祭りは桜以外の楽しみも満載だ。桜並木の出発地点にある花開ジャントは、数百年の歴史を持つ韓国を代表する市場で、全羅道と慶尚道の地方を越えた人たちが集まる場所だ。にぎやかだった昔から比べると大幅に縮小されてはいるものの、田舎ならではの珍しい品揃えが興味をそそる。並木道の最後にある双渓橋を渡ると、千年古刹・双渓寺に至る道が現れる。そのほか、河東には韓国を代表する長編小説「土地」をドラマ化した時の舞台となった崔参判宅(チェチャムパンデク)もあり、情緒ある韓国の昔の村を楽しむことができる。
平昌五輪の開催地、鏡浦台桜祭り
平昌冬季オリンピックの開催地となった江原道の江陵(カンヌン)にも桜の名所がある。夏になると多くの観光客が訪れる海水浴のメッカ・鏡浦台(キョンポデ)で開かれる桜祭りだ。鏡浦台は美しい砂浜から数十m隔てたところに鏡浦湖がある不思議な地形を持っており、昔から「関東八景(クァンドンパルギョン)」という江原地域を代表する景勝地の一つだった。この鏡浦湖の周囲4・3㎞にわたって桜が植えられており、遊歩道を歩きながら美しい桜が楽しめる。水面近くまで枝を伸ばした桜が鏡のような水に映り、写真を撮るにも絶好の場所だ。桜祭りの期間には、桜だけでなくレンギョウやスイセンなども咲き、桜との美の競演をなす。
鏡浦台桜祭りを訪ねたら、江陵の観光地も訪ねておきたい。朝鮮時代の名家である船橋荘(ソンギョジャン)は有名だ。朝鮮時代の儒学者である李栗谷(ユルゴク)李珥(イ・イ)とその母・申師任堂(シンサイムダン)が生まれた烏竹軒(オジュッコン)も見逃せない。最近では、こだわりのカフェが集まっている安木(アンモク)コーヒー通りも人気だ。
桜とワインを堪能、ウォーカーヒル春の花祭り
地方に行くのはハードルが高いという人のために、ソウルの桜の名所も一つ紹介しておこう。もちろん有名なのは汝矣島の「春の花祭り」だが、今回はウォーカーヒルホテルの「春の花祭り」を紹介しよう。峨嵯山(アチャサン)の中腹を緩やかに上る道路に沿ってホテルの建物が散在しているが、山のいたるところに桜が見られ、美しい景観をつくりだしている。
特に、桜の季節に行われる「雲の上の散策」に合せて訪ねるのが最高だ。ホテルの建物の一つ「ピザヒル」に登る道沿いにテントがずらりと並び、さまざまなワインとビールが試飲できるイベント。入場料さえ払えば、「ビールフェア(4月20、21、27、28日)」では多様なプレミアビールが、「ワインフェア(4月6、7、13、14日)」では世界の各地のワインが飲み放題で試飲できる。もちろん、気に入ったワインやビールがあれば、割引価格でその場で購入もできる。
このほか、個性的なアーティストやデザイナーがデザインした雑貨などを販売する「アートマーケット」などのイベントも行われ、祭りの雰囲気を盛り上げる。ホテルの宿泊と花見を一緒に楽しめるパッケージも販売されるため、チェックしておきたい。
鎮海軍港祭 | 2019.4.1~4.10 |
慶州桜祭り | 2019.4.3~4.7 |
大邱Eワールド桜祭り | 2019.3.23~4.7 |
大邱八公山桜祭り | 2019.4.5~4.7 |
河東花開ジャント桜祭り | 2019.3.29~3.31 |
鏡浦台桜祭り | 4月第1週~2週(予定) |
ウォーカーヒル春の花祭り | 2019.4.6~4.28 |
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