トランジットは仁川だけじゃない! 釜山トランジットプログラム
トランジットは仁川だけじゃない!
釜山トランジットプログラム
韓国第2の都市・釜山の金海空港は、エアプサンなどを利用して、東南アジアやグァム、中国へ行くにも乗り換えに便利な空港だ。そして、その乗り換えの空き時間を利用して、釜山の簡単な観光を楽しむこともできる。空港から気軽に出かけられる釜山のショートトリップを紹介しよう。
文/町野山宏記者
飛行機の乗り換えの時間、無駄に過ごしてはいないだろうか。便によって違いはあるが、3時間から5時間、7時間といったまとまった時間ができることも多い。そんな時間を有効に使って観光を楽しむには、釜山はぴったりの都市だといえる。軽電鉄や地下鉄を利用しても西面など釜山市内の中心街まで1回の乗り換えで1時間ほどで行けるからだ。
特に、釜山市が金海空港でのトランジット客に対する支援を行なっている。金海空港国際線1階の観光案内所で、乗り換えが証明できるEチケットを見せ、名前を書くと、1万5千ウォンがチャージされた「釜山観光カード」がもらえる。これは行きも帰りも利用可能で、その都度観光案内所に訪問して手続きをするだけでもらえる。
ここで「釜山観光カード」について紹介しておこう。このカードは釜山市と釜山シティパスが2017年9月にリリースしたもので、韓国全土で使える交通カードとしての機能に加え、人気の観光地での割り引き、そしてショッピング、グルメ、アミューズメントパークなどの加盟店での決済機能まで備えている。さらに提携するコンビニなどでチャージして使えるため、韓国に来るたびに利用できる。それだけでなく、充填した金額は払い戻しもしてもらえる。
「釜山観光カード」は、普通に購入することもができるため、トランジット客だけでなく、釜山を目的地として来る人たちも利用できる。現在は釜山の玄関口である釜山駅でのみ購入できるが、今後は販売所も拡大していく計画だ。
トランジット客にお勧め、冬の釜山満喫スポット
釜山タワーがリニューアル 龍頭山公園
釜山といえば釜山港を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。釜山港に近づくと、小高い山の上に白いタワーが見えてくる。最近、釜山の旧都心として注目を浴びる中区の龍頭山にそびえる高さ120mの釜山タワーだ。昔から釜山の代表的な観光地の一つとして有名だが、特に2017年10月に、東京タワーやエッフェル塔なども登録されている「世界大タワー連盟」に公式に登録され、現在、盛んにリモデリングがなされている。
タワーの展望室からは釜山港の全景や影島、国際市場などが見渡せるが、VRを利用して、釜山の景色にさまざまなアトラクションを施してくれる。特に夜には釜山の美しい夜景をさらに美しく彩る仕掛けを見せてくれる。その仕掛けが何かはぜひ、直接見に行って確かめてほしい。また、これからさらにアトラクションを増やしていく計画で、ソウルの南山タワー展望台とリアルタイムで結び、それぞれの観光客が疎通することができるようにするなど、楽しさが倍増しそうだ。
展望台から降りてきても最後のアトラクションがまだ残っている。釜山の代表的な観光地を線画でコミックのように表現した空間がつくられており、フォトスポットとして意外な人気を博している。龍頭山での思い出を残すのにはぴったりだ。
釜山タワーは今後もリニューアルが続けられる予定となっており、メディアファーサードや伝統韓服体験館などのインフラが導入されるなど更に人気を集めそうだ。
龍頭山の周囲には歩いて行ける距離に国際市場や光復路、チャガルチ市場などがあり、短い時間でも釜山らしいグルメや風景を楽しめる。時間の余裕があればぜひ行ってみよう。
ショッピングもグルメも解決 西面
トランジットプログラムで何といっても一番人気の場所といえば、やはり西面(ソミョン)ではないだろうか。西面は、釜山で最も若さあふれ、新しいものと出会えるエリア。グルメやショッピング、人気のスポットが満載だ。移動時間も地下鉄で1時間程と道路の渋滞に巻き込まれずに移動が可能なことから、3時間、5時間といった短い時間での釜山滞在も、おいしい焼き肉や釜山グルメを楽しむことができる。
西面にはロッテデパートやカジノ、ロッテホテルがあり、日本人のお客さんが多いことから日本語の通じる店も多い。特に西面駅を降りて、地下商店街より左側にある「ジュディステファ」というショッピングモールの裏側はリーズナブルな焼き肉屋や韓国的グルメが楽しめるお店がずらりと並んでいる。特に焼肉屋は安くておいしい店があることで有名なため、行く前に調べていくことをお勧めする。西面には釜山名物のテジクッパ通りもある。豚肉のスライスがたっぷり入った熱々の豚骨スープ「テジクッパ」は、寒いこの時期には特にお勧めしたいメニューだ。
実際にトランジットで利用した家族に話をうかがってみた。この家族は、エアプサンで釜山に15時に到着し、21時20分に釜山を発つことになっていた。入国手続きを終えて、さっそく1階の観光案内所へ。案内所でトランジットプログラム利用を申し込むと、一人1枚ずつ1万5千ウォンがチャージされたカードがもらえた。空港を出て、軽電鉄で西面へ。駅近くの焼き肉屋でお腹いっぱいテジカルビを食べて、大満足。デザートは焼肉屋の近くにあった店で、韓国の冬の定番スイーツ「ホットク」をほおばる。寒くなってきたので、地下鉄西面駅の地下街を散策し、空港へ戻ったという。残ったカードの残高は、空港のコンビニで使い切った。それでも時間が余ったというくらいなので、釜山のショートトリップを満喫するにはこの上なく便利なエリアだといえよう。
人気の海水浴場で空中散歩 松島ロープウェイ
2017年6月に開通したばかりの松島(ソンド)ロープウェイ(ケーブルカー)もお勧めだ。これは、松島海水浴場を横切るように海上を往復するロープウェイ。松島に最初にロープウェイが設置されたのは1964年のこと。韓国初の海上ロープウェイで、大きな人気を博したが、老朽化によって1988年には閉鎖された。それを大幅にリニューアルし、29年ぶりにオープンしたもの。長さももとの400mから1.62kmと4倍になった。海面からの高さは最高で86m。釜山の海の絶景を眺められ、条件がよければ日本の対馬まで見えるという。
8人乗りのキャビンは全部で39基が運航しているが、床が強化ガラス張りになっている「クリスタルキャビン」もあり、眼下に海が見えるため、まるで空を飛んでいるような気分が味わえる。ロープウェイの運営時間は午前9時から午後10時。夜にはキャビンが美しくライトアップされ、美しい釜山の夜景も楽しめるため、夜の利用もお勧めだ。
ロープウェイのほかにも、レジャーボートでの松島海水浴場沖のクルージングも爽快だ。また、ロープウェイの下を通る「クルム(雲)散策路」は、海岸からコブギ島まで続く海上を渡る橋で、全長が365mで韓国最大の海上散策路だ。散策路の床の一部はガラス張りになっており、海の上を歩くような体験ができるのもポイントだ。
松島海水浴場はサバの刺身や塩焼き定食がおいしいことでも知られ、ハモのしゃぶしゃぶの有名店もある。少し移動するとおいしいウナギの専門店もあるため、海の街・釜山を満喫するにはもってこいの場所といえる。
松島への行き方は空港からタクシーを利用した場合50分程かかる。地下鉄の南浦(ナンポ)駅で下車し、タクシーに乗り継いで行く場合は空港から1時間半ほどかかるので、5時間以上滞在する人にお勧めのスポットだ。
トランジット客を釜山市がサポート
短い時間でも充分に釜山を満喫できるこうしたトランジットプログラムの利用者に対する便宜を図ろうと、釜山市が積極的にサポートしている。日本の阪急旅行会社で扱っているツアーなどに10人以上の団体で参加する場合、釜山観光カードの提供だけでなく、市内観光をするバスの支援も受けられる。
今までは釜山を経由して日本以外の海外へ行く場合のトランジットに限ってサポートが行なわれてきたが、最近は釜山経由で済州島へゴルフに行く旅行客が増えており、済州島に限って適応させるなどの拡大案も検討中だという。更に利用価値が上がりそうだ。
観光の魅力も拡大し、旅行する方法もより手軽になっていく釜山。これは行かなければ損だ。
http://japanese.busan.go.kr/index
おいしいものいっぱいの釜山でエネルギー充電を!
釜山市観光振興課 卞善子チーム長
釜山は空港からのアクセスが非常によく、観光カードを片手に軽電鉄や地下鉄を利用すれば、渋滞に巻き込まれることなく、人気の観光地に行くことができ、ご家族でおいしい釜山グルメが楽しめます。
特に冬は機張(キジャン)の旬のカニをはじめ、新鮮な魚介類をたっぷり使った海鮮鍋、高麗人参の入ったサムゲタン、洛東江(ナクトンガン)の貝のしゃぶしゃぶなどで体を温め、次の目的地へのエネルギーを釜山で充電していってください。
現在、釜山の空港はほぼ飽和状態ではありますが、エアプサンなどのLCCを事前に利用すると、とてもお得に、しかも便利に東南アジアのセブなど人気の観光地に行くことができます。
今後は、空港が拡大される計画もあり、更に路線も長距離になって、たくさんのトランジットプログラム利用客が増えるものと見ています。
短時間でも釜山グルメや観光地めぐりをしやすいよう、釜山市として更に支援していきます。
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